僕は娘の前で幸代を殺した
「もう、4年か」
幸代は煙草を吸い、吐く。それを繰り返す。
「僕にも一本くれ」
「ほらよ。全部やるよ」
幸代は箱ごと、僕に投げる、それをキャッチするのに、反応が遅れ、取れなかった。
「はぁ、これだけ、貰うんだったら、火を買わないとな」
僕は煙草を拾い、一本取りだし、口に加え、台所に向かう。
「ドコ行くんだ?」
「コンロで煙草を付けるんだよ」
「こい」
何だろと思い、僕は幸代の所に戻る。すると、いきなり、僕の胸元を掴み、引っ張る。そして・・・
「付いただろ?」
「・・・嫌な付け方だな」
幸代は自分の火が付いた煙草を僕の付いてない煙草を押し当て、付けた。
「二度とやんなよ」
僕は娘を見る。娘はぼーと僕らを見ていた。
「・・・」
ただ、幸代は何も応えない。頭を搔き、ただ、面倒臭いと呟いた。
「娘は可愛いか?」
「檄可愛い」
幸代は目を開かせていた。僕らは煙草を吸い続ける。娘はこほこほと蒸せている。やはり、煙草は止めよ。
僕は煙草の箱。マルボロを見て、溜息をつく。
「返す」
「・・・っで、どうするんだよ?これから」
舌打ちをする幸代は僕に問う。「お前はどうするべきだと思う?」と逆に僕は質問した。
「刑事としても友達としても、自首するべきだ」
「・・・・そうか、わかった」
こいつは危ない。殺そう。
「少し・・・待っててくれ」
「行くのか?」
「あぁ」
俺は自首するわけには行かない。娘のために。自首するわけに行かないんだ。
「なぁ。お前さぁ。なんで僕と友達になってくれたんだ?」
「なんだ?気持ち悪い」
そうだろうな。僕らしくない。それでも何故か聞きたかった。
「何となくだよ。理由なんてねぇよ」
でもと、続いたが、どうせ碌なことは言わないだろう。じゃあな。僕は抱きしめるように。ナイフで幸代を殺した。最後の言葉は「らしいな」だった。
「大丈夫か。零」
「・・・・うん」
怯えていた。僕は本当に親失格だ。こんなやり方しか僕は知らない。死ぬか殺されるか。こんなどうでもういい人生にどうやって、僕は希望を持てるのだろうか。
「行くぞ」
「・・・おんぶ!」
娘は、眉を寄せ、震えながらも、そう言った。娘は僕のことが恐くないのだろうか。
「・・・」
「どうしたの?トト?」
僕は聞くことができない。でも別に良いかなと思う。娘はきっと僕がどういう奴か分からないだけだと思うから。
「ごめん」
僕は娘をおんぶし、このボロアパートから消えた。