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1話「異世界出張」

 幕があがると、小さな夜が少女を迎えた。

 

 彼女を待っていた人々が歓喜の声を上げる。

 少女は彼等に向けて天使のような慈愛の笑みを浮かべた。

 やがて歓喜の波が落ち着き、静寂だけが残る。


 ――さあ、始めよう。


 少女が声を上げると彼等は再び熱狂を帯び始めていく。それに連なるように客席の照明が手前から奥へと連鎖するように点灯していく。


 いよいよ始まる。ライブが。私達のステージが。数多の想いを乗せて、今。



 ――そして、小さな夜は輝きだす。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「異世界には美少女が多い」



 全ての始まりは社長の唐突な断言だった。



「……はい?」

 


 意味がさっぱり理解できず、部下の喜瀬(きせ)安綺(やすき)は首を傾げた。 

 


「まずはこのことを頭に入れておけ。それと」



 社長は意味ありげな間を置いて、



「俺は昔、異世界を救ったことがある」



 と言った。

 世界を流れる時間が一瞬固まったように安綺は感じた。



「はあ……」

「何だその顔は。俺の言葉が信じられないのか」



 あまりの不振さについに頭がイカれたか……。安綺は一瞬、同情の目になりかける。

 だが、どこぞのアニメの司令のように肘を机に乗せ、組んだ手を顎に乗せる彼はいつになく真剣だった。その迫力に押されたのか、茶化すことが出来なかった。



「あまりに唐突過ぎて……えーっと、夢のお告げみたいなものですか?」

「……お前、俺がおかしくなったと思ってるな?」



 図星だった。

 幾ら冗談が好きな人といえど、先の一言はあまりに狂言じみている。



「……まあ、それも無理はないか。実際に見てもらう方が手っ取り早いだろう。安綺は長期の出張も可能だったな?」

「ええ、まあ、一応。けどそれが一体何か?」



 話の流れがいまいち掴めない。

 唯一分かるのは、戯言の割に社長は本気なこと。彼の圧倒的なカリスマオーラがこれはただ事ではないと安綺に告げている。



「では、これからお前にはパールウェルと呼ばれる異世界に行ってもらう。まずはとにかく、自分の肌で感じてみるんだ。俺は後から行く。既にあちらにうちの支店を建ててあるから、合流した後に案内する」



 パールウェル……? アスクマ国……? 聞きなれない単語に安綺は首を傾げる。

 いや、今はそんなことよりも。



「今、支店を建ててる余裕なんてうちにはないですよね? これ以上資金を消費したら、明日にはこの事務所は消えてなくなっててもおかしくないんですよ」

「何、案ずるな。異世界と日本の貨幣は全く違う」

「ネットで評判の良い病院を教えましょうか?」

「頭がおかしくなったわけではない! 細かいことをグチグチ言わずにとりあえずやってみるんだ!」

「いえ、だから何を……」



 全く最近の若者ときたら……と社長の長屋(ながや)新貴(あらたか)はつぶやく。こちらからしてみれば精神が摩耗し、妄想と現実の区別が付かなくなった狂人の妄言としか思えない。


 先月、うちの事務所と契約していた女性タレントが男を作っていたことが発覚し、彼女は男と共に遁走した。その時点でこの会社の破滅が決定したも同然だった。社長の介護をしなくてはならない前に自分も逃げるべきだったのかもしれない。

 しかし逃げ込める場所は存在しない。かつての恋人とは学生時代に別れたし、一流になると言って勘当も同然に飛び出した実家に仕事がなくなったからといってスゴスゴと帰るのは情けなさすぎる。

 かといって就活をもう一度やる気にもなれない。今の会社に受かるまでに多大な苦労・挫折を味わい尽くした。一年間真剣に取り組んだにも関わらずオンボロ芸能事務所しか内定を取れなかった俺を中途採用で迎え入れてくれる所なんてあるのだろうか……。

 この会社が潰れて職を失うことだけは勘弁願いたい。そのためならどんな世迷い事でも遂行してみせる。



「よく分かりませんけど、海外に出張すればいいんですよね。会社のためならどんなことでもやってみせます」

「色々勘違いをしているようだが、やる気を出してくれたようだしいいだろう」



 社長はそう言って立ち上がり、安綺の横に立つと右手をギュっと握った。



「では、現地に向かって貰おう。あちらでもやっていけるよう、私の力を授ける。言語の翻訳機能も付いてるから安心しろ。さあ、これを受け取れ。間違ってもなくしたりするなよ」



 社長がスッと手を伸ばして拳で優しく包んでいた何かを渡してくる。それは十字に輝く銀のネックレスだった。ただし十字といっても、左右は均等の長さに対し上下には長さが微妙に違っている。柄やらなんやらを消した剣を収縮させたようだった。また、十字の交差する中心点には小さな赤い球が埋め込まれていた。


 付けてみろ、と社長が言うので渋々首に輪を通す。私服ならまだしもスーツ姿にアクセサリーは変な違和感があった。しかし同時にネックレスから何かが流れ込んでくるような感覚があって、力がみなぎってきたように感じた。



「後は少々の資金と……アイテムは現地調達でも問題ないだろう」


 

 社長が強い瞳で安綺を――いや、首に提げたネックレスを見てくる。すると立ちくらみが起きた時のように頭がクラっとして――。



「良い子がいたら目を付けておけよ。……じゃあまた後で」



 その言葉を最後に、安綺の視界はブラックアウトした。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 いつの間にか寝てしまっていたようだ。体に当たる風が心地よい。……どころかかなり強いような?

 意識が闇の底から覚醒し、ゆっくりと目を開けていくと、



 地上に向けてダイブの真っ最中だった。



「うわあああああああああ!?」



 何故、何故、何故――!?


 鋭い強風が次々と安綺の全身を突き抜けていく。

 身体をジタバタさせるが、速度は全く落ちない……どころか加速してるような気がする。

 首を上に上げる。といっても頭から落下中なので、見えたのは地上だが。

 残響のように映像が引き伸ばされる風景の中、落下地点には馬車のようなものがあった。馬を引く人の姿も見える。



「よべえてくへべべべ!」



 空中で、しかも自由落下真っ最中のため「避けてくれ」という叫びも言葉にならない。むしろ始めの一音だけでもきちんと発音できた事事態が奇跡だろう。

 結局、今の安綺に出来ることはそれ以上何もなく、激しい衝撃を持って地面に激突した。



「な、何だ!?」



 近くで驚きの声が上がった。

 土煙が周囲に舞い上がってるせいで何も見えない。気管に入り、ゴホゴホと咳をする。



「……ってあれ、俺生きてる?」



 手を広げ、拳の開いて閉じてを繰り返す。次に体を触り、背中を見ようと捻る。最後に心臓の鼓動を確認。平常より早鐘を打っているが……きちんと動いている。

 物凄い速さで空中から落下したのに安綺は生きていた。それも目立った怪我は見当たらない。



「ど、どうなってんだ……?」

「おい、あんた大丈夫か?」



 黒のスーツに付いた土を払っていると、土煙の奥から人が現れた。顎髭が濃く、目の鋭い悪人染みた人相だ。



「ええ、まあ、何とか」

「物凄い高さから落ちてきたように見えたんだがなあ」



 その人は顔をしかめた。

 警戒を解きたくても、同じ疑問は自分も持っているのでどうしようもない。

 男は馬を引いていた。頭絡に伸びる綱を片手に持っている。

 どうやら荷馬車のようだ。馬車の部分は小さな小屋のようになっていて、白い布で覆われている。正面は暖簾がかかっていてそれがドアの役目を果たしているようだ。

 そこから一人の少女が顔を覗かせていた。

 儚げで神秘的な女の子。体は細く華奢だが出るところはしっかりでている。白い肌に相反するように髪は黒く、腰まで伸びたそれは職人が手がけた絹のように美しい。鋭い輪郭の面相に小さく整った鼻梁に夜空のように輝く瞳、健康的に色づいた唇が収まっている。

 深い森の奥に存在する、淀みのない湖に佇む女神のようだった。

 ただしその美貌に似つかぬボロボロかつ汚れた布を纏っただけの服装は安綺に十分な猜疑心を抱かせた。



「あ、おい、こら! 顔出すんじゃねえ!」



 男が一喝すると少女は怯えた顔で馬車の中に身を引っ込めた。



「あの、今の子は……」

「ああ、中々の上物だろ? 従順に仕上げたつもりだったんだがなあ」



 男は下卑た笑みを浮かべる。見ててあまり気持ち良いものではない。



「上物?」

「奴隷市場に出すんだ。きっとかなりの値段で売れるぜ」



 男は更にニヤニヤと深くする。段々と不快になってきた。



「奴隷……? どういうことですか、それ」

「言葉の通りだよ。旦那にゃ悪いが、一生かかっても払えないような値段になると思うぜ」



 いつの間にか男はこちらを客と見なしたらしい。この男から何か買おうなんて気はさらさら起きないが。



「……変なことをお聞きしますが、ここは何処ですか?」

「アスクマ国の王都の周辺だよ」



 アスクマ国という単語はついさっき聞いた。

 異世界・パールウェルのアスクマ国。まさか、ここは本当に――。



「あの、王都まで案内してもらえませんか?」

「別に良いけど、案内料として幾らか貰おうか」



 ムッとしかけるも抑え込む。社会人の基本だ。嫌なことがあっても顔には出さない。



「……分かりました」



 安綺は胸ポケットに入れてある財布を取り出した。見て、違和感に気づく。

 元々あまりお札を入れてないためいつもは薄い財布が、今はこれでもかというぐらい膨れ上がっている。

 中を開けると、それはもうたんまりとお札が詰まっていた。けれど、一度も見たことのないお札だ。

 不審がりながらも一枚取り出して男に手渡す。



「……これで足りますか?」

「なっ……こ、こんなに!?」



 すると男は酷く仰天した。何故そんなに驚くのだろう。



「えっと、案内はして貰えるんですか?」

「ええ、ええ、そりゃもう、安全に送り届けてみせやす」



 男はゴマをするように姿勢を低くした。

 あまりの変わりっぷりにキョトンとする。



「案内の前に旦那のお名前を聞いてよろしいですか?」

「別に良いですけど……自分はこういう者です」



 財布の入った胸ポケットとは逆の胸ポケットから名刺入れを取り出す。中に入れていた名刺を丁寧に渡した。



「はあ……」



 ただ渡された男は間抜けな顔ズラをしていた。ポリポリと頭を掻いている。



「……ま、いいや。旦那、案内します。是非乗って下さい」



 男が馬を指差す。

 ……本当にどういうことなんだろう、これは。

 

 言われるまま、御者台に飛び乗った。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 話を聞いたところ、ここは本当に異世界なのかもしれないと思い始めていた。

 得られた情報としては、この世界には魔法が存在しその魔法を応用した技術が発展。現代には及ばないものの近代並の技術力があるらしい。ここまで飛躍的な技術革新が起きたのも数十年前に人類の脅威となっていた魔族の勢力が衰えたことが挙げられる。

 魔族の総大将と一騎打ちを行い、勝利を収めたその人物は伝説となっている。世間ではその人物を「勇者」と呼んでいるらしい。


 聞かされた内容は創作としてはあまりに現実味があって――自身の置かれている状況を考えても、ここはつい先程いた地球とは別の世界だと思ったほうがしっくりと来た。

 男に渡したお金のことについてもそれとなく尋ねると、案内料にしてはやけに高いことが判明した。百円ショップに行くために百万円を用意したのと同じだ。

 男は各地で奴隷商人をやっているそうで、かなりの大物――先程の少女が手に入ったため、一番相場の高い王都に赴いてる途中だったそうだ。



「しかもこいつ、唯の美少女じゃなくてエルフなんですよ、エルフ。僥倖とはまさにこのことを言うんですなあ。今から売値がどれだけ付くか楽しみで楽しみで」



 隣で男がカッカッカッと笑う。安綺のことを金持ちと見ているのか、態度が軟化している。自慢するかのように聞きもしないことをベラベラと喋っていた。

 勝手に情報を吐いてくれるのはありがたいなあと思いつつ、安綺はボーッと景色を眺めていた。

 この先どうなるんだろう……。心ここにあらずといった様子だった。


 草原から林に入ったところで不意に馬が進行を止めた。



「ん? 何だ、どうかしたか?」



 男が突然止まった馬に不審を抱き、御者台から降りて馬に近付いていく。その途中、男の上に大きな影が覆った。



「な、こ、これは……」



 男が驚愕の声を挙げた。安綺に至っては驚きのあまり声すら出てこない。

 木々の陰から突然、周辺の木立に並ぶ巨大な体躯をした怪物が現れたからだった。

 怪物は緑色の体色をしており、大きな四肢は筋骨が浮き上がっている。醜い顔が余計に迫力を助長させている。原始時代の人類のような簡単な服に人間の背と同じくらいの長さと太さを兼ね備えた棍棒。

 ゲームをよくするものならば、ゴブリンと呼ぶそれが安綺達の前に立ちはだかったのだ。



「な、なんでこんなとこにボスゴブリンが!? くっ、こんなとこで大事な商品を失ってたまるかあ!」



 男は太ももの側面に提げてあった鞘から短剣を取り出した。果敢にも怪物に挑もうとしているようだが……。

 次の瞬間、ゴブリンが雄叫びを挙げた。大地が揺れ、恐怖で怯えるように葉っぱがパラパラと降ってくる。

 ゴブリンの圧倒的迫力に負けて男は尻もちをついた。短剣が手から滑り落ち、跳ねて馬車の近くに落ちた。

 異形な生物を見て完全に凍りついていた安綺だが直後馬が暴れ出し、それの制御をするハメになった。しかし、馬の扱いになれない安綺は興奮を沈めることは出来なかった。



「こ、これ以上無理だ! 中にいる君、外に出て!」



 叫ぶと同時、安綺は地面に投げ出される。馬が荒ぶった声を挙げて後方へと走り去っていく。

 チラと後方を見やると、同じように地面に倒れた少女の姿が見えた。頭を抑えながら上半身を起こそうとしていた。

 


「ひ……ひぃぃぃいいい!」



 その短いやり取りの中で男は悲鳴を上げてゴブリンの視界から外れるように逃げていた。

 顔を上げて怪物の姿を視界に収める。あまりに絶望的な境地。人間とは圧倒的力の前に立つとひどく矮小な存在になるのだ。

 ただ、怪物の目は安綺のことを捉えていなかった。目線の先は安綺の後方、つまり少女にあって……。

 ゴブリンが距離を詰める。

 踏まれないよう、安綺は横に飛び出した。

 ゴブリンが腕を振り上げ、少女めがけて振るう。



「あ、危ない!」

「きゃあああ!」



 少女は後方に下がることで間一髪、ゴブリンの攻撃をかわした。少女の代わりに強打を受けた木がだるま落としのように体を失い、上半身をその地に落とした。

 攻撃を外したゴブリンはそのことを意にも介してないようで、再び標的を睨んだ。先ほど避けることが出来たのは偶然。次はない。

 少女は怯え、全身を震わせていた。それでも必死に後ずさりし……その背中を樹の幹にぶつけた。

 少女の前にゴブリンが立ち、見下ろす。少女は歯を鳴らし、瞳に涙を浮かべ、体を縮こませる。

 

 彼女を救うことは出来ないのか。安綺は周りを見渡す。一瞬でもいい。ゴブリンの気を逸らす何かがあれば……。

 その時、男が落とした短剣が目に入った。四つん這いのまま移動して、それを拾う。柄を両手で握ると不思議と力が湧いてきた。恐怖が勇気に代わっていくのがわかる。



「助け……助け、て……」



 少女はか細く――しかし確かな助けを求めた。だが願いむなしく、彼女に化け物の歯牙が襲いかかり――。



「か、彼女に手を出すな!」



 彼女を護るべく、安綺はゴブリンの前に立ちはだかった。腕や足は震えている。強く握りしめた短剣だけが彼の勇気を支えている。

 邪魔だ、と言うかのようにゴブリンが再び雄叫びをあげる。容赦無い一撃が安綺に向けて放たれた。

 不思議なことに安綺には攻撃の軌道が見えた。まるでビデオをスローモーション再生してるかのようである。拳がすぐ横まで来た所で安綺は跳躍した。その真下を太い腕が横切り、その上に着地する。



「ゴッ……!?」



 怪物が初めて戸惑った。その間にも安綺は腕を駆け上がり、肩に足を乗せ、頭の上に乗った。

 ゴブリンが激しく体を震わせ、害虫を体から落とそうとする。しかし今の安綺は常人とは思えぬほどの膂力を発揮し、頭にしがみついていた。



「大人しく……しろおおおおお!」



 短剣を思い切り振り下ろす。刀身はゴブリンの硬い表面を突き破り、そのまま真下に一刀両断。ゴブリンを左右対称に切り分けるように光の軌跡が身体の真ん中に走った。

 糊でくっついた本のページを剥がれるかのように、ゴブリンの体が二つに分かれていく。二つになった緑の怪物は鈍重な音を立てて地面に落ちた。

 こうして最期の悲鳴を上げることなくゴブリンは絶命した。



「た、倒した? この俺が……?」



 血で染まった自分の両手を呆然と見つめる。それから真っ二つになって倒れた巨大な怪物を見やる。



「……あの」



 凄絶な現場に似合わない透き通った声で我に返る。

 振り向くと先ほどの少女が立っていた。



「……そ、そうだ。怪我とかない? 大丈夫?」

「は、はい。大丈夫です」



 体は恐怖の余韻でまだ少し震えてはいたが、確かに問題はなかった。心の底からホッとする。



「それなら良かった……」

「えっと、何が良かったんですか?」

「君を助けることが出来て良かったって意味なんだけど」

「私を助けて……」



 直後、少女は感極まった顔でバッと頭を下げた。



「ありがとうございます。私なんかを……救ってくださって……」

「いや、俺は別に……というか、私なんかって……」

「貴様ら、ここで何をしている!」



 少女の態度に狼狽していると、この場になかった怒声が飛んでくる。

 声の方向を見やると、奥から鎧を纏った女性が馬に跨がりこちらに向かってきていた。その後ろから似たような格好をした兵士のような者達が続々とやってくる。



「何だ、ゴブリン……? これは貴様らがやったのか?」

「えっと……はい、そうです」



 何となく嫌な予感がしたので短剣を地面において両手を上げ、戦意がないことを示す。



「何者だ貴様。名を名乗れ」

「はあ……」



 片手で胸ポケットを漁り、中から名刺を取り出す。男に渡した時と同じく、喜瀬安綺の名前と共に元有(がんゆう)芸能事務所所属と銘打たれた肩書が記されてるはずだ。



「私はこういう者です」



 安綺は両手で名刺を差し出した。




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