帰り道にバトル
六時間目の授業も終わり部活に行く人や帰る人で教室には人が少なくなっていった。
俺は帰宅部なのでそうそうに学校を出た。
途中で柳瀬に再戦を申し込まれたが無視をした。
一日に何度もバトルするのはシエラも疲れるし俺も疲れる。
「刀夜。帰りにスーパーに寄りましょう」
「何か足りない食材があるのか?」
「卵と牛乳とお肉です」
肉がないのはつらいな。
「了解。スーパーに寄るよ」
「感謝します」
「さて、卵と牛乳は買ったが肉は何買うんだ?牛・豚・鶏どれだ?」
「そうですね。牛と豚のミンチをお願いします」
「今日はハンバーグか・・・」
「嫌ですか?」
「全然OKだ」
「では、あとパン粉もお願いします」
「はいよー」
俺は指輪と会話しながらスーパーの中を歩いた。
昔はこうやってシエラ(指輪状態)と話していると皆に変な目で見られてたな。
視線が嫌でシエラに普段の状態で買い物してほしいと頼んでみると、嫌な視線はなくなった。
けど、俺に向けられていた視線は別の意味となった視線でシエラに集中した。
それもそうだ。
人間以外の人種が外で歩いていたら誰でも無意識に興味本位で見るだろう。
中には見るだけでは飽き足らず、ケータイやスマホで写真を撮ったり動画を撮ったりする人もいる。
そのことに対して、シエラは気にしていなかった。
・・・が、俺が駄目だった。
何が駄目だったのかというと、俺の言った言葉の性でシエラが晒し者になってしまったという罪悪感でだ。
それ以来シエラには指輪状態になるように命じた。
そして再び視線は俺へと向けられた。
今ではもうその視線に慣れたからどうってことはない。
「買い物も終わったし帰るか」
「そうですね。早く帰って晩御飯を作りましょう」
帰る途中、車が通り過ぎた。
そういえば・・・
「シエラがこっちに来てまだ間もない時、車を見た時、驚いてたよなぁ~」
「そうでしたか?」
「覚えてないのか?『高速で走る猪がいます!』って驚いてただろ」
「!!」
「あとは飛行機に対しては『大きな鳥が飛んでいますあれは食べれる鳥ですか!?』って聞いてきたし」
「~~~!!!」
「きわめつけはテレビだったな。『マスター小人が閉じ込められています。助けましょう!』って言って壊したな」
「もう止めてください!お願いですから!!」
指輪が熱い。
恥ずかしくて赤面してるな。
「ごめん。ちょっと昔の事思い出して懐かしくなってね」
「だからと言って口に出すのは意地が悪いです」
「ごめんごめん。お詫びに今日は俺が作るからハンバーグ」
「お気持ちだけで結構です」
「遠慮するなよ」
「遠慮します。・・・刀夜あれを見てください」
「・・・またあいつらか」
今朝、学生に金を脅していた情けない大人がまたやってるよ・・・。
それともう一人いるな。
「あれで懲りてないっていい根性してるよ」
「行きますか?」
「視界に入ったから仕方ないな。・・・おいお兄さん方」
「あ?・・・げ、お前は今朝の・・・」
「また会ったね。で、どうする逃げる?」
「・・・馬鹿が今朝とは違うぜ!兄貴!!」
「こいつか・・・」
大柄で体格のいい男が俺の前に出てきた。
「あんたがこの人達のリーダー?」
「そうなるな。お前、強いんだって?」
「あの人達が弱いだけだ」
「言うじゃねぇか。ついて来い。ここじゃあ狭い」
・・・晩御飯遅くなるな。
男の言う通りに後へと着いていった。
「ここがちょうどいいな」
「・・・・・・」
ついた場所は広い空き地だった。
周りは工事現場で使われている塀で囲まれている。
「ここなら邪魔ははいらねぇ」
「ここって隕石が落ちた場所だろ。入っていいの?」
「問題ねえ。調査できなくて放置されてる場所だからな」
「それもそうか」
「じゃあ行くぜ。出てこいハイン!」
「頼む。シエラ」
男の腕にあった刺青から大きな人型で角が生えた異人種が出てきた。
「シエラ。こいつは」
「オーガです」
「でかいぁー。ムロより大きいの始めて見た」
「やれハイン!」
オーガは大きな腕を振り上げ拳を振り下ろした。
「甘いです」
難なく避け拳は地面にめり込んだ。
「ヌオオオオオオ!!」
めり込んだ拳を地面ごと持ち上げ地面の壁を作りそれを殴った。
砕けた地面はショットガンのように広範囲の礫となってシエラへ放たれた。
「ライトニング」
すべての礫を粉砕し、さらにオーガに当てた。
が、動じていなかった。
「そんな軽い攻撃効かないぜ!」
「だってさ、シエラ」
「わかりました。二段階あげます。・・・シャーク・ライトニング」
鮫の形をした雷がオーガの体に噛み付き電流を流し込んだ。
オーガはその一撃で倒れ戦闘不能へとなった。
「・・・ば、馬鹿な・・・」
「じゃあ今後は悪さしないように。帰ろうシエラ」
「はい。マスター」
「・・・クソ野郎が!!」
「・・・・・・よっと」
背を向けていた俺に男は隠していたサバイバルナイフを取り出し突進してきた。
俺は体を横にずらして手首を掴み足を掛けそのまま遠心力で放り投げた。
「つ・・・つぇ・・・」
「知ってた?負けを認めたくない奴って大抵マスターを狙うんだよね。だからこうして鍛えてるわけ。・・・まだ続ける?」
「・・・まいった・・・」
「そこのお二人さん。この人担いで帰ってね」
二人は言われた通り担いでその場を去っていった。
「刀夜。帰らないのですか?」
指輪に戻ったシエラがその場で立ち尽くしていた俺に声をかけた。
「なぁシエラ」
「何でしょう」
「この隕石動かなかったか?」
保護も何されてなくその場に置かれている隕石に触れた。
「私にはわかりません」
「そっか」
「気になりますか?」
「・・・いや、多分気のせいだな。もう遅いし帰ろう。シエラ今日はお疲れ」
「私は大丈夫です。刀夜はどうですか」
「俺は大丈夫だ。家に帰ったら晩飯作ってやるからな」
「私がやります」
「遠慮すんなよ。俺だって日々練習してるんだよ」
「私に任せてください」
結局家に着くまでどっちがご飯を作るか口論になり、最終的に俺はシエラに命令し、俺が作ることにした
「はい。出来たよ」
「・・・・・・」
家に帰り約束通りハンバーグを作った俺。
途中でシエラが邪魔しようとしたら座って待つように命令させた。
「今回は上手に出来たぞ」
テーブルに置かれたハンバーグはおいしそうな匂いと形をしていた。
「そうですね。とてもおいしそうです」
「だろ。食べてみてよ」
「・・・・・・はい」
シエラは箸を取りハンバーグを一口食べた。
「・・・どう?」
「・・・・・・」
よく噛んで飲み込む。
「・・・おいしいです。予想外で驚きました・・・」
「俺も日々成長してるんだよ。遠慮せずにどんどん食べてくれ」
「・・・・・・」
「シエラ。どうした?」
顔色が悪くなってきてるぞ。
「・・・・・・前言撤回しま・・す」
シエラは倒れてしまった。
「え?ウソ!?シエラ起きてくれ!シエラーーー!!」