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Only Sense Online  作者: アロハ座長
短編・SS・外伝集

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349/359

2-2


「はぁぁぁっ、てやぁぁぁっ!」


 グランド・ロックの背に巣を作るコカトリスのボスMOBのキング・コカトリスと対峙し、ライナの単槍がその喉元に突き刺さる。

 それが決め手となって、ボスの体が横倒しに倒れ、光の粒子となって消える。


「おめでとう。それじゃあ、あとはポータルの開通とコカトリスの巣からコカトリスの卵を採取して帰ろうか」

「疲れたぁ~」


 その場でへなへなと座り込んで仕舞うライナとアルたち。

 流石に、ハード過ぎたかな、と思い俺とエミリさんが微苦笑を浮かべる。


「悪かったな。突然、やらせて」

「ほんとよ。こんなハードなのは聞いてなかったわよ。ちょっとした金策のつもりなのに」


 ふて腐れるライナにアルが苦笑いを浮かべる。


「でも、グランド・ロックの背に登れる機会を待つのも長いし、ポータルは、チャンスがあれば開通した方が良いから。それに次は俺たちのサポートが無い時かもしれない」

「……わかってるわよ」


 俺の説得に、唇を尖らせて、ぷぃと視線を逸らすライナの口から納得の言葉が出る。


「けど、疲れた! 屋台祭りの時、なにか奢ってよね!」


 ライナは、我が儘を口にするが、むしろ可愛い部類の内容なので俺とエミリさんは、微笑みながら頷く。


「そうだな。なら、頑張ったことだし屋台祭りのお代は、全部俺が出すよ」

「あら、それじゃあ、悪いから私も半分出すわよ。ライナたちをボスに挑ませた共犯だもの」


 エミリさんは、クスクスと笑いながら、そう提案してくる。

 俺一人でも出せるが、エミリさんも四人に何かのご褒美を渡したい、という気持ちだろうことを汲み取り、素直にその提案を受ける。


 そして、グランド・ロックの背にあるポータルを登録し、コカトリスの卵を採取して第一の町に帰る。

 屋台祭りの準備で食材アイテムが普段より高値で買い取られたことで、ホクホク顔のライナたち。

 屋台祭りのお代は、俺とエミリさんが折半で奢るためにそのまま所持金も増えて嬉しいようだ。


 そして、屋台祭りの当日を迎える――


「わぁ、なんか前にやったプレイヤー主体のイベントよりちょっと落ち着いた感じ」


 露店に立ち並ぶ屋台を見回しながら、そんな感想を口にするライナ。


「私は、小洒落たものを食べたいですわ」

「私は、和菓子ですかね」


 ですわ、ですわとお嬢様口調で喋るフラン。

 楽しそうに目を細めて屋台を見回す素朴な雰囲気のユカリ。

 彼女たちの前にライナが一歩躍り出る。


「悩んじゃ駄目よ! ユンさんとエミリさんが奢ってくれるんだから気になったものを買わなきゃ! こんにちは! そこの新作バーガーを6個ください!」

「ライちゃん、遠慮なさ過ぎ」


 遠慮無く、全員分の屋台のバーガーを注文するライナに空かさずアルからのツッコミが入り、全員が微苦笑を浮かべる。


「私、全員分の飲み物買ってきます」

「なら、はい。このお金で買ってきて」


 気を利かせて、飲み物を歩き出すユカリにエミリさんがお金を渡し、俺も注文したバーガーの代金を払う。

 また、フランがこの屋台祭りのために用意されたフードスペースの一角を確保してくれたので、俺たちは、すんなりと座ることができた。


「うん。このバーガーは、甘しょっぱいソースが美味しい。後でリゥイとザクロの分も買っておこうかな」


 人混みが多く、大所帯で動くために【アトリエール】で留守番させたパートナーたちのことを思い浮かべながら、バーガーを食べ、果実ジュースを飲む。

 最初からやや重めな選択に、次は軽いものでも食べたいな、と思う俺の一方――


「次は、あの串焼き屋に行きましょう! 各種6本ずつお願い!」

「では、わたくしは、ベビーカステラを60個ほど買ってきますわ」

「えっと、私は、次は粉物にしたいので、お好み焼きを6枚買ってきますね」


 ライナ、フラン、ユカリの三人は、意外と遠慮無く買ってくるので、俺とエミリさんは、表情が少し引き攣る。


「さ、流石に、串焼きは、そんなに食べられないかなぁ。あと、お好み焼き1枚にベビーカステラってちょっと重いかも」

「味見程度のつもりだって忘れているのかしら…………(ほんと、リアルで食べてたらカロリー過多でダイエットとか気にしなきゃ行けないレベルよ)」


 俺は、最初にリゥイとザクロへのお土産で買おう、と思ったが、このペースで買っていくなら、お土産など必要なしにインベントリに溜まりそうだ。

 エミリさんも困ったように微苦笑を浮かべる一方、一瞬だけ真剣な表情に変わり、ボソッと小さく呟く。


「すみません。ライちゃんたち、レティーアさんと同じ感じで買うので」

「あー、気にしないよ。と、言うか俺たちは、人並みの食欲しかないんだけど」

「流石に、誰でもあれだけの食欲はないわよね」


 そんなアルとの会話の一方、次々と目に付く屋台から食べ物を買ってくるライナたち。


「さぁ、食べるわよ!」

「ええ、沢山食べれば、その分、成長しますわ」

「美味しいです」


 レティーアの食いしん坊キャラが伝染したのだろうか。

 幸せそうに食べる女の子三人の表情は、周囲の目が引き、それが一種の宣伝効果となっているのか、それに興味を惹かれて通り過ぎるプレイヤーがその屋台に足を運ぶのが見えた。


 そして、そんなライナたちの様子を目敏く見つけた屋台のプレイヤーたちは――


「いらっしゃい! そこのお嬢さんたち、オマケしてあげるから買ってくかい?」

「こっちは、試食もしてるよ! 是非どうだい!」

「なら、是非、貰うわ!」


 そう言って、ふらふらとあっちの屋台に呼ばれては移動し、こっちの屋台に呼ばれては食べに向かうライナたち。

 美味しそうに食べて、客引きとして利用される。


「幸運の女の子たちがいる、って聞いて見にきたら『屋台ブレイカー』のところの女の子たちじゃないか」


 ふと、一人のプレイヤーの声に振り返ると、たまに買い食いする屋台の店主プレイヤーを見つける。


「ライナたちを知ってるのか?」

「そりゃ、初期から続けている屋台店主たちなら大体知ってるぞ。『屋台ブレイカー』のレティーアさんのギルドのところの女の子たちだって」


 正確には、レティーアのギルド【新緑の風】とベルの【ケモモフ同好会】の混成パーティーであるが、外部から見たらほぼ同一ギルドに見えるようだ。


「けど、『屋台ブレイカー』って仰々しい名前ね」


 あの、ぽやぽやとした表情を余り変えない小柄な少女である調教師のレティーアから想像も暴力的な呼び名だが、それには理由があるらしい。


「レティーアさんは、使役MOBを運用する上で、かなり料理を食べる。その一方で、グルメだからなぁ。レティーアさんの水準未満の料理は、二度と買わないし、その評価は適切だ。だから、そうした部分で二度と買われない屋台が自然と消えていったから付けられたんだ」


 なるほど、レティーアに食べられ続ける、と言うのは、屋台プレイヤーの中でステータスになっているのか。

 それに、そんなレティーアと共に行動することが多いライナたちもそれに準じた味覚を持っている。

 また、レティーアに比べたら、表情が豊かなので、宣伝効果としてもばっちりだ。


「まぁ、『屋台ブレイカー』のもう一つの意味としては、気に入った屋台の供給限界まで食べて、屋台を強制閉店させる、って意味合いもあるけどな」

「「レティーア……」」


 俺とエミリさんは、頭が痛い、とでも言うような感じで呟き、アルが困ったように笑いながらいつの間にか買っていたジュースを飲んでいた。


「まぁ、今回の屋台祭りは、事前に料理ギルドの方で味とかの審査をしたから野良に比べたら変なのは混ざってないさ」


 そう言い残して、知り合いの店主プレイヤーと別れて、次々と屋台料理を買うライナたちを呼び止める。


「ほら、ライナ。そろそろステージショーの時間だから向かわないか」

「むぐっ!? わ、わかったわ。その前に! クレープだけ買わせて! イチゴホイップアイスクリームで!」

「はぁ……わかったよ。じゃあ俺もミックスベリーを買おうかな」

「私は、チョコバナナなホイップにするわ」


 そんな感じで屋台祭りの目玉であるステージに行く前に、軽く摘まめるものを買って、席を取りに向かう。


モンスター・ファクトリー3巻が3月20日に発売し、Web版モンスター・ファクトリー第4章も毎日投稿しております。

是非、そちらもお時間があれば見て頂けたらと思います。

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