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Only Sense Online  作者: アロハ座長
短編・SS・外伝集

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357/359

4-2


 OSOは、度重なるアップデートで様々な友好MOBを追加していった。


 イノシシ型のMOBであるビッグボアの出現エリアでは、その幼獣であるウリ坊を連れている姿が見られ、可愛らしい姿にプレイヤーがホッコリし、餌を与えると、どこからか拾ってきた宝石や鉱石、化石などのアイテムを渡してくれる。


 他にも湿地帯エリアに出現するウィルオ・ウィスプは、薬草系アイテムを与えるとウィスプが落とすドロップアイテムをランダムでくれたりする。


 他にも餌を与えると一時的にプレイヤーに協力してくれるMOBなどが多く居るが、そうしたMOBに共通するのは、そのMOBに対応するアイテムを渡すことである。


 例えば、食べ物系アイテムだったり、回復アイテムだったり、光り物好きなら宝石や鉱石などであったりする。

 そして、俺は、そんな友好MOBの一体に会うために出かけていた。


「たしか、この巣穴だったよな」


【蘇生薬】の素材である桃藤花の樹が生える丘の近くの廃村。そこから繋がる別のルートとして飛竜山脈というエリアがある。

 そのエリアは、上段、中段、下段と分かれている。

 下段と中段には、飛竜山脈の内部に繋がる洞窟の入口が広がっており、中は複雑な迷路のようになっている。

 そして、上段エリアには、無数の洞窟があり、その中にはワイバーンというMOBが住み着いているのだ。

 俺は、そのワイバーンの巣穴に忍び込み、巣穴の奥にあるアイテムを確かめる。


「うーん。この巣穴は、ハズレだな。まぁ、使い道があるから回収するか」


 ワイバーンの巣穴は、一つ一つの巣穴に住んでいるワイバーンが溜め込んだアイテムが集まっている。

 例えば、宝石の原石だったり、鉱石だったり、ワイバーンを襲ってきた人間の武器や防具など巣穴ごとに収集されるアイテムが違っている。


「おっ、この巣穴は、武器の巣穴か。掘り出し物はないかなぁ……あっ【タダンの強弓】?」


 本来、殆どの武器が鋳つぶして金属インゴットにしたり、分解して素材に戻したりするのだが、稀に武器の中からユニーク武器が見つかることがある。


「うわぁ、飛竜の巣穴からユニーク系の武器、初めて見た。」


 ユニーク武器は、耐久度が設定されて居らず、固有の追加効果を持っていたりする。

 なので、人気センスに対応する武器種のユニーク武器は、それだけで価値が高かったりする。

 そして、残念ながら、弓系のユニーク武器は、対応する弓系センスが不遇センスであるために、価値は低かったりする。


「おっと、今回は目的の巣穴じゃないから長居は無用だな」


 俺は、素材変換用の武器と【タダンの強弓】を持って、ワイバーンの巣穴から出てくる。

 ワイバーンの巣穴でアイテムを集める時は、全部取り尽くさない方がいい。

 取り尽くそうと時間を掛けると、出かけていたワイバーンが巣穴に戻ってきて逃げ道が無くなり、狭い場所で戦闘する羽目になるのだ。

 だから、安全マージンを取って、半分くらいを目安にワイバーンの巣から脱出する。


 そして、脱出した後で、ワイバーンに見つからない岩陰に隠れて、先程入手したユニーク武器を確認する。


 タダンの強弓【長弓】

 ATK+50、DEX-50 追加効果【分裂矢(5)】

 不器用な力持ち・タダンが使っていた強弓。不器用故に、矢が当たらないタダンは、放った矢が増える魔法の弓を特注で作らせた。


「うわぁ、ピーキーだなぁ」


 アイテムのフレーバーテキストを読みながら、その追加効果を注目する。

 この固有の追加効果である【分裂矢】とは、放った矢が攻撃力を分割して、魔法の矢を増やすという効果だ。

 この追加効果の括弧にある数字は、一度の射撃で5本の魔法の矢が生成されるという意味だ。

【分裂矢】の追加効果は、強化素材で付与できるがそれでも精々2か3である。


 また、弓系アーツに適用されるので、二本の矢を同時に放つ【連射弓・二式】の場合だったら、五倍なので10本。

【魔弓技・幻影の矢】なら5本の矢の五倍なので25本の攻撃が降り注ぐ。

 ただし、分裂する矢の数が多すぎ、武器のステータス補正でDEXが大幅に下がるので、一撃の攻撃が小さくなりすぎ、命中率も大幅に下がっていることになる。


「数打ちゃ当たるし、連鎖ダメージで下がった一撃が軽いのを補えるけど、正直使えないだろうなぁ」


 俺は、試しに装備してタダンの矢を空に向けて、アーツを放つ。


「――《魔弓技・幻影の矢》!」


 本体の1本と4本の魔法の矢、そして更に分裂した20本の矢が赤い尾を引いて、空を駆ける。

 だが、一本一本が細く、またDEXが低いために遠くに飛べば飛ぶほど、バラバラの方向の軌跡を描いて消える。


「痛ってぇ……思った以上に狙いが収束しないし、DEX下がるから反動ダメージ痛いなぁ」


 俺は、タダンの強弓を引いた手を振って、痛みを和らげる。

 まるで打ち上げ花火のような光景に、演出用のネタアイテムが目潰し弾幕張り用の装備かな、と考える。


「至近距離で使えば、散弾銃っぽく使えるけど、正直俺が近距離まで近づく時は、マジックジェムで自爆してるよなぁ」


 そう呟いて、俺のプレイスタイルには合わないか使わないな、と思い、インベントリに仕舞い込む。


「さて、目当てのアイテムが見つかるまでワイバーンの巣に潜るか」


 そうして、幾つかのワイバーンの巣に入り探すが、物欲センサーに引っかかったのか、目当ての巣穴を見つけるのに時間が掛かった。


「よし、見つけた! ――【飛竜の糞】!」


 普通なら、ハズレ枠ではあるが、個人的にはとても重要なアイテムである【飛竜の糞】をスコップで麻袋に詰めて回収する。

 この【飛竜の糞】は、強烈な悪臭を放つ黒っぽい土のようなアイテムだが、【アトリエール】では、野草や骨粉などと混ぜて放置することで【中級肥料】の素材になる。

 そうした肥料を畑に加えれば、薬草などの栽培アイテムの個数や品質が上がるので、大量に使うが、今回は別の用途で集めている。


「よし、集まった。早速行くか!」


 俺は、インベントリに数袋分の【飛竜の糞】を回収した後、飛竜山脈を下りて、ポータルで【迷宮街】に飛んでそこから荒野エリアに出る。

【第一の町】から見て、飛竜山脈は、北西の方角にあり、荒野エリアは、南方向にある。

 そこまで大きな距離があるエリア間を移動して、【飛竜の糞】を運んだ理由が、今回の友好MOBである。


「えっと、この辺りでいいかな」


 周囲を確認し、荒野エリアの敵MOBの巡回エリアでないことを確認し、インベントリから麻袋を取り出し、荒れ果てた荒野に撒いていく。

 見る人が見たら、黒っぽい土を撒いて、この荒れ地でも開拓しようとしている人に見えるかもしれない。

 だが、これは、この悪臭である友好MOBを誘き寄せるためのものである。


 モゾ、モゾモゾモゾ――


「おっ、このくらいで良かったのか」


 張り切って【飛竜の糞】を集めて撒いたが、二袋分余ったので、【中級肥料】ができるな、と素材が浮いたことを喜ぶ。

 そして、硬い荒れ地の地面を掻き分けて姿を現わしたのは、なんと――甲虫だった。


 綺麗な青い甲殻を持つ甲虫が地面の中から、やぁと手を上げるように前足を出して姿を表す。

 大きさは、体長30センチほどの甲虫型MOBで名前が――オオルリ・フンコロである。


 そう、大きな瑠璃色のフンコロガシなのだ。

 ちなみに、可愛いというより、その美しい光沢からカッコイイ部類のMOBだろう――だけど、フンコロガシだ。

 俺は、地表に姿を現わしたフンコロガシが前足と後ろ足で湿ったいい土を纏め上げて、泥団子のように纏め上げるのを少し離れたところから見守る。

 コロコロと器用に脚を動かし、逆さに立って丸めた泥団子が徐々に大きくなる。

 体長30センチほどのフンコロガシが巨大な泥団子を作り上げるのは、壮観である。


 その様子を撮ったプレイ動画が上がり、地味に人気になるほどである。

 流石に、男の子は泥団子が好きなようだ。


 そんな泥団子を作るオオルリ・フンコロという友好MOBは、土系のアイテムを好み、集まってくるのだ。

 だから、【飛竜の糞】でなくても、腐葉土や肥料などでもいい。極論、ただの土でもいいのだ。

 だが、与えた土系のアイテムの質によって得られる報酬の確率が変わり、現状でコスパがいいのが【飛竜の糞】だったのだ。

 そんなオオルリ・フンコロは、土系アイテムを好み、巨大な泥団子を作り、自身の巣に運んでいく。

 その際、得られる報酬と言うのが、特殊なのだ。


「おっ、できたか?」


 最終的に自分の体の倍以上の大きさの泥団子を作り上げたオオルリ・フンコロは、その泥団子の上に登り、後ろ足で立ち上がるようにして、俺に前足を振る。

 その瞬間、インフォメーションが流れる。


 ――特殊バフ【大瑠璃スカラベの加護(中)】を貰いました。効果は3日間継続します。


 この特殊バフとは、イベントや特定の休憩ポイントで一時的にステータスの強化を得られる物である。

 そしてこの【大瑠璃スカラベの加護】と言うのは、プレイヤーのLUKを上昇させる効果がある。

 LUKステータスを上昇させるアクセサリー等は貴重であり、このオオルリ・フンコロの特殊バフで得られる効果は現在、極小、小、中まで確認されている。

 効果継続時間も3日間と長く、ちょっとした大事なアイテムの作成やボス戦での手助けになってくれたりする。


「フンコロさん、ありがとう。また頼む時があるからその時は、よろしくな」


 俺がそうお礼をすると、泥団子から下りたオオルリ・フンコロが自分の倍以上の大きさの泥団子を逆立ちで運んでいくのを見送る。

 俺は、【大瑠璃スカラベの加護】でLUKを底上げした万全の状態で、新たな生産アイテムに挑戦するのだった。


今回はあっさり目で特に可愛い友好MOBではないですけど、フンコロガシだけに運が付くプレイヤーのお助けMOBでした。

モンスター・ファクトリーの第五章も予約投稿しておりますので、そちらの方もよろしくお願いします。

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