僕らはどこに向かおう
「・・・」
「・・・」
無言で、僕らは歩く。どこに向かうわけでもない。ただ、近くの駅に行き、娘に聞こうと思う。どこに行きたいと。
通り縋りの恋人、親子連れ、友人たちは、ただ笑っている。人生楽しいのだろう。吐き気がする。
「トト・・・だい・・じょうぶ?」
「・・・大丈夫だよ。煙草を吸って気持ち悪いだけ」
娘は再び、震えている。ただ、僕の手を離さないように、強く握る。
「僕が怖いかい?」
聞かなきゃ良かったと、僕は思った。
「・・・こわ・くないよ」
あぁ嘘だろうな。
「そうか」
ただ、僕の娘なのに、なんで、こんに優しいのだろう。鼻を啜り、上を向く。涙は零れそうだったから。僕は心の中で、娘に謝り続けた。
「トト・・・昔なにかしたの?」
「・・・」
覚えていないのか?
「ママのこと、覚えていない?」
「・・・うん」
そうか。娘の母であり、僕の妻を僕自身が殺したのだ。
4年前
「もう嫌だ!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!」
「陽子!やめないさい!娘の前で!」
「・・・零」
「お母さん。大丈夫?私に何かできることない?」
「・・・大丈夫よ。ありがとう」
本当に大丈夫なのだろうか。僕は不安で仕方がない。小学4年生にこんな環境に住まわせて良いのだろうか。恐らく、娘はイジメられている。原因は妻の心の病の原因だろう。
近所は噂になっているぐらい、僕でもわかる。仕事の帰り、よく耳にするから、「岩崎のお宅、危なくない?家の子供が怖がっているのよ」「うちもよ。引っ越してくれないかしら」と。
僕を見ると目線を外す。意味があるか分からないが、挨拶だけ済ませるだけの近所付き合い。
そんな日々が続き、妻は壊れた。
「あなたのせいよ!」
娘の首を絞める。仕事帰りだった僕が靴を脱ぎ捨て、咄嗟に妻の頭を花瓶で殴った。・・・なんでだろう。止める方法がこれしか思いつかなった。僕は妻を殺したかったのかもしれない。遺体を山に埋めた。
「トト・・・ごめん」
「・・・零?」
娘は『お父さん』ではなく、『トト』と言った。幼児の口調。その後、娘の成長は止まった。過剰のストレスらしい。精神科の医者がそう告げた。
○
駅に着き、僕は聞く。
「どこ行きたい?」
と。娘は「遊園地」と答えた。僕らは向かう。金ならある。僕が銀行強盗するのかもしれないと、幸世が心配したお蔭で、毎月、30万くれた。
「幸世に感謝しないとな」
恩を仇に返したけど。
「トト・・・早くいこう?」
「あぁ」
あぁ、零がまた悲しい顔をしている。でもどうしたら笑うのか、僕はもう忘れた。ただ、僕が死ぬ前に見たいのは娘の笑顔だ。