天使だと思ってた子はやっぱり魔族だった
「うわあああああああああああああああああ!」
「誰か、王宮騎士団を呼べ!魔族だぁ!」
建物の柱が音をたてて崩れる。
われ先に逃げようとする者、こちらに武器を構える者、ルー様の威圧に腰がぬけてしまった者。人狼を出品した奴隷商人など、正面から威圧され失禁してしまう始末だ。
えーと。
・・・なんでこうなったのかなぁ・・・・?
時を逆戻ること数分前。
ようやく私達は人狼の魔力のあるところへたどり着いた。
しかしだ。
たどりついたそこは奴隷競売場だったのである。
「少々手遅れでしたかね・・・」
これでは睡眠で眠らせて密かに救出するという作戦は実行できない。
するとルー様、こうおっしゃいました。
「人間共を襲おう」
恐っ。
「この会場をめちゃくちゃにして、混乱に乗じて人狼達を助け出すんだ。俺が襲撃するから、ラナが人狼達を救出しろ」
「ですが、檻壊せないと思うんですけど」
「鍵をさがせ。・・・心配無用だ、これでも次期魔王候補。人間が束になってかかってこようと負けない」
結局、それ以外に方法もなさそうだったので、しぶしぶ承諾した。
それを拒否してルー様が拗ねたら、後でなだめるのが面倒くさいとか思ってない。断じて。
で、競売場の中にはいり、入り口のそばにたっていた軽装の男の人に話しかけてみたらどんぴしゃ。
人狼を競りにだした奴隷商人(=人狼達を襲った人間の親玉)に雇われた用心棒だった。
その奴隷商人だけは必ず捕まえて人狼達の前につきだすつもりだ。
きっとやつざきにされるだろう。
ひどいと思うかもしれないが、自業自得だ。
それで、今に至る。
傭兵でもなければ武道の心得もない人間の貴族や奴隷商人達にとって、次期魔王候補のルー様の威圧はききすぎてしまったらしい。失禁とかかんべんしてくれ。
私はといえば、無事人狼達を救出し、今ものすごく感謝されているところである。
「あなたとルーキフェル殿下がいなければ、我らは人間に嬲られ慰み者にされいいようにされ惨めな最期を迎えることだったろう。感謝する。我ら人狼は、命の恩は命で返す。あなた方が呼べば我ら、必ずかけつけることを誓おう」
人狼の長は私に頭を垂れる。
「いやいや、私そんなたいそうなことしてないです」
「いや、我らはあなた方に救われたのだ」
そんでもって木笛と首飾りを渡された。これを吹けば近くの人狼がただちにかけつけ、首飾りをみせればなんでも言うことをきくらしい。
とんでもないものをもらってしまった。
「あああああああああああ、助けろ!誰かわしを助けるのだ!!」
「たすけてええ!」
それにしてもうるさいなぁ。
ルー様も迷惑がって・・・・・・・・・・・・・・・・・なかった。
え、ちょ、なんで、なんか恍惚とした顔してるんですけど!?
天使なルー様どこいった!?
「悲鳴や絶叫に快感を覚える魔族は少なくないからな」
説明してくれる長。マジかよ・・・。
ルー様の新しい面(Sなとこ?)を発見した1日だった。
ああ、疲れた!!