学校の長 留萌 一三二と戦力
もう不定期すぎて皆さんから見限られてそうです。
「た、助けてくれ!殺される!!」
今にも死んでしまいそうな顔をして助けを求めてくる男を、林はどうしたら良いのか分からず呆然としていた。
今まで人を殺す事に関して、なんとも思ったことがない林は、自分じゃない誰かに殺されそうになっている人間を目の当たりにして、動揺していた。
「と、とりあえず何があったのかおしえ」
その時、
「あーらららら?ダメじゃないですかー。何も知らない一般ちゃんに助けなんか求めちゃって」
男の後ろから聞こえてくるのは高めの女の子の声、そして林にとって忘れる事の出来ないであろう声だった。
「あ、貴女は!」
「んー?あ!木森さんだ。」
どことなく間延びしたような声の正体を見た時、林は義昭の言っていた事が真実だと知った。
なぜならその人物は
「せ、生徒会長」
「はーい。生徒会長の留萌 一三二でーす。」
音符が付きそうな返事をして、彼女はゆっくりと林の前にいた男の足を掴んだ。
そして、会った時と変わらない柔和な笑顔を崩す事なく、足の指を1回ずつ丁寧に折っていった。
「助けを求めるのならせめて、自分よりも遥かに強い人に媚びてほしいのですよー。少し強い程度の木森 林さんでは、残念ながら不足ですー。」
折っていったというのは、骨折みたいな状態ではない。
洗濯した衣類やタオルを畳む時のように折り畳んだという方が正しいようだ。
折りすぎたのか、はたまた華奢な見た目とは程遠いような強い力があるのか分からないが、よく聴くボキッみたいな音ではなくなっていた。
まるですり鉢でゴマを擂っているような音に近かった。
頭まで到達して色々な物の潰れる音が、林の耳にこびり付いてしまった。
額から伝わる汗を制服で少し拭って、一三二は林の前に立った。
「じゃあ、ちょっと木森 林さんは質問に答えてもらうよー?」
「は、はい!」
そう言って林の方に向いた顔は、笑っていたが目が違った。
殺害現場を目撃してしまっただけで殺されてしまう第三者の気分になった林は、口に溜まる唾を飲み込む事も忘れてしまっていた。
「場所を変えましょうか。こんなのがあったら集中出来ないでしょー?」
言いながら、さっき折り畳んだ男性を蹴り上げ移動する一三二に林は黙って付いて行った。
………………………………………………………………………
時を同じくして、義昭はこれからに備える為、新たな戦力を探して、夜の町を歩いていた。
かなり暗いが、誰からも補導も注意もされない義昭は今だけは自分が嫌われている事に感謝した。
人通りが多い駅に着き、周りを見渡す。
残業などが終わったであろうサラリーマンやOL、飲み会だったであろう大学生まで、様々な人が行き交っている。
しかし、少し見たくらいでは戦力になるか分からない。
義昭は住宅街へ歩を進めた。
駅と違って人の出入りが少ない時間なので、静寂が支配している。
そして、ここの住宅街は殺人事件が起こりやすいスポットでもあり、殺人鬼が逃げ込みやすい所でもある。
至る所に行き止まりの路地が点在しており、そこに逃げ込んで仕舞えば最後、街を歩く殺人鬼にやられてしまうのだ。
そして、どうやら義昭の目の前でその現場が繰り広げられたようだ。
「いや、止めてください。そんな危ない物を振りかざさないでください!」
「良いじゃねぇかよー。やっとこさ警察から逃げられたんだ。ここでも殺しときてぇんだよ。」
1人のOLが2人組の殺人鬼に目をつけられたようだ。
そのOLは茶髪で黒縁の眼鏡をかけている。近くにある鞄についているキーホルダーを見るに腐女子のようだ。
(可哀想な人だ。こんな所で殺されるだなんて。もっと人目につく場所で殺された方が見せしめには良いんじゃないのかな。)
心の中でそう思いながら、義昭はこれから殺されるであろうOLに背を向けて去ろうとした。
その後、義昭の後ろで銃声が響き、崩れ落ちるような音が2つ聞こえた。
(なんだ?本来この音は1つのはずだけど。)
そう思いながら義昭は、さっきの路地に視線を向けた。
そこには、横たわった2人の殺人鬼を見下ろすOLの姿があった。
「だから言ったのに、やめてくださいって。」
そう言った彼女は、今まで義昭が見た女性の中で実の母親に次いで魅力的に映った。
そして、義昭は静かに指を軽く曲げた。




