プロローグ:混乱と紹介
俺の一言で爺さんが固まった。たぶん、後ろの二人も固まっている。
「答えろ爺さん」
固まった爺さんに向けて慣れない威圧をしながら俺が催促をかける。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
硬直からいち早く立ち直ったのは委員長だった
委員長は噛みつく様に俺の肩を掴んだ。
「どうした、委員長。何かあったか?」
「どうして私達が死んだって言ってるのよ!私達は今此処に居るじゃない!」
嗚呼、そんな事か
「一番可能性が有りかつ現実的で、普通は一番そうあって欲しくないと思うからだ。あと、肉体が此処に有るとは限らない」
俺がそう言うと委員長は泣き崩れた。
いきなり訳の分からない場所に連れて来られ、自分はもう死んでいる等と言われたらこんな風になってもおかしくは無い。
泣き崩れた委員長を見ていると
「っ・・・どうしてそんな事を思うんだ!なんでそれが一番現実的なんだ!」
今度は富田がその場に立ったまま吠えるように言ってくる。強がりで言っているのか目尻に涙が溜まっている。
「どうしてと言われてもな・・・夢にしてはリアリティが薄いし、幻覚にしては苦痛が少ないし・・・・まあ、極論勘だな」
「なんとなくでそんなこと言うなよ!」
まるで、現実を受け入れたくないと云う様に富田は喚く
二人の気持ちは解らなくも無いが、今はの俺からしたらそんな事はどうでも良い。
「甘えるな」
冷たい声で精一杯の威圧を込めて俺は言った。
すると、二人は気圧されたように黙る
「此れが現実かはどうでも良い、俺達が死んでいるか何てどうでも良い。
現状を見ろ、自分の置かれた状況を理解しろ。
解ってると思うが、喚くだけでは解決せんぞ。
まずは深呼吸でもして落ち着け」
俺は二人にそう言う
二人は喚くのをやめて深呼吸をすると俺に誤ってきた。しかし、富田お前の深呼吸は何でラジオ体操式なんだ?
「ごめんね加賀君、迷惑掛けたみたいで」
「その・・・ごめん」
「気にするな、こんな状況でこんな事を言ったんだ。混乱するのは当たり前だ」
「さて、爺さんどうなんだ?俺たちは一体どういう状態だ?」
爺さんに向き直る。
爺さんの顔にはもう微笑みなど無い。そこにあるのは驚愕と諦めが混じった表情だ。
「そうじゃな、まずは儂の自己紹介をしなくてわな
儂は君たちで言う所の神様じゃ」
「神様・・・?」
「紙様・・・?」
大体の予想はしていたので俺は動揺はしなかったが、流石に二人は驚いている。
あと、富田よまだ混乱が抜けてないのか・・・?それはペーパーだ。
「そう、神様じゃ。正確には主神といった所かの」
爺さんは更に衝撃的な事を言い、二人は言葉を失ったように顔を驚愕の色に染めている。
あと、爺さん。富田が言ってるのは、神様じゃなくて紙様で、ゴットじゃなくペーパーだぞ。
「それって凄く偉いのでは・・・?」
「いや、そうでもないのじゃ。」
委員長が敬おうとすると、それを否定して爺さんは溜息を吐く
「太陽神や月神の様に親しみ安い訳でも無く、商売神や農業神の様に身近でもないし、死神や疫病神の様に恐れられている訳でも無い。管理職の様なモノなのじゃよ・・・世界と世界の空間管理が主な仕事じゃな」
どうやら、神様も神様で苦労が絶えないようだ。
「まあ、それは良いのじゃ。主神は威張り散らしてだけではないと思っておいてくれれば」
「は、はあ」
「紙様、俺たちの自己紹介はした方がいいのか?」
委員長は神様だという事だからかまだ、表情も声色も少し硬い。
だから、富田それはペーパーだ。
「いや、君たちのことは調べさせて貰ったから大丈夫じゃよ」
「そっか」
一体どこまで調べられたのか気にはなるが、履歴書レベルらしい
ずいぶん簡単だな
予想以上にプロローグが長くなってしまった・・・
もう少し、プロローグは続きます
6/11 少し改変しました