プロローグ:非常な現実
連続投稿です、お許しください
「さて、結論から言えば君達の肉体はすでに死んでおる。此処に居る君たちは魂の状態じゃ」
「肉体は?どういうことだ」
「精神・・・というより魂は死んでおらん。元々死ぬはずでない所で死んだからの」
死ぬはずがない・・・?判定・・・?
「重ね重ねどういう事だ?」
「本来であれば死ぬはずの無い状況と現象で死んでしまったのじゃ」
「???」
つまり、どういう事だ・・・
うまく理解できない、富田なんか頭から煙が出そうな感じでうんうん唸ってるし、委員長は眉間に凄い皺を作っている。
「えっと、つまり?」
「つまりじゃ、本来の君たちがあの状況で死ぬはずの無い『教室』という場所で空間の歪みに巻き込まれるというイレギュラーで死んでしまったがゆえ、完全に死に切れておらんのじゃ」
「ああ、なるほど」
「え、加賀君解ったの?」
「簡単に例えると山でのんびりしていたのに、いきなり新幹線が突っ込んでくるみたいな事だ」
「加賀それってあり得ないだろ」
「それぐらいあり得ない事が起きたって事だ」
目で爺さんに確認を取ると頷いてくれた。
「そう、それぐらいあり得ない事が起こったのじゃ。
本来なら君たちが死ぬ未来に『教室』という場所は選択肢になかったのじゃ」
「選択肢とか・・・ゲームみたいだな」
「似たようなものじゃよ。選択肢はどこにでも転がっておる。もちろん、死に直結するモノも少なくはないがな」
人生なんて糞ゲーとはよく言ったものだ
それにしても、だ
「空間の歪みと言ったか?なぜそんな事が起きた?普通は起きない現象なのだろ」
「世界と世界がぶつかったのじゃ」
「ぶつかった?」
「そうじゃ、ぶつかったのじゃ。
元々、世界の配置は複雑での、螺旋と衛星を組み合わせた様な形なんじゃ。
世界と世界がぶつかる事は稀にだがある。しかし、ぶつかっても世界を覆う結界が衝撃を殺すのじゃ」
「ならなぜ」
爺さんは首を振る
「全く解らん。今までに例が無い異例の事態なんじゃ。
まるで同じサイズのビー玉同士を軽くぶつけて、大きなヒビが入るようなものじゃ
じゃから検証処か推論すら立って無いのが現状じゃ」
中々に面倒な事に巻き込まれて居たらしい
「死因は解った。では、次の質問だ。俺たちは元の世界に生き返る事は出来るのか?」
後ろの二人が息を飲む、そんな雰囲気がした
「申し訳無いが元の世界で生き返る事は出来ない」
爺さんは申し訳無さそうにそう言った
後ろの二人は何とも言えない悲痛な雰囲気をしている
「理由は?」
「幾つかあるのじゃが・・・主にこの二つじゃ
一、神が直接世界に手出しをしては鳴らない
二、君達の死体をかなりの人間が見てしまっている。もちろん、君達の親族を含めての」
一つ目はラノベとかでよくある話だ、だが
「死体を見られて居るのが問題だと?」
「大問題じゃ」
「どうしてだ?俺達の死体はそんなに損傷しているのか?と言うか、俺達の肉体はどう言う事になっている」
「それはな・・・」
言いよどむ爺さん、どうやら相当らしい。
「解った、言葉にしにくいなら自分で見た方が早い。見ることは出来るか?」
「出来るが・・・ススメはせんぞ・・・」
「誰かが不幸を被って見なきゃ納得は出来ん。それなら、俺が見る」
「むぅ・・・そうか・・・解った」
俺は深呼吸して覚悟さらに強固に固める
「行くぞ」
爺さんのその声が聞こえた次の瞬間、送られて来たイメージを視て俺は足から力が抜け崩れ落ちそうになる。そして、心も挫けそうになった。
失神せず喉まで込み上げて来る出るはずの無いモノを出さなかった自分を褒めてやりたい。
送られて来たイメージを一言で言うなら、『エグイ』、グロイじゃなくてエグイ
場所は教室、死体は歪みが最初に見えた位置。俺達の死体はグチャグチャだった。
しかも、ただグチャグチャではなく、歪みに飲み込まれたのであろう床と天井の一部、更に椅子や机を巻き込み天井から床に掛けての奇怪なオブジェクトの様だった。
まるで机と椅子を天井かまで高く積み上げたオブジェクトから人間の体が生えているかの様、しかも机と一体化した皮膚天井と机の隙間から微かに見える指、至る所に散りばめられた肉、椅子から生えた服を着てるのに手首から先が無い恐らく男性の腕、そして偶然だろう自分達の生気の無い顔が机と床と天井と机と交りながらだがオブジェクトの真ん中に並んで置いて在った。
正直、一部の皮が裏返っているとか、肉体が捻じれているみたいな想像なんか目じゃない、もっとおぞましいものだった。
「はっ、はっ、はっ」
「加賀君!」
「加賀!」
委員長と富田が駆け寄ってくる
だが、俺に反応する余裕はない
受け入れたくない、そんな現実を込み上げ来るモノと一緒に飲み込む
息が荒い。深呼吸をしようとすると息が詰まりそうになる
何とか深呼吸して気持ちを落ち着かせた
そして、爺さんに聞いた
「あれが、あんなのが、俺達の死体なのか?」
「残念ながらな」
爺さんは残酷に告げる、あれは現実で俺たちの末路だと、あれはお前達の死体だと。