一章:エルグラウンドへ
お待たせしました、ようやく一章です。
視界が元に戻ると周りは鬱蒼とした森だった。
人目に着かない安全な場所なのかもしれないが、鬱蒼とした森というのは何かが出そうではある。
周囲を見渡すと二人もちゃんといる。転生先を間違えて誰かだけ居ないなんて事は無かったようだ。
富田も委員長も髪の色や瞳の色等は変わって居ない。
自分も肉体を新調したというのに何一つ違和感無く再現され、体に違和感は無い。
少しこの世界の事を考えると、ある程度の知識も出てくる。頭の中で本を捲って居るかの様な感覚だが問題は無い。キッチリ眼を・・・いや、頭を通した方が良いだろう。此方も問題ない。
唯一変わって居るのは服装だろう。
全員の服が、学生服ではなく麻で作られた半袖長ズボンに代わっている。
『新鑑定』を使っても服と靴に鑑定を掛ける。
麻の服
麻で出来た有り触れた服
麻のズボン
麻で出来た有り触れたズボン
丈夫な革靴
皮で出来た丈夫な靴
湿気には弱い
無難・・・と言うか普通の服だった。
そんな事をしていると行き成り
「異世界キターーーーーーーー!」
異世界に来た事に、どこぞの三角形のバイク乗りの様に両手を振り上げて富田が興奮しだす。それを宥めようと委員長が頑張って居るがアレは委員長も若干興奮しているな・・・木乃伊取りがっと言う奴に成りそうだ。
その光景を呆れながら横目で見つつ、爺さんに言われたように自分のステータスを見る。
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カガ オウマ(加賀 王摩)
真人 男 16
LV :1
HP :80
MP :120
力 :26
守 :24
俊敏:31
知力:29
魔力:31
運 :57
パッシブ
魔力精密操作LV1
MP回復率上昇LV1
剣術LV1
気配察知LV1
料理LV1
アクティブ
剣技LV1
光魔法LV1
闇魔法LV1
空間魔法LV1
契約魔法LV1
エクストラ
隠蔽LV1
解体LV1
魔眼LV1
精神異常無効LV極
真鑑定LV1
死者ノ王LV1
アイテムボックスLV極
言語完全翻訳LV極
字体完全解読LV極
スキル習得率上昇LV極
完全記憶能力LV極
称号
死を受け入れた者、異世界人、転生者、次元神の祝福
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幾つかのスキルと称号の習得をしている。あと、若干若返ってる。
これで確信したが、どうやら称号獲得時に習得できるスキルに関してはシステムアナウンスは無いようだ。
習得した称号とスキルを『新鑑定』で確認する。
まずは二つ増えた称号から
『異世界人』
何かしらの切っ掛けで異世界に来た者に贈られる称号
魂の形を保持したままで無いと贈られない
言語完全翻訳、字体完全解読を付与
この称号だけで異世界に来た実感がある称号だ。
それにスキルとしてはかなり有難いスキルなのでこれは素直にうれしいスキルだな。
『転生者』
何かしらの切っ掛けで異世界に生まれ変わった者に贈られる称号
記憶を保持したままで無いと贈られない
アイテムボックス、スキル習得率上昇、完全記憶能力を付与
肉体を再構成しているから、ある意味生まれ変わって居る事を実感できる称号だ。
アイテムボックス習得したと言うことで軽く凹んだが・・・まあ、些細な事だろう。
『次元神の祝福』
次元神から祝福を貰った者に贈られる称号
爺さんからのモノだろう。
続いて称号で増えたスキルだ
『アイテムボックス』
道具を収納するスキル
殆どの物を収納出来るが生きているものは収納できない
収納出来る種類はスキルレベルによって変わる
出し入れは念じるだけで出来る
5/∞
これが欲しくて空間魔法を取ったのにこんな所で覚えられると知って軽く凹んだ・・・・。
まあ、空間魔法は空間魔法で使い処が有るだろうから気にしないでおくとしよう。
『言語完全翻訳』
言葉を訳すスキル
例えあらゆる種族と言葉が通じるようになぞ☆
言葉が通じる=心が通じ合うではないので注意だ☆
コミショーには宝の持ち腐れだね☆
異世界に来た場合一番有難いスキルだ。
言語から覚えなおさなくては成らないのは大変だからな。
ただ、☆と語尾がうざい。あと、一言・・・いや、一文余計だ。
『字体完全解読』
文字を訳すスキル
あらゆる文字を翻訳し自分でも書けるようになるスキル
子供が書いた字だろうと、古代語だろうと、寝ぼけて書いて自分すら何を書いたか覚えていない日記でも翻訳されるよ☆
まあ、脳筋には関係無いスキルだね☆
此方も異世界に来た場合有難いスキルだが・・・説明がやっぱりウザい。
古代語等も翻訳されるのは有難いが、その前後の例えは要らないし・・・やっぱり、語尾と☆が鬱陶しい。
喧嘩売って来てるのだろうか?
『スキル習得率上昇』
-unknown-
何も言えない。
スキル名から大体の効果は予想できるが・・・テキストの書き忘れか、そもそもコレ担当の柱が居ないのだろうか。
『完全記憶能力』
見聞きしたものを記憶し忘れないスキル
忘れないからと言って、目的の記憶を瞬時に引き出せる訳ではない
忘れたい過去もしっかり記憶に残る
地味に有難いスキルだ。
物覚えが良し悪しに関わらず有れば役立つモノだ。
忘れたい事など今の所無いし、あっても思い出さなければ良いだけだ。
しかし、称号で『アイテムボックス』が手に入るのを知っていたなら『空間魔法』よりも『結界魔法』を取りたかった。
まあ、後悔先に立たず・・・折角貰ったスキルだ有効活用出来るようにしよう。
「さてと・・・」
一通り自分のステータスを確認した後、二人を見てみるとやっぱり委員長も一緒に興奮していた。予想通り、木乃伊になったみたいだな。
冷ややかな目で二人を見てやると、気が付いた委員長が恥ずかしそうに萎縮して、富田はサッと目を剃らした。
「まったく・・・何をしているのやら・・・」
「いや、だって・・・異世界じゃん?冒険とかファンタジーとか何かこう・・・高ぶるモノが有るじゃん?」
「そういうのは腰と状況を落ち着けてからやれ」
言い訳じみた事を言う富田に釘を刺す。
その様子を見て、苦笑いで誤摩化そうとする委員長。つられてはしゃいでしまったのが少し恥ずかしいのだろう。
「とりあえず、自分のステータスを確認しとけ。
一通り済んだら移動しよう、野宿が良いならこのままでも良いが」
言われて気がついたのか二人とも慌てて自分のステータスを『新鑑定』で確認し始める。
その間に俺は『アイテムボックス』の中身を確認する。
『アイテムボックス』の中に入って居るのは以下の通り
・手紙
・片手剣
・金
・冒険者初心者セット
・学生服
手紙は爺さんからのようだ。此処で読むより何処かで腰を落ち着けて読んだ方がよいだろう。
片手剣は、木刀。希少度は普通だったので恐らく『剣術』に合った武器で尚且つ今のレベルでも持っていておかしくないものを入れてくれたのだろう。・・・檜の棒よりはましと見るべきなのだろうか。
さり気なく普通と言ったが物にはランクが有るランクは以下の通り。
普通
準希少
希少
特殊
古代
神具
幻想
虚無
武器屋で買えるものは基本的には普通、準希少の二種類で余程腕が良い鍛冶屋が打った武器は。希少や特殊クラスまで届く事も有るらしい。
それ以外の希少度のモノは遺跡等でしか手に入らないらしい。
このランクの中の幻想、虚無クラスは神界でも片手で数えれるほどしか確認されて無いらしい。人間が持つのは夢の先の先の先だろう。
金は五百円玉サイズの銀貨が二枚に十円サイズの銅貨が十枚。これで三万ギセル・・・日本円で大体三万円程らしい。宿代等も有るので、直ぐにでも稼げるような事をしないと数週間しか持たないだろう。
冒険者初心者セットは、中型のポーチに色々と入ったモノの様だ。回復ポーションや解体ナイフもこのセットに一纏めのようだ。高級なモノは無くどれも『新鑑定』で低品質と見られるものだ。コレぐらいなら一般人が持っていても違和感は無いだろう。
学生服は・・・俺が向こうで着ていた学生服だ。何故か新品同然の様になって居る。此方の世界で着る機会なんて無いと思うが・・・記念品なのだろうか。希少度は希少だった。
以上がアイテムボックスの中に入っていたモノだ。
ボックスの中を確認し終え、二人を見てみる。
まだ確認は終わって居ない様だ・・・と言うか、富田は何度も何度も見返して要る様に見える。ショーウィンドーの向こう側のトランペットに憧れる少年のような目だ。
念のため『新鑑定』で自分の周りも鑑定しておくとしよう。
見慣れないモノが有るかもしれないからな。
『木』『木』『木』『草』『草』『木』『草』『草』『草』『毒草』『草』『木』『石』『ミステリーサークル』『石』『石』『石』
基本的に普通のモノが・・・って、なに?変なモノが混じったぞ?
再度、『毒草』と出た草とミステリーサークルと出た場所・・・自分達の真下地面に『新鑑定』を使う。
『毒草』
正式名:グラエノ草
遅行性の毒
多年草で少量で有れば煎じて、酢とあえれば気付け薬としても使える
適切な処理をしないまま大量に食べた場合、後日全身の穴という穴から血を吹きだして死ぬ
此方に来て一番に見つける草じゃないようなえげつないモノだった。
良く見るとちらほらと有るので少しだけ根ごと抜いて『アイテムボックス』にしまって行く。
アイテム収集したくなるのは人間の性なのかね・・・?
続いてミステリーサークルを調べる
『ミステリーサークル』
森の一部に突如出来た草の薙ぎ倒された場所
野生の魔獣が倒したにしては不自然過ぎる程綺麗な円
果たしてこの円を作ったものは宇宙人か未知の魔人か・・・
この先にある洞窟・・・地底人かクルピラか・・・果たして、一体何が待ち受けているのだろうか。
情熱的な陸地の曲が流れそうな説明だった。
と言うか、毒草に負けず劣らず説明がおかしかった。
この世界に宇宙人や地底人が居るかどうかに関しては突っ込みも何もしないが・・・何故クルピラ。
この先に洞窟が有るらしいが獣道は一本しか無いし・・・ホント何だこれ。
気を取り直して富田と委員長を見る。
富田は両手に木製の片手剣を一本ずつ持って振り回している。剣はアイテムボックスから、あの動作は『双剣』のスキルを試しているのだろう。
委員長の方はスキルを見終え、ボックスから木製のロッドを取り出して居る所だった。ロッドは魔力が通しやすい素材で魔力を増幅させる効果が有るらしい。もっとも普通ではたかが知れているだろうが。
俺も、木刀を出てくるように念じてみると軽く広げた手に上に急に木刀が現れる。思った以上に強く念じなくてもスムーズに出し入れが出来るようだ。
そして、出てきた木刀を両手で持ち軽く振ってみる。
昔、学校の授業の一環で剣道をやったがその時よりもブレも少なく振れている。ちゃんと『剣術』のスキルが働いているようだ。
勿論、LV1なのでそれ程大した能力では無いのかも知れないが、それでも戦闘経験が薄い人間としては有り難い能力である。
そして、木刀を腰に刺し、ポーチを腰に付け、二人に声を掛ける。
「二人とも準備大丈夫か?」
「俺は大丈夫だ!何か出たらこの双剣でバッタバッタと薙ぎ倒してやるぜ!」
「富田君そもそも何かが出たら一大事だよ?あ、私も大丈夫」
「そうか、では行く・・・前にある程度の事を決めておこう」
「決める?」
今いる場所はちょっとした広場の様になっている。此処から一本だけ伸びている獣道、此処を真っ直ぐ進めば何処かに出られるだろう。
全員が大丈夫なようだが、このまま町や人里に行く訳には行かない。
「ああ、決めなければ成らない。この世界での俺達の設定をな」
「そのままじゃ駄目なのか?」
「この世界で名字持ちは基本貴族だ。加賀も富田も小鳥遊も使えないと思った方がよい。他にも、異世界出身を公言しないとかな」
「高原しない?」
「高原(タカハラ)では無いよ?周りに言いふらさない事のほうよ」
委員長・・・小鳥遊・・・いや、美奈子がそう言って修正する。
富田・・・もとい、幸田の馬鹿っぷりは俺は放って置いて。
「事前知識を軽く頭を通したが、決めなくては成らない事はとりあえず二つ。
一つ、色々と明かさない事。名字も含めてな。
二つ、此処の世界で俺達がどう行動するかの当面の目標」
「色々ってなんだよ」
「先も行った名字、異世界出身の事。それ以外にも一部のスキルや称号だな」
「どうしてスキルとか隠すんだよ。全部おおっぴらにした方が強く見えるじゃないか」
予想以上にアホな答えが返ってきた。
「情報が知れ渡れば不味い事もある。盗賊とかに『こいつ、俺よりレベル低いし、このスキルはこういう対処をすれば良いからコイツを狙おう』とか思われるぞ?」
「じゃあ、完全に明かさなければいいんじゃ無いか?」
「知らない人とパーティー組もうとした時に、スキルを明かさない得体の知れない奴と思われても良いならやっても良いが?」
「あ、怪しい奴とは組まねーし」
「気持は分かるが、絶対は無いぞ?お前、騙されやすそうなんだから。だから、パッシブかアクティブのスキル二・三個だけ明かしておけ」
まだ何か言ってきそうでは有ったが面倒なので黙殺する。
「じゃあ、目標を決めましょう。まず、町に行き宿の確保とギルドへの登録をする、でいいかしら?」
「そうだな・・・後で何かあったら宿を取ってから相談しよう」
「じゃあ、冒険の始まりだな!」
富・・・幸田が目を輝かせるように言う。
まあ、冒険は冒険でも行先は秘境ではなく人里だがな。
金の価値は以下の通りです。
一円=1ギセルの価値と成って居ます。
石貨 10ギセル
鉄貨 100ギセル
銅貨 1000ギセル
銀貨 10000ギセル
金貨 100000ギセル
白金貨 100000ギセル
神鉄板 1000000ギセル