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中国の小説の成立の歴史的考察  唐、宋、元,明、清、、中国小説史の研究

作者: 舜風人

そもそも中国という国では古代より歴史的事実が非常に重んじられてきたのであり、

歴史を書きとどめるということには、すごい思い入れがあるという国民性なのです。

ですから古代より国王は必ずと言っていいほど、自分の国の成り立ちを筆生(書記)に銘じて作成させたのですね。

古くは「史記」に始まりその後も、「漢書」「後漢書」と歴史書の作成の歴史は続きます。


ですから歴史的なまあ、重大事項はとても重んじられれてこうして記述で残されるのですが

一方民間伝承とか、巷間の俗話などはいわゆる「怪力乱神を語らず」ということで、

無視されるというか埋もれってしまいがちだったのですね、

(まあ、これは、こと、中国だけに限りませんけどね、、、、。)


ただ古代より王室には、いわゆる今でいう所の、娯楽係?がいてですね、

舞踊やら、音曲やら、面白い話を語る語り部がいたりして

王様(皇帝}の無聊を慰め申していたわけです、。

そうしたいわゆる、今でいえば「都市伝説」的なお話は

正式な記録としては残されなかった、


しかし六朝時代になるとそうしたお話に興味を持った文人が現れて記録として残そうとした人がでてきたわけですね。

その代表的な書物が今に残る「捜神記」ですね。


これはいわゆる六朝、「志怪小説」と呼ばれるものです。

ないようは、約470篇の聞き書き、面白話?の短編集です。

すごい短いお話し断片もあれば比較的長いのもありますが

いずれにしても今でいえば短編小説というか、今でいう、ショートショートですね。


でも

これこそが中国における。今でいうところの、「小説」、、ノベル、、の元祖、、嚆矢ですね。

ここから中国の小説がはじまたっと言っていいでしょう。


志怪小説に記された内容はといえば、まさに都市伝説の類です。


以下ウイキペデャより引用。」


「捜神記」


「原書は、著者の干宝が、先立つ書より収録したものと、自身の見聞とを併せたものであるとされる。本書を著述するようになった機縁は、干宝の父の婢が埋葬ののち10数年後に蘇ったことに感じ入って、本書を著すようになったという。


現行20巻本は、神仙・方士・徴応・感応・再生・魑魅・妖怪・人間や動植物の怪異などに関係する470余の説話を、説話の型で巻ごとに分類して収録している。中には後世の作も混入しており、仏教的な説話も含まれている。」 引用終わり



この本は東洋文庫で邦訳が出てます。中国古典文学大系にもある。

今読んでも、面白いというか、自分が小説(幻想小説?)を書く際の「元ネタ?」にしたいような奇抜なプロットのお話が満載で非常に興味深いですね。元ネタの宝庫です。


この、「捜神記」を筆頭としてそのごも陸続とこの手の説話集が作られてやがてそこから

もっと小説らしいというか

プロットや体裁を整えたいわゆる小説らしい作品が生まれてくるのですね、


それが、唐時代のいわゆる「伝奇小説」です。

有名なところでは

「遊仙崫」「杜子春伝」「枕中記」などがあります。

これらはそれまでの断片的な聞き書きだった「志怪小説」をバージョンアップして

より描写も精細に、人情描写も詳しくして、今の短編小説的なところまで進化していますね。


たとえば、、、「枕中記」というのは、邯鄲夢の枕、、のお話です。



こんなあらすじです。


「枕中記」


大志を抱く若者が都を目指してたびに出ます、

途中立ち寄った茶店で、老人に出会う。

都に行って仕官して出世したいというと、

老人は陶の枕を出して「これで昼寝してごらん」という、

「きっとあなたの未来が見えますよ」

若者は早速それで昼寝すると、、、、、、、


たちまち都に行って仕官、抜群の成績を上げて王様に目をかけられて大出世、王様の美しい娘を嫁にもらい、いずれは自分が王様に、、。

ところがある日クーデターですよ、たちまち都を追われて、

落ち武者に、妻もはぐれて、独りぼっちに、

ええい、、ままよ、と観念して刀で自害しようと思ったとき、


ふと、、目が覚めた、するとそこはさっきの茶店の縁台の上、、

ああら、そうか、俺は昼寝してたんだよなあ。

さっきの老人が「どうじゃな、、いい夢が見られましたかな?出世した甲斐がありましたかな?」


「ああ。お爺さん、、出世しても結局むなしいものですよね。僕はもう都へは行きません、村に帰って

畑を一生懸命耕しますよ」


「おお、、それがいいじゃろうよ、出世も一時の夢、栄華も一時の夢ですからなあ」


青年はくるりと踵を返して村のほうへ帰っていったという、、、お話ですよね。


(かなり自由に私が翻案しています、で、、原話とは多少(かなり?)違うと思います。念のため)





杜子春は、芥川の翻案?でご存知でしょう?

原作とは結末が違いますよね。

原作は仙人になれなかったことを後悔して悔しがりますが

芥川版では、、「人間らしく生きるっていいね」、、で終わりです。



さて、

これらは日本にも、遣唐使を通じて伝播して、平安時代の王朝小説に多大な影響を与えてています。

さてこの伝奇小説はそれ以降も、引き継がれて宋代になると、民間の講釈師が辻で語り部として物語を語りそれで日銭を稼ぐという、商売が生まれます。いわゆる「辻講釈師」ですね。

というわけで唐代には学のある文人が創作した「伝奇小説」も

宋代になると、民間の辻講釈師の語る物語になるのですから、

そこはそれ、庶民の聞きたいような、エロ話やら、下世話なお話が主流となるのもやむを得ない流れでしょうね。


こうした講釈師のネタ本を明代になって収集し体裁を整えたのが,

「三言二拍」です。これについては以前


わたくしの、このサイトで既述した


「「三言二拍」  って、なあに?」


をご参照下さい、


まあとにかくこれは相当面白い、怪奇や都市伝説やら下世話やら、エロ話の宝庫ですね。、

宋代の庶民の人情・風俗の万華鏡です、。

当時の風俗や民俗を知るのにも、役立つ。

興味の尽きない短編小説集?です。全200篇の、短編、、というか中編小説集ですよ。

この全訳はありませんが、中国サイトの、デジタルライブラリーでその全文は読むことはできますが、、

なんせ原文は白話(当時の俗語)ですから、解読はほぼ無理でしょう。

漢文の知識や、あるいは現代中国語の知識があったとしても、、この原文を読み解くことはほぼ、無理ですね。


さてこうした宋代の通俗小説がやがて明代~清代になると、より大型の長編小説へと変貌します。

その元も、、宋代の講釈師の語り部に始まるのですが、

それが明代には整えられて、

いわゆる「四大奇書」と言われる


『三国志演義』、『水滸伝』、『西遊記』、『金瓶梅』に結実します。

この4書については今更、私が、語るまでもないですよね?


トリビアの知識


西遊記に刺激されて?

「東遊記」「南遊記」「北遊記」という小説も作られたんですよ。

これほんとですよ、この4つを合わせて


「四遊記」と言いますよ。


さて、、

そのほかにも実はおそらく皆さん方が全く知らにような埋もれた?傑作が長編小説がいっぱいありますが、


私の好きなものとしては


「平妖伝」という魔術師の群像を描いたお話が興味深いですね。

妖狐、方術師、妖猿、道士などが入り乱れて魔術合戦の大活躍。


かの、滝沢馬琴も愛読ですね。




それから「鏡花縁」も超面白いですよ。


以下引用ウイキペディアより


『鏡花縁』(きょうかえん)は、李汝珍による中国清代の白話体章回長編伝奇小説。1818年に初発表。全100回。特に女性中心の扱いという形で描写している。魯迅の分類によると、才学小説(才学を現すための小説)にあたる。小説の前半部は唐敖や多九公といった人々が船に乗って、「女児国」や「君子国」や「無腸国」といった奇怪な国々を巡る。この前半部はよくガリバー旅行記と引き比べられる。後半部では武則天が女性のために科挙を行なって、「百花仙子」が転生させた唐小山などの花仙子たちの転生である一百の才女が合格し、朝廷で政治を行う。「鏡花縁」とは、鏡花水月という言葉から来ている。天上の仙女たちが因縁あって、人界に降り、仮に人間の姿をしている幻の世界であることを示している。


引用終わり


その他、長編小説では、


「紅楼夢」  源氏物語?みたいなおはなしです


「児女英雄伝」   女傑姉妹が大活躍


「海上花列伝」 1890年ころの上海の花柳界を描く。


なども面白いですね。





「醒世姻縁伝」これも相当なレアもの?小説ですよね。

内容は「世を醒ます、姻の縁」を描いたものですよ、

え?

タイトルまんま?ですね?夫婦の何世にもわたる因縁譚です。





「緑野仙踪」これもレアですね

ググってみたら、なんとこの小説を邦訳して公開してる奇特な方を発見しました。抄訳、というかダイジェスト版ですがそれでも、貴重ですよね。


もういくらでもその他レアもの?がありますが

今回は、まあこのくらいで、、、、





さて短編小説集の系統では


明代には三言二拍以外にも

有名なものとしては

「剪灯新話」があります。


これは怪異・妖気の物語集ですよ。

美しくて、せつなくて、、モノがなしくて、

きれいな?怪異譚を40話集めています。

というか「瞿佑、クユウ」、という人の創作です。

今は散逸して21篇残っています。


原文の文体は古文(漢文)ですから漢文の知識があれば読めますよ。

日本にも伝わり、例えば三遊亭圓朝の牡丹灯籠は元ネタはこれです。



「清平山堂話本」や「剪灯余話」なども同系列の小説集です。




さらに清代になるとあの有名な「聊斎志異」が登場します。


このサイトで私がかって、

「聊斎志異について語る。その1。」として,既述した通りです。

太宰治が愛読してこれから、元ネタをとって「竹青」を書いてますね。


そのほかではこういう怪異短編小説集では


「閲微草堂筆記」「子不語」も有名ですが

ドキュメント風な記述ですから面白味には欠けます。

聊斎志異のような面白い味付けがないのです。


面白さでは断然「聊斎志異」です。


さてこれら以外にも、


いわゆる「艶本」系統?があります。

現存するものだけでも100種はあるといわれています。



代表作は「肉蒲団」です。作者は李漁。

今でいえばポルノ小説でしょうか?


内容はさんざん漁色の日々を過ごして最後は大反省?して一物をちょん切り

出家して罪を償うというお話です。


この人にはほかに、

「十二楼」「無声戯」という

面白い短編小説集もあります。これはまじめな?内容ですよ。

この2書は昭和35年に邦訳刊行されています今では入手不可能でしょうね。


これ以外にも実に様々な艶本がありますが、それをいちいち述べても仕方ないのでやめますが。


さて

こうした以上の様々な要素を引き継いで

あるいは淘汰して?


魯迅とかの近代・現代中国文学に結実してゆくのですね。

ところが、

共産中国成立後は、

まあご存知のように中国は共産党独裁で、その手の小説しか、認められていませんからお決まりの共産党万歳という小説しかないわけでして、


まあつまらないといえばつまらない教条主義小説ばかりですけどね。


ごく最近、やや自由化?されて?

それなり人間描写の優れた小説もでてきたかに、もれうかがってはいますけどね。




参考文献


魯迅  「中国文学史」岩波文庫  東洋文庫

魯迅『支那小説史』全2巻☆増田渉=訳 昭和17年発行 岩波文庫


中国古典文学全集  平凡社  1960年


中国古典文学大系  平凡社  1970年


東洋文庫    平凡社

既刊868冊 東洋の古典でうもれた奇書の邦訳大系です。


中国艶本大全  土屋英明  


全訳 中国文学大系  東洋文化協会 昭和35年


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