蜂蜜王子とお嬢様
久しぶりの更新です。
展開は進んでいない気がします・・・。
どうも。最近蜂蜜王子なんて呼ばれだしているラナンキュラスですよ。「蜂蜜色の髪と蜂蜜みたいに甘い声」からつけられたそうです、こっぱずかしい。
そんな蜂蜜王子こと私だけど、フランチェスカお嬢様と絶賛チェス中だったりします。
現在家出中(おしのびの割りには権力をふりかざしまくっておられますが)のお嬢様は、生粋の貴族だ。マウンテのような、吟遊詩人も楽団も宝石商もお抱えの仕立て屋もいない場所は暇で暇で仕方がないらしい。2日に1度のペースでお茶会だのなんだのに誘ってくる。
一応おしのびということなので、自分の素性を大勢の人にしられるわけにもいかない。なので、自分の正体をしり、なおかつばらすことのない(口止め料はしこたまふんだくりました)私は体のいい話し相手なんだよね。
最初は私もお断りしようとしたんだけれども、
『ファスルベル公爵令嬢たるこの私とお茶ができるなんて、平民のあなたにはそうそうない名誉でしてよ!』
と有無をいわさぬ表情でいわれちゃったんだよね。まぁ、女の子と話したりすることは嫌いじゃないし(むしろかわいい女の子は好きだし)、別にいいかなぁ、と思ってる。
「チェックメイト」
「くっ!平民の癖に、どうしてそんなにチェスがつよいんですの!?」
「お嬢様もじゅうぶんおつよいですよ」
「皮肉にしか聞こえませんわ!私、これでも中々の腕だと自負しておりましたのよ、それなのに・・・」
平民がチェスなんてする機会はないはずですのに、と歯噛みするお嬢様。
私がチェスがつよい理由は、前世の父親にある。
私の父親はボードゲーム全般が趣味で、高校の時もボードゲーム同好会とかいうのにはいっていたらしい。で、チェス、将棋、オセロなどのボードゲームを幼い頃の私たち姉弟に教え込んだ。すっかりはまりこんだ私たちは、小学校から帰ってきてからのほとんどをそれらのボードゲームをしてすごしたのだ。
地区の小さな大会で優勝したこともある。そう簡単にやられる私じゃないのだ。
「もう一度ですわ!このままやられっぱなしではいられません。今度こそ、あなたの王をメイトしてさしあげます」
「喜んでお相手いたします」
負ける気は毛頭ないけどね。
再戦のためチェス盤に駒をならべていると、お嬢様がたずねてきた。
「そういえばラス、あなたの故郷はどこなんですの?」
ドキッとした。
まさか、魔界出身ですだなんていえないよね。
「・・・東の方です」
「東?まさか、イシドア国ですの?」
「いえ、それよりももっと東の、小さな島国です」
「へぇ・・・まぁイシドア人にはみえませんわね」
イシドア人の典型的な顔の特徴は、細いたれ目にまろ眉、したぶくれだ。既婚前の女性はおしろいで肌を白く塗る習慣がある。つまり、典型的なオカメ顔。で、比較的小柄で、男性でも平均160センチくらいらしい。
切れ長の目にすっとした鼻で170センチ以上ある私では、とてもじゃないけどイシドア人にはみえないだろう。正反対といってもいい。
「ラス、あなた、イシドア国の伝統舞踊の『傘踊り』をみたことあって?能面をつけた女性が、紙でできた傘で踊るのですわ」
「みたことはありませんが、文献を読んだことはあります。何百年も前に異世界から召喚された勇者が伝えたものだとか」
おそらく、召喚されたその勇者はアジア人、ついでに高確率で日本人だと思う。で、日本舞踊かなんかの踊りが色々アレンジされて傘踊りになったのだと思われる。
イシドアはところどころアジアっぽいらしいし、いつかいってみたい国のひとつだ。
「私もみたことはありませんの。でも、一生のうちに一度はみてみたいのですわ」
「私も興味があります。機会があればみにいきたいものです」
「イシドア国の伝統は独特で変わってますが、中々面白いんですのよ。織物の模様なんかも面妖で」
お嬢様、勉強とか嫌いそうにみえるんだけどこれで意外と勤勉で、他国の特産品とかくわしいから、私にとってもいい話し相手だったりするんだよね。
「ああ、イシドア織のことですか?黄土色と漆色の斑模様の・・・お嬢様、並べ終わりましたよ」
それでは、再戦開始だ。
「ただいまロウ、またせたね」
「ん、おかえり。依頼、いくつかピックアップしてきたけど、今からいく?」
「ああ、ありがとう」
ロウから依頼内容のかかれた書類をいくつか受け取る。
そのほとんどが、有害な魔物の討伐依頼だった。
「最近、魔物の討伐依頼が増えてきたよね」
「・・・魔王が誕生するまえぶれだって、皆噂してる。勇者が召喚されるんじゃないかって」
「魔王はずっといるんだけどね」
それにしても、勇者を召喚って・・・地球からくるのかな。
もし本当に勇者があらわれたら、少しだけみてみたい気持ちがある。
皆が噂している魔王って、やっぱりルー様のことだろうか。魔物が活発になっているのはなにか関係している?
「・・・とりあえず、かたっぱしから片付けて行こうか」
「ん」
討伐依頼がふえてるってことは、それだけ危険視されてるってことだ。
魔物が人里近くまでおりてきてるんだろう。
少しでも減らしておかないとね。
「そういやロウ、私、ちょっとやってみたいことがあるんだよね」
「やってみたいこと?」
「うん。成功したらけっこう便利だと思うんだ。今日、やってみようかな」