次から次へとなんなんだ
「オリベ様」
「なんだい?」
トレニアが去ってすぐ話しかけられた。
チョコレートケーキをはやく届けたいのに、一体何の用なんだ?
「ちょっといいでしょうか」
お?
トレニアも言っていたように、人間の血が混ざってる魔族っていうのは半人前とされる。半人前の魔族はそれだけで見下されることも多い。そんな中で、私に敬語を使ってくる人はあんまりいないのだ。
「幼獣がマンドラゴラを食い漁ったようでして」
「幼獣が?マンドラゴラの悲鳴を聞いてよく死ななかったね」
マンドラゴラは引き抜くと悲鳴を上げて、まともに聞いた人間は発狂して死んでしまうという魔草だ。
某眼鏡の魔法使いがでてくる映画などで出てくるそれが、魔王城の畑に栽培されている。
呪術に使ったり薬や毒にもできるから、収穫の際気をつけなきゃいけないけど結構便利な草なんだよね。
魔族なら悲鳴を聞いても気絶することはあれど死にはしないし。
「それが・・・人狼の血をひく幼獣のようでして」
「え。本当に?」
「はい」
人狼っていうのは獣人とは別の種族。
獣人は獣耳と尻尾を生やしていたり体毛が濃かったり、獣を擬人化したみたいなかんじ。獣人はひとつの姿しかもってなくて本来の獣の姿にはなれない。
で、人狼っていうのは、魔獣の姿で生まれる。
通常の狼より強い魔力をもって生まれ、大きくなってから人の姿になる。
1度人化すると満月になるか、主と定めた者の魔力を受けない限りは、元の魔獣の姿には戻らない。
獣人は人と共存して生きるけど、人狼が他の種族に干渉することは少ない。
人狼は主と定めた者に付き従い生きるから。
「人狼の幼獣ならマンドラゴラの悲鳴で死ぬことはないか」
ただ聴覚に優れているから・・・。
「魔王城の物に手をつけた魔獣は殺害するのが掟。しかし人狼の血を引く者を殺し人狼の怒りをかうのは得策ではないかと」
すたすたと歩きながら説明する兵士。
「余程飢えてたんだろうね・・・今頃暴れまわってるんじゃないか?」
私は転生してからひたすらに本を読み漁り知識を身につけた。
異世界のことなんて何にもわからないからね。
おかげで魔王候補の教育係なんてのをやってるんだけど。
その時得た知識によると、人狼が悲鳴をモロに聞くと、幻聴や幻覚と言った麻薬作用を受けると言うことだった。
「流石オリベ様です。博識なオリベ様なら、幼獣の扱い方もわかると思いまして。幼獣は今、衛兵がくいとめています」
「了解。任せて」