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続いて俺が向かったのは、レティーアとベル、コハク、リレイ、マミさんというちょっと大きな集団だった。
だが、その大きな集団の中にも2つのグループが別れており――
「おー、この子、可愛いなぁ、ほれ、ここが気持ちええんか?」
「わぁ、モコモコのモフモフです。あー、気持ちいい」
コハクとマミさんは、ウッドデッキの地面にしゃがみ込むようにして、レティーアの使役MOBたちを構っていた。
コハクがフェアリーパンサーのフユを擽り、餌付けとしてお菓子のクッキーを小さく割って与えている。
マミさんは、草食獣のハルのモコモコの体に顔を埋めて、頬擦りしている。
ちょっと頭の三角帽子とメガネがズレているが、その表情は、本当に幸せそうだった。
「あっ、このお菓子美味しいです。うまうま」
呑気に、女子会なのに特に人と関わらずにお菓子をパクパクと食べるレティーア。
「ふふふっ、エルフ耳の美少女ですね。是非、お近づきになりたいですね。その耳に痛覚が通っているのかちょっと知的好奇心を満たさせて下さい」
「にゃにゃっ! レティーに不埒なことをする者は、私が許さない!」
「ふふっ、あざとい感じのネコミミと肉球パンチがまたいいです!」
手をわきわきと妖しく動かしてレティーアへとにじり寄るリレイをベルによって妨害される。
その際、ベルの手に着けられた肉球グローブがほっぺたに当たるが、それもまた美味しいと感じるリレイは、表情緩みっぱなしである。
同じ表情を緩めたマミさんとリレイでは、邪悪さ加減の違いから、どうしてもそちらを避けるように近づく。
「あっ、ユンさん。こっちにも来たん?」
「ユンさん。この子たち、すごい愛想いいです。可愛いですよ」
俺が近づいたことに気付いたコハクとマミさんは、顔を上げて話しかけてくる。
「お茶会は、どう? 楽しんでる?」
「楽しんどるよ。ただ、お茶やお菓子を何時までも食べられへんから小休止や」
「私も、途中でお腹いっぱいです」
コハクとマミさんは、甘い物は好きだが程々にするタイプらしく、今は、レティーアの使役MOBと触れ合って楽しんでいるようだ。
「なら、余ったお菓子とかお持ち帰りしてもいいよ」
「あー、それええな。後で一人の楽しみにできるし」
「ですけど……残りますかね?」
コハクが、お持ち帰りのお菓子に思いを馳せる一方、レティーアを見て、小首を傾げるマミさん。
さっきからノンストップで食べ続けるレティーア。
一応、これでもセーブしている方らしいが、それでも残りそうもない。
「まぁ、レティーアが来ること分かってからか、持ち帰りようのお菓子は分けてあるから帰りに渡すよ」
俺の答えに、コハクとマミさんが苦笑を浮かべる。
「用意ええなぁ。それにしても、ほんとここは居心地もええな」
「まぁ、一応、自慢のお店と薬草畑だからな」
こじんまりとしたお店だが、愛着がある【アトリエール】と薬草畑だ。
風に乗って微かに漂ってくる薬草畑の緑の香りが癒やしを与えてくれる。
「「…………」」
そんな癒やし空間でレティーアの使役MOBたちを撫でていたコハクとマミさんは、そのまま、目蓋がゆっくりと閉じ、草食獣のハルとフェアリーパンサーのフユに寄り掛かるように眠ってしまった。
「ふふふっ……ユンさん、どうしました?」
じゃれていたリレイとベルは、こちらが静かなのに気がつき、頬に肉球グローブを押し当てられながら、こちらの方に来る。
「寝ちゃった。静かにな」
そう言って、俺が人差し指を立てると、二人とも静かに頷く。
「羨ましいなぁ、モフモフお昼寝なんて贅沢だなぁ」
そう感想を呟くベルの言葉に微苦笑を浮かべ、俺は、まだお菓子を食べ続けているレティーアに目を向ける。
「レティーア。このまま寝かせてあげていいか?」
「構いませんよ。まぁ、あとでハルとフユは労って下さいね」
「なら、作り置きしたパンもお土産に着けるな」
俺が声量を落とした声で答えると、ハルとフユの口から涎が少し垂れ、ジュルッと慌ててて啜る。
そして、心なし表情をキリッとさせて、眠る二人は任せろ、という雰囲気を醸し出す。
それがちょっとおかしくて、クスクスと笑う。
「じゃあ、任せるな。俺は、店の方からタオルケットを持ってくる」
草食獣のハルとフェアリーパンサーのフユに寄り掛かるコハクとマミさん。
【アトリエール】の店舗でタオルケットを取り出し、二人の体にそっと掛ける。
「んんっ……」
「えっ」
タオルケットを掛けた瞬間、コハクとマミさんが小さく身動ぎして、起こしてしまったのか、と不安になる。
だが、それは杞憂ですぐに、すぅすぅと規則的な寝息を立てる姿にホッする。
そして、いい夢でもみているのか、二人ともにへらぁ、とした笑みを浮かべる。
「モフモフとお昼寝するスクショゲット! できれば、ケモミミを二人にも着けたいけど、起こしちゃいそうだなぁ」
「ふふっ、後でそのスクショ分けてくださいね。いつもツッコミを入れるコハクと控えめな原石少女のマミさんのだらしない笑顔のスクショは、貴重です」
大体が、リレイの所為だと思うなぁ、と思うが口にしない。
リレイは、気持ちよさそうに眠るコハクとマミさんの邪魔をしないばかりか、嬉しそうに眺めているのをみて、少し不安に思いつつもその場を離れるのだった。
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