第五話 物語を見に──……
その場を片付けヘレナ達はその建物のほうに近寄った。
この森にある建物はあの物語を上映する映画館ぐらいしかない。
そのはずなのに──……
「ねぇ……映画館っていつできたの?」
ヘレナはつぶやくようにそう問いかけた。
そしてその問いにフローナはこう答える。
「確か100年くらい前のはずよ。それから20年後、物語が完成して
上映されるようになったって聞いたわ」
「100年も前にできた建物が──
──こんなにきれいなことって……ありえる……?」
ヘレナの言ったことに、一人残らず皆が首を横に振った。
「建て直したってことは……?」
「ううん、そんなことインターネットには載ってなかったよ……?」
フローナの質問にエレンがそう答えた。
しかしこの森にある建物は男がつくった映画館しかない。
そしてここにたどり着くまで、6人とも自分たち以外の人の姿を
見ていない……。
……となると、消えた人々はこの建物の中にいる可能性が高い、ということになる。
「入るしか、ないみたいだね……」
アランはそう言うと、その建物のドアを開け中に入っていく。それに続き残りの5人も中に入って行った……。
──中に入ると、映画館というのもあるのかホールがあり、きちんとカウンターまであった。
ヘレナ達はカウンターに近寄り、少し様子を見てみようとした──
──その時。
「おや? お客様ですか?」
その声に、とっさに振り向くとスーツ姿をした男が立っていた。
「あ、はい。あの──映画を見たいんですが……」
「では、こちらへ。会場へご案内致します。」
男は表情一つ変えずにそう言って歩き出す。
ヘレナ達もそれに続いた。
その時──
男が笑っているように見えたのは、
気のせいだろうか──……