Sense4
俺は、最初から多大な出費を強いられた。取得したセンス【弓】のために矢三十本で一セットが30G。それを四セットで120G。
そして【合成】と【調合】のそれぞれの初期キットで300Gずつの600G。
そして初心者用ポーションが三十本で150G。
合計870G。残り残金は、130G。初期の所持金が1000Gだからどれほど出費した事か。
普通の職業編成の場合、センス取得時の初期武器を二束三文で売って、ワンランク上の武器にして消耗品を買ったとしても500Gは残る計算だ。
そして、弓のコストパフォーマンスの悪さの理由は、矢にある。矢とは使い捨てなのだ。放った矢は回収できないのが基本。そして初期の敵を矢だけで狩る場合三本使って一体倒す。その時のドロップアイテムは最大で3G、最低で1G。それは全て当たった場合であり、外せば、当然儲けはない。
俺は生産職も持っているので、それを別のアイテムにしたとしても、せいぜい価値が三倍になる程度。
「……つまり、初期のコストパフォーマンスの悪さが原因なんだな」
「そう。しかも、魔法は、センス自体のレベルを上げていけば、若干の追尾機能も付いたりするけど、弓はそういったものは全然ないの。攻撃がほぼ直線。だから弓だけは大分プレイヤーの能力依存になっちゃうわけ」
「……ま、まあ、モーションアシストもあるから初心者でも最低限には出来るはずだよ。だから気を落とさないでユンちゃん」
「あ、ああ」
何だろう。さっきまで一緒に冒険できるとはしゃいでいたミュウに説教されている。俺がそんなにゴミセンスを取ったのが気に入らないのだろうか。いやまあ、テンプレ構成聞いた上でこれを取ったのだ。怒られたって仕方がない気がする。
「良いから狩り行こう。戦闘のチュートリアルを早く済ませちゃおう。私、午後に友達と狩りに出かけるから」
「お、おう」
セイ姉ぇ、助けて。と視線を送るが、苦笑いされた。
俺達は、初期の町・エルプシェル――通称、第一の町――の城壁を出た広い平原に出た。このマップでは、城壁外のマップのMOBは、初心者プレイヤー向けであり。さらに東西南北にそれぞれ道がある。
β版では、東方面の攻略が盛んで、南北は高レベル帯だったために、攻略が手つかず。西方面は、採取系のアイテムが豊富だが敵MOBのバランスが悪いそうだ。
「先ずは敵。お兄ちゃんは、弓で攻撃して、お姉ちゃんは、魔法でお願い」
「了解」
「分かったわ」
それからしばらく狩りにいそしんだ訳だが、妹が剣を振り回し、MOBである草食獣っぽい奴らをバッタバッタとなぎ倒し、セイ姉ぇが水の弾丸を打ち出す間、俺は、矢を射るのだが……
「全然、当たらねぇ!」
そうなのだ。セイ姉ぇは、同じ射程二メートルほどで魔法を当てるのに、同じ遠距離持ちの俺は二メートルでも外す。そして外した矢は使い捨て。悪い、コスパが悪すぎる。
そして何より、近づきすぎて敵の攻撃を食らう。離れ過ぎて当たらない。さらに矢筒には最大30本。いちいち詰め替えないといけない。
「面倒くせぇぇ!」
「だからゴミセンスなんだよ。矢全部使い切ったでしょ。じゃあ最後に≪アーツ≫ね。ちょうど剣のセンスが5になったから」
ミュウが徐に、草食獣に近づく。近づいて剣を正眼に構えたと思ったら、流れるような三連撃を繰り出す。残像が薄い銀色の光を残して見える。
「これがアーツね。ユンお姉ちゃんも弓のセンスを上げればそのうち覚えると思うけど、私は、早くセンスの切り替えをお勧めするな」
「ちなみに、センスは10レベルずつでセンス取得するSPを一つ貰えて、大体上位センスは、レベル20~30位で発現するから」
「あ、ああ」
三人で狩り。得たアイテムでは、弓矢代には遠く及ばず。これはもう生産職でお金貯めつつ、センス総入れ替えでもしないといけないように感じた。
そして、ミュウとセイ姉ぇと分かれて、俺は一人、町に戻って習得センスの確認に移るのだった。
改稿・完了