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第五話 錬金術師(2)

「さてと、そろそろこれからのことを決めましょうか」


 ようやくか。いったいいつまでこき使い続けられればいいのかと思った。あれから、毎日のようにセリアは戦闘訓練を申し入れてくるし。飯は犬皿だし。一生懸命頑張ってるのにだめだしされるし。本職の執事じゃないんだ。あと一週間もしないうちに逃げ出していたぞ。


「師匠。このまま飼い殺すことをお勧めしますわ」


「まぁ、そうしたいのは山々ですが、このままではどっかの弟子の成長が色ボケのせいで遅れそうですので。断腸の思いで彼を捨てることにしますわ」


 いや、すてられるんじゃなくて気分的には出ていくんだからな。助けられた手前恩を返すまではと思って働いていただけだから。


「だ、だれが色ボケなのですかお師匠様。こんな犬いなくなって結構ですわ。ただ、きちんとしつけしきってから世に送り出すべきだお思いますの」


「誰がしつけのできてない犬だ」


「路上で行き倒れになるような最低限の生活能力もないのですから野良犬以下ですわ」


 そればかりは返す言葉もねぇ。


「まぁ、確かにその通りですわ。でも、これはもう決めたことです。それとも、私の決めたことに何か不満でもあるのでしょうか?」


 直接問われてない俺でも背筋が震える寒気があった。表面上はやんわりと笑っている優しい人にしか見えないのに。有無を言わせない迫力がある。


「ぃぇ、決してそんなわけでは」


「まぁ、寂しい気持ちもわかりますが。話題を戻しましょう。ファバルさん。あなたは今後どうするつもりですか?」


「冒険者を目指します」


「どうやってですか?」


「冒険者ギルドに登録するだけですが」


 詳しくは知らないがそれ以外の方法でもあるのだろうか。まさか、どっかのハンターみたく年に一回しかやらなくて死人も出る過酷な試練が。


「私が言っているのはどうやって生計を立てていくつもりですかってことですわよ。使える武器もありませんのに」


「師匠。この工房に使ってない試作品の武器が山ほどありますのでゆずってあげても」


「そうですわね。セリアさん。ここ数日必死に刀を強化してましたもの。本当はそれの完成を待ちたかったのでしょうけど。でも無駄ですわよ」


 サーシャが目の前の机に一本のナイフを突き立てる。明らかに安物ではないナイフ。ひょっとしたら俺が誕生日にもらった剣よりも高いかもしれない。


「ファバルさん。持ってみてくれませんか?」


 こんな高いナイフ触れるわけがない。結果は見えているのだし。それに、この人はどこまで知っているのだろう。


「触れません。壊したくないから」


「作った張本人が言っているのです。触りなさい。一応、この目で見ておきたいので。大丈夫、この工房では価値のない失敗作ですわ」


 また、有無を言わさない迫力。仕方なしに俺はナイフを手に取る。予想通り数秒もしないうちに壊れる。


「師匠のなナイフが壊れた!?」


 セリアからすればそれはあり得ないことなんだろう。


「やはりですの。あなたを一目見た時からあなたに見合う武器が思い浮かばなかったので。ソードイーターですわね」


「ソードイーターって何ですか師匠。私聞いたことないんですけど」


「すべての刃物がついた武器を触った瞬間に消滅させるスキルですわ。ですから、使えるとしたらこん棒とかでしょう。弓矢ですら危ないかもしれません」


「そんなスキル聞いたことがありませんわよ」


「そんなスキル持ったのはファバルさんが初めてですから。かなりレア中のレアなスキルですわね」


「サーシャさん。あんたは何でそんなこと知ってるんですか?」


 今までいないのならこのスキルをだれも知らないはずだ。


「・・・秘密ですわ。私もたいしたことは知りません」


「このスキルを解除する方法は」


 スキルをなくすことはできなくても発動を解除する方法はあってもおかしくはない。


「知りませんわ」


「どこまで知っているんですか?」


「さっき言った以上のことはろくに知りません」


「最後にアスフィルという名に聞き覚えは?」


「・・・教えませんわ」


 なるほど、あいつの関係者か何かか。どおりでS臭がするはずだ。しかも、人のことをからかって楽しんでやがる。


「ふふふっ、冗談ですわ。そんな怨みがましい目で見ないでください。大した関係ではありませんわよ。昔恩になったことがあるだけです。いけませんわね。つい、脱線気味で。そのスキルがある限りあなたは剣を持つことができません。剣だけでなく槍も鎌も。それで冒険者になるつもりですか?」


「答えは変わりません。なります」


「では、剣を捨てることはしますか?お望みとあらば使えそうな武器を適当に見繕ってあげてもいいですわよ」


「しません。俺は剣士です」


 そんなこととっくに決めていたことだ。十分理解している。ここにきて肉体強化を手に入れたのはよかった。あれがあれば木刀でもなんとかなるだろう。


「A級冒険者として言わせてもらいます。甘いですわ。まず、間違いなく死にます。生き残れたとしてもC級にも届かずに終わるでしょう」


「何度言われても剣士の道をあきらめるつもりはありません」


 大きくサーシャにため息をつかれた。まぁ、俺は自他ともに認める頑固者だから。


「あなたは偶然か必然か。私の庇護を受けました。そんなあなたをそのまま死ぬと分かっていて送り出すことは私の矜持に反しますわ。一か月差し上げます。一か月ここで最低限の仕事さえしてもらえばあとは自由にやっていいです。その間に自分がどうやって生き抜くか考えなさい」


「あれ?この犬を追い出す話ではありませんでしたっけ?」


 なんか、このまま犬呼ばわりが定着しそうな気がする。


「いつまでいるか決めるだけで無造作に放り出すほど人でなしではないつもりですわよ」


 夜ベットの上で俺は頭を抱えていた。一人で反省会の真っ最中だ。


 確かに俺は甘かった。この世界で家を出て行った瞬間死にかけた。準備する時間がなかったとはいえ。いや、そうなってもいいように準備もしておくべきだった。それに、俺はこの世界の知識に乏しい。いや、違う。生きるという経験に乏しいのだ。なにせ、俺は中身こそ18+8の26歳だが。どこにも働いて自分で生きてきた経験がない。コンビニのバイトすらないのだ。多少馬鹿な師匠のせいでサバイバルの経験はあるがそれだけである。


「うわぁ、考えなさすぎだろう」


 考える時間なんていくらでもあったのに。その時その時適当にやればなんとかなると信じこんでいた。剣さえあればどうにかなる。剣がなくなっても絶対的なピンチを迎えれば・・・・どこの主人公だ俺は。


 その時ノックが響き渡る。誰だなんて二人しかいない。おそらく、入ってくる可能性が高いのはセリアだろう。


「失礼しますわよ」


 予想通りセリアだった。


「まだ、返事してねぇだろう」


 まったく、人に見せられない姿だったらどうするつもりだ。


「なんで私がいちいちあなたの了解を得なきゃならないんですの?」


 どっかの神様といい。この世界に来てから自己中の女にしか会ってない気がする。


「そんなくだらないこと聞いているよりも、何か方法は思いついたのですか?」


「絶賛考え中」


 正直まだ何も思いついてない。


「あなた、頭悪そうですからね。師匠のヒントに気づかないと思いましたわ」


 セリアはため息をつきながら部屋に転がっていた木刀を持つ。


「技術も力も及第点レベルにあるあなたに足りないのは武器だけ。ならば、武器をどうにかするしかないでしょう。エンハンス・フレイム」


 木刀が赤く光る。


「即席付加魔術ですの。こんなんでも、何もないよりははるかにましでしてよ」


 そっか、ここは剣と魔法の世界なんだ。すっかり魔法という部分に興味もなかったから失念していた。


「さて、初級魔術にも等しい技術ですが。一人で一か月で覚えようとしたら付け焼刃にもなりませんわ。さて、私に何か言いたいことはありますの?」


 にっこり笑いながら俺の言葉を待つ。普通に言ってくれればこっちも普通に返せるのに性格悪い。いや、悪くはないか。俺のために教えに来てくれたんだから。


「よろしくお願いします。師匠」


 こうして、俺に三人目の師匠?ができた。


「師匠呼ばわりは気持ち悪いのでやめてください。普通に名前で結構ですのよ」


 本気で気持ち悪そうな顔をされた。


  反省してます。更新遅くなりすぎました。しかも、予定のところまでいってない。仕方ないんです。この話子の間に入れるつもりなかったので(言い訳)次こそは旅立ちたいなぁ。予定では一章あと三話程度で終わるはずだったんですが。五話くらいかかるかもしれません。チート臭い能力は一章中には発揮します。使い勝手悪いですが

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