冷やかし
普段通りの陸上部の朝練が始まった。
練習が終わり、着替え中の優也に景子が話し掛けてきた。
「優也〜、今度の日曜にみんなでBBQ行こうって話してるんだけど、予定空いてるよね?」
「おう、朝の用事が終われば参加できるぞ」
と部室のドア越しに返事した。
「毎週恒例の優也のお姉さんのあれね?」
「ああ、姉貴は頭おかしいからな」
優也はいつも決まって毎週日曜には姉と山登りと言う名の修行を課せられている。
着替えも終わり、景子と一緒に2年B組の教室に向かっていく。すると、廊下の遠くの方からものすごい勢いで走ってくる人物がいた。
「優也ぁ!朝練あるなら言っときなさいよ!」
練習終わりの疲れた身体をバシバシと叩いてくるひとみ。
「今日も朝からアツアツね」
そう素っ気なく景子が冷やかした。
「ちがうって言ってるでしょ景子!コイツはただの幼馴染よ!」
いつもみたく景子の相手をするのを困っている優也に助け舟の声が聞こえた。
「まあまあ、仲が良いのは喜ばしいことだよ」
そう微笑むのは長身でイケメンな平永英司。
優也、ひとみ、景子、英司の4人は高1からの仲である。
「だから優也、いい加減に付き合ってしまえよ」「なんだよ、お前までからかうのかよ」
と飽きれる優也。そんな風に毎朝のやり取りが終わると同時に教室の扉が開かれた。
「うるさいぞ、席につけお前たち」
スラッとした長身に長い髪が特徴のB組の担任の秋山静香が騒いだ教室を一喝した。
「もうすぐ中間試験だぞ、気を引きしめろ」
男勝りな喋り方で言葉を続ける。
「ところで、ニュースで知っているとは思うが最近、車の当て逃げ事件が増加している。この近くでも被害が出てるから気をつけるように!」
「物騒な世の中だねー」
と他人事のように後ろの席から英司が優也に話しかけた。
「まあ、お前はメガネ女子にしか興味ないもんな」
せっかくのイケメンとスタイルなのに帰宅部の英司は、優也の言う通り変わった趣味をしていた。
「もったいないよねー、英司イケメンなのに」
景子も隣の席から賛同した。
「メガネっ子は正義なんだよ」
そう答える英司を相手にせず、景子は違う話題を切り出した。
「そだ、ひとみも今度のBBQ行けるよね?」「あ、この前言ってたやつ?里沙先輩に聞かないとわかんないけど、たぶん大丈夫よ」
「よかった!じゃあ、みんなで行けるね!」
と英司たちの返事を待たずに喜ぶ景子。