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序章
ある街の外れにある深い森の中。そこには映画館があるらしい。
その映画館は一人の男がつくり、その男がつくった、たった一つだけの物語しか上映しない。
──その物語には〖名前〗というものが無い。
そのため映画館ができ、その物語が上映されるようになった当時は
〖名も無き物語〗
と呼ばれていた。
人はその〖名も無き物語〗を見に、深い森の中へと
消えていく──……
──時がたち……
人々は男がつくった物語を
〖呪われた物語〗
と呼ぶようになった。
それもそのはず……
その物語を見に森の中へと消えていった人々は──
一人として、帰ってこなかったのだから──……