圧倒的な実力
お久しぶりです。
(これしか言ってないかも)
ようやく出すくらい余裕が出来ました。
「ここでなら話しやすいかな。」
留萌 一三二の先導で辿り着いた場所は、グラウンドに1つだけ設置してあるベンチだった。
なぜか周囲の地面が変に赤黒くなっている所を除けば、普通のベンチだ。
一三二はベンチに腰掛け、旧校舎の事について話し出した。
「それにしても、迂闊だったなー。木森さんに見られちゃうなんて。」
その様子は飄々としていて、子供のいたずらが親にバレた時の様な軽い話し方だった。
自分はそこまで悪い事をしていない
言葉にせずともそう言っている様に林には見えていた。
「生徒会長って普段からあんな事をされてるんですか?」
林はどうしてもあの廊下での事が頭から離れなかった。
慣れた動きで人を折りたたむ光景なんて、何十年何百年と生きたって見られるものでは無かったからだ。
「勘違いしないで欲しい事があるんだけど、私は誰にでもあれをやってあげてるわけじゃ無いよ?」
まるでご褒美をあげている言い方をしているが、対象は死んでしまっているため地獄でしかないだろうと、林は思ったが言わない事にした。
一三二はその後も言葉を続ける。
「私は、自分を強くしてくれると感じた人にだけ、喧嘩を申し込んでるだけだから。あぁなったのは単純にあの人が弱かっただけだよ。」
いつの間にか先程までの間延びした言い方が無くなり、普通の話し方に戻っていた一三二は立ち上がり、林の前に立った。
そして、林の肩を掴みながら笑みを浮かべて話し出した。
その笑みは常人ではない、狂った何かを含んでいた。
「私はね、自分より強い人が大好きなんだ。男でも女でも良い。日本人でも外国人でも良い。人間でも動物でも良い。地球人でも宇宙人でも良い。異世界人だって大歓迎だ。」
そこで区切ると、今度は林に背を向け天を仰ぎながら続ける。
「どんな手を使ったって良い。武器を持っても良い。薬品で縛りつけても良い。催眠術とか洗脳でぐちゃぐちゃにしても良い。大人数で来ても大歓迎さ。」
一通り言い終えて、一三二は再度ベンチに腰掛けた。
そして、林の方に向き直り
「どんな形であれ、負けたなら私はその人になんでもしてあげる事ができる。大人しく殺されるのも厭わない。女だから犯して性玩具にしてもいい。体をバラバラにして売り飛ばすのも良い。私は人生に目標がないから死ぬなら死ぬで構わないのさ。」
一三二の独白に林はかなり引いていた。
いくら人生を捨てているとはいえ、ここまでする人を見た事もないし聞いた事もなかったからだ。
すると、先程までの狂った笑みから一転し悲しげな表情に変わっていた。
その悲しみの顔にさえ狂気を感じるのだから、林は彼女の事を心底恐怖した。
「でも残念な事にそんな相手にはまだ巡り会えていないんだ。5人くらい私に勝ったのに何もしないで皆んな去っていくんだ。」
彼女は、留萌 一三二は心の底から闘争を求めていた。
常にあり続けるのは強くなりたいという事のみ、そしてそうなるように自分を高めてくれる存在を探していたのだ。
「戦わなくていいなら、それでいいんじゃないのかな。」
ボソッと言ったつもりの林だったが、一三二には聞こえてしまっていたようだ。
林が視線を向けた時には、悲しさが溢れていた顔は真顔になり目を思い切り開いた状態で林を見ていた。
「君は、とことんつまらないな。父親と一緒だ。」
そう言い終わると、一三二は林の前から姿を消し、次の瞬間には林を地面に押し付けていた。
何が起こったのか分からない。
林の表情がそう語っていた。
「戦わなくていいならそれで良い?まだ私の近くにこんなぬるい事を言う人が存在したなんて?」
そう呟く一三二の手は、ギリギリと音が聞こえるほど握られていた。
昼に見たおっとりした顔とは違う、額に青筋を浮かべ明らかにキレている表情だった。
「己の浅はかさが憎い!」
そう叫びながら、一三二は握った拳を振り下ろした。
命の終わりを悟った林は、反射で目を瞑っていた。
・・・・しかし、いつまで経っても殴られる感覚がやって来ない。
恐る恐る開いた目で見たのは、自分が横たわっている地面に大きなクレーターが出来上がっている光景だった。
少し満足したのか、昼の時のような温和な表情に戻っていた。
「今の世で、そんな考えで天寿を全う出来るほど日本は平和に出来ていると思いますか?」
「で、でも自分が殺されるとかって普通に考えても想像できなく無いですか?」
「それは、あなたが普通の人より戦えるから言えるのです。」
咄嗟に言う反論も、すぐに返されてしまう。
「確かに、この国は他の地域と違って争いがそこまで起こりません。それは認めましょう。」
でもね、と一三二は続ける。
「あのジジイが言っていました。この国は争いは無くせても格差がなくならないとね。」
そう言うと、一三二はまた悲しい顔に戻っていた。
「ねぇ木森さん。平等ってなんだと思います?」
そう問いかける一三二は悲しさとは違う、憂う目をしていた。




