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魔王の元教育係ですが勇者の仲間になりました☆  作者: レーゼ
人間世界へやってきました☆
24/31

令嬢の会合

 御歳(おんとし)47歳の王弟殿下に、大嫌いな姉の代わりに5番目の奥さんになれと迫られるのは、プライドの高いお嬢様には耐えられなかったんだろうなぁ。

中年の王弟殿下じゃなくて、若くて自分と年もさほど変わらない王太子殿下に嫁ぎたかったわけだし。

 私だって、そのような状況に陥ったら、お嬢様みたいに逃げ出さないとは限らない。はたまた、悲劇のヒロインぶって想いを押し殺すのかもしれないけれど。


「そんなこみいった事情を、みずしらずの私たちに話してしまってもよかったのですか?私たちがこのことを人々に話して回り、結果、噂が王都までいきわたるとは思いませんでしたか」


 私たちはとおりすがりの冒険者だ。

初対面のお貴族様への義理なんてこれっぽっちもない。

 それに、ロウなんてフードを深くかぶりっぱなしだ。あやしいことこのうえないよね。



「辺境にある町とは言え、王都からの商人はやってきます。彼らに私たちが情報を売ることもあるでしょう」

「・・・とおりすがっただけの、義理もない我らを救ったお人よしが、そんな真似をすることはないと信じて話したんだよ。別に王都に噂がいって、連れ戻されても構わない。むしろその方が、フランチェスカお嬢様も諦めが付くさ」


 苦笑するベンさん。お嬢様にふりまわされてるんだろうなぁ、多分。

 背後をみやると、無言で歩き続けている嬢様の姿がある。最初の方はぶつぶつと文句を言っては侍女たちになだめられていたけど、かれこれ20分近く歩いているから、文句をいう体力がもう残っていないようだ。

ちょくちょく休憩を挟んでいるけど、それでもお嬢様の足ではきついだろう。


 別にただ苦手なだけで、回復(キュア)治癒(ヒール)が使えないわけじゃないんだけどね、あのわがままなお嬢様にはかけてあげたくない。なんて、そんなことを思う私はきっと、性格が悪いんだろうな。私も半人前ながら魔族だしね。


「もうすぐ山道も終わりですよ」


ベンさんに告げると、ほっとしたような顔をする。

ベンさんもお嬢様の体調を気遣っていたんだろう。また駄々をこねられちゃたまんないしね。



 それから5分もたたないうちに、木々のない道へでた。山をぬけたのだ。

これで魔物に遭遇することは殆どないから(ゴリットが人里におりてきたみたいな例外はあるけど)安心だ。お嬢様がいくら喚いてももう魔物はよってこない、なんてね。皮肉かな?



 人家がちらほらと見えてきた。

 そこに、ぽつんと人影がある。

その人影をみたロウが、横で小さくため息を吐いた。あの人影が誰か、わかったんだろう。憂鬱そうだ。


 そして、人影の正体も私たちに気がついたようだ。こっちに近づいてくる。



「探したのよ、ロウさん!」


上質な生地で作られた、淡い桜色をした膝下までのワンピースの上に、薔薇の刺繍の施された、レースのケープを身に着けている。

ゆるく結い上げている茶色の髪に着けられた髪飾りは、繊細な作りで、ものすごく高価とはいかないまでも決してただの町人には買えないであろうものだ。


勿論彼女は、この町の人間ではない。

彼女こそ、最近のロウの悩みの種。


ディケム商会総帥の愛娘、レアンヌ=ディケムだ。


「・・・ディケム、嬢」

「いやだわ!レアンヌって呼んでって言ったじゃない」


ロウに言い返した彼女は、私をみた。

否、私の斜め後ろのベンさんをみた。そして、顔をわずかにしかめた。


「どうしてファスルベル侯爵の護衛兵がここにいるのかしら?それも、兵長さんが」


へぇ、ベンさんって兵長さんだったんだ。

顔をやや引きつらせて、ベンさんが答える。


「覚えていただけて光栄です。レアンヌ=ディケム様こそ、どうしてここに?」

「パパのお仕事のついでで滞在しているのよ。あなたこそどうしてこんな辺境の町にいるのかしら?」


その時。


「やっと町ですの!?この(わたくし)をこんなに歩かせるなんて、言語道断ですわ!」


遅れて、お嬢様たちが登場した。

お嬢様は、レアンヌ=ディケムをみて驚いた顔をする。レアンヌ嬢の方もまた然りだ。


「あら、フランチェスカ様までいらしたの?しかも、ここまで歩いてきたですって?」

そんな馬鹿な、とでも言いたげな表情だ。対するお嬢様は、

「長い間歩いてきて疲れきった(わたくし)を、まさかレアンヌ嬢とひきあわせるだなんて!女神シャイリアは(わたくし)をよっぽど困らせたいようですわね?」

といやみをぶつけた。どうやらお嬢様は、レアンヌ嬢がお嫌いのようだ。


 これ幸いと逃げ出そうとするロウの腕を、がちっと掴むレアンヌ嬢。逃がす気はなさそうである。どんまい、ロウ。


「フランチェスカ様はこんなところでどうなさったの?この町には特産品もなければ目立った観光場所もありませんわよ」

「レアンヌ嬢には関係のないことですわ。魔物には襲われ、馬車は壊れ、あげくのはてにはあなたとあうだなんて。今日は厄日に違いありませんわ」


口元がひくつくレアンヌ嬢。

君たちの間にいったい何があったんですか?


























主人公の軽快な口調の中に、うっすらと(シリアスさ)を滲ませることができるようにがんばっています。

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