三大魔王は争いが好き
か弱い女子(見た目はお世辞にもか弱いとは言えないが)を置いていくとはなんてこと。
隣の兵士君なんか青ざめてしまっている。それはそうだ、私が頼りになるどころか足手纏いになりそうだって思っているだろうからね。
「・・・いなくなってくれる方が都合がいいんだけどね」
「? 何か言いました?」
私の呟きに反応する兵士君。
ごめんね、君にはちょっと寝てもらおう。
兵士君に素早く睡眠をかける。途端、ふらりと倒れる体を支え、地面に横たえた。
「さて、と」
前世で狼なんて見ることはなかったからなんかドキドキしちゃうな。
土と血で汚れているけど、洗ったら綺麗になるだろう。耳は血まみれだから早く治してあげないと、失聴しちゃうかもしれない。
人狼の子は、敵意むきだしで私を睨みつけている。魔王城の物を食べるくらいだ、よっぽど空腹だったんだろう。
人狼は強い種族だ。その中でもこの子は将来有望なのではないだろうか。何せ、空腹状態にもかかわらずに他の兵士達と互角に張り合っていたんだから。
「・・・まぁ私には敵わないけどね」
今の君では、ね。
襲い掛かってきた人狼の子をかわし、睡眠をかけた。
圧倒的に強い私のかけた睡眠の上疲れているから効果抜群。
ぱたりと倒れ眠りこけてしまった。
「いっちょあがり~」
私には秘密がある。
それは、私が割と強いってこと。
普通1、2つしか扱えないらしい魔法を全属性扱えるし、さっきみたいに無詠唱も可能だ(人前では詠唱してるけど)。
そして、ずばぬけてるのが魔力量。
他の魔族をみてわかったけど、私の魔力量は桁違いだった。
ルー様は強大な魔力を保持していると言われている。
次期魔王候補とされるからには強くなきゃいけないしね。
そんなルー様の魔力量は今寝こけている兵士君の5倍以上はあると思われる。
相当の量だよね、流石次期魔王候補。
だがしかし、私はそれをこえるのだ。
恐ろしいことに、ルー様の3倍はある。
ちなみに、量だけで言うならば現魔王様より多い。
それ最強じゃんって思うかもしれないけど、いくら魔力が多くても、技の威力がなければ意味がない。
私の技の攻撃力はかなり低い。魔力の質とやらが関係してくるのかわからないけれど、そこだけはハーフ相応。だから短期戦にはむかない。
せいぜいが上級魔族レベル。まぁそれでも結構強いんだけれども。
魔王様やその周囲の魔族は、魔力量が多いってだけで勝てる相手じゃない。
何百年も生きてるベテランだし、一撃一撃が重い。かなわないよね。
え?なぜそれを隠してるのかって?
だってバレたら戦場に駆り出されるでしょう?
私は命をかけての争いが好きじゃない。プライドをかけての争いなんてのなら構わないんだけどね。
魔王軍は戦争ばかりだ。というのも、魔王と呼ばれているのが3人もいるせいだ。
1人はデスデモーナ=ピサロワース=サタン。
この魔王城の主。
アスタロト=サタン。
元精霊の魔王。
最後はマリアベル=ハルスハルト=サタン。
人間界で悪名を轟かせている魔王。
三大魔王だなんて呼ばれているけれどその仲は悪くて、常に争っている。
私が少しでも戦力になるだなんて思われてもみろ、あっという間に軍行きだ。前線で毎日戦争に明け暮れるなんて、そんなのごめんだよ。
私は小心者なんです!
2015.2.2 一部改変しました。
2016.6.30 主人公の強さ説明のところなどを改変しました。