旅立ち
新章、開幕です!・・・tkここからが本当の本編です。
前章から4年後で、ラナは19歳になっています(前世の年齢もあわせると36歳ですが)。
ちなみにルーキフェルは15歳。
「何を考えてるの?」
「・・・ロウと初めてあった時のことだよ。ルー様と2人で、奴隷競売場にのりこんだんだっけ」
魔王城を眺めながら、私はロウの問いに答えた。
今でも昨日のことのように思い出せる。
あれは4年前。
あの後、城に帰ったら案の定ばれてて、怒られるかと思いきや『さすが殿下』だなんて言われて。
トレニアには『ずるいですわー!』って言われたっけ。
「もう、行く?」
「・・・いいの?」
「うん」
懐かしくて、私の大事な思い出のひとつになっている。
「ばいばい、魔王城。ばいばい、ルー様」
10年をすごした魔王城に、立派に成長した教え子に、別れを告げる。
ここにくることはもう二度とないかもしれない。
ルー様にあうことはもう、二度とないかもしれない。
そう思うと少し悲しかった。
私の名前はラナンキュラス=オリベ=アシアティクス。
魔族と人間の親をもつ半人前の魔族だ。ちなみに両親は行方不明である。
この世に生を受けて早19年。2日前までは、次期魔王候補最有力のルーキフェル=ブラッドリー殿下の教育係だった。
私の隣を歩くのは人狼のロウ。
4年前魔王城のマンドラゴラの畑を荒らした人狼少年である。現在16歳。
あの日、人狼の群れにロウを帰そうとしたのだが、ロウはそれを拒み、恩人である私を主と決めた!と叫んだのである。
で、人狼の長が、群れを救った私にならロウを任せられるとかいいだして、今に至るのである。
ロウという名前は私が名づけた。
狼、なんて安直にも程があるけど、いい名前が思いつかなかったのだ。許してくれ。
ロウはあれよあれよと大きくなり、人化できるようになった。
しかも人化したら銀糸の髪の神秘的な外見で、魔王城の掃除婦やら現魔王専属の侍女やらをばったばったおとしてくださった。
おかげで皆の私を見る目は更に冷たくなった・・・・ひどい。
そんなロウだが私に忠実で、もふもふだし、強いし、もふもふ(大事なことなので2回いいました)なので私には勿体無い従者なんであった。
魔法は使えないがすばやいししなやかだし、満足ですとも。ルー様はなぜかロウのことが気に入らないらしかったけど。
そんなことはさておき。
私は今、魔王城のある暗黒大陸をでて、人間の大陸をめざしている。
私は15年間魔王城にいた。
暗黒大陸をでたのは、人狼達を救いだしにこっそりぬけだしたあの1回きりだった。
勿論、あの生活に不満なんてなかった。
ルー様の教育係は楽しかったし、周りには疎まれていたが気にならなかったし。前世への未練も今ではあまりない。
でも、どこかで薄々感じていた。
魔王城の私の居場所が、なくなりつつあることを。
現魔王デスデモーナ様は、魔王稼業を引退することを考えているらしい。デスデモーナ様は吸血女王。
吸血鬼は長命種だ。強い者なら1000年以上生きることもあるという。
しかしだ。
デスデモーナ様はかれこれ500年以上、三大魔王の1人として暗黒大陸に君臨してきた。
13歳の時に即位して、500年以上を魔王として、縛られてきた。もう限界なのだろう。
魔王候補は4人。ルー様とその弟のミカディオン殿下。トレニアの兄であり淫魔のデジロ。そしてデスデモーナ様の姪のユウィフィール様だ。
ミカディオン殿下は10歳になったばかり。年齢的にも実力的にもきっと魔王にはなれない。
デジロはルー様に心酔している。選ばれてもルー様に王位を明け渡すだろう。ユウィフィール様はまだ魔力を制御できていない。
消去法でも、ルー様が魔王になるのは確実だった。
ルー様が即位すると同時に、トレ二アとの婚姻も進められるだろう。
そうなれば私は邪魔になる。
トレニアの侍女のイルジーナが泣きながら訴えてきた。
それに、私がルー様に教えられることはもうない。
ルー様やトレニアの邪魔にはなりたくない。
それに、新しい世界をみてみたいとも思っていた。
だからこそ私は、ロウと2人きりで旅立ったのだ。