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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第8部【攻城戦イベントと魔女城】

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Sense329


 六日目の朝、朝日と共に見上げる東の空には、太陽を背に聳えたつ異次元の魔女の城が建っている。

 その頭上に浮かぶカウントは、残り『67』となっており、昨夜の間に十組以上のプレイヤーが異次元の魔女と戦ったようだ。

 俺は、料理系の生産プレイヤーやら朝食を受け取り、自分で家事をしない楽さを感じながら、マギさんたちと合流する。


「ユンくん、おはよう。ちゃんと寝れた? クロードが煩くなかった?」

「あはははっ、大丈夫ですよ」


 今は【アトリエール】の店舗部が破損状態である俺は、クロードの【コムネスティー喫茶洋服店】の店舗の一画を借りて寝泊まりしている。

 昨夜は、途中まで機織り機の布を織る音や足踏み式のミスリルミシンの規則正しい稼働音を聞きながら寝ていたら寝入っていた。


「今日は、昨日ユンの見つけた地下の薬草畑の隠し区画に行ってみるか。俺も霞綿花や染料になる植物が欲しいからな」

「そうだね! 植物園にはない植物の苗木とか欲しいな。ユンっちの見つけたブラックツリーの樹液なんかは、木工系の武器の表面に塗って艶出しとかもできそうだし」


 そう言って、すぐにでもダンジョンに向かおうとするクロードたちを俺は、一番入りやすいと感じた植物園の枯れ井戸底に入り口に案内するために歩いていく。


『次は、俺が行くぜ! イッヤッホォォォォィ――』


 その途中で、第二階層の噴水前には、水を吐き出す竜の噴水に手を突っ込み、把手を引いて水と一緒に流されていくプレイヤーたちの姿を見た。

 噴水底が開くと共に飲み込まれて穴からの軽快な声が高速で遠ざかるのを聞きながら、リーリーがやりたそうにワクワクしているのを見た。


「ねぇねぇ、ユンっちやらない?」

「やらない。全身ずぶ濡れになるし、乾くまでに時間が掛かる」

「でも楽しそうだし到着まで早いそうだよ」


上目遣いで見てくるリーリーに対して俺は、視線を逸らしマギさんとクロードに助けを求めるが――


「早く行けるなら並びましょう」

「なんだ、濡れるのが心配なら水着を出そうか? フリル付きとパレオ、ショートパンツなど色々あるぞ」

「水着は要らん! 分かった並ぶか」


 まぁ昨日は不意打ちで落ちたのがいけなかったので今回は心構えが出来ているので大丈夫だろう、と思う。


「ユンっち、不安なら僕を抱える?」

「おっ、面白そう。なら私はユンくんの後ろにくっ付いて一緒に滑ろう!」

「俺は、二人に挟まれて無事に滑ることができるか不安だよ」


 小さくごちる俺たちは、列に並んでいると、そんな噴水の前を素通りし、第三階層の方向に進む見知った一団を見つけた


「これで俺たちが七勝。今日こそは勝ち星を増やしてやる! 二度と突っかかってこれねぇように実力差を見せてやる」

「それはこちらの台詞です。昨日の夜にあなたたちが寝ている間に、私たちは二度戦いを挑み星を増やし、八勝です。使役MOBの飛竜なしのあなたなど敵ではありません」

「てめぇ! 夜更かしとかずりぃぞ!」


 誰だと思ったらギルド【幻想自衛隊】のギルマス・ダンブルとギルド【ファンタズムナイト】の白部隊長の女騎士であるアリアが互いに突っかかっている。

 その後ろでは、昨日の夜疲れてもボスに付き合った【ファンタズムナイト】の女性プレイヤーを【幻想自衛隊】側のプレイヤーが慰め、お菓子とかを少し提供したりして和やかな雰囲気を出している。

 険悪なのはパーティーのリーダーである二人だけだし、またか、という雰囲気だ。

 そんな二組のパーティーを見送る俺たちは、こっそりと話をする。


「くくくっ、俺たちのために異次元の魔女の討伐数のカウントを極力減らしてくれ」

「クロード、悪役みたいな台詞を口にしないでで普通に応援したらどうだ?」


 顔に手を当てて、悪役っぽい台詞を口にするクロードにジト目を向けるが気にしていない様子だ。

 そして、次第に地下の薬草畑へと向かう列が消化され俺たちの番が回って来る。


「うへぇ、また滑り降りなきゃいけないのか」

「ほらほら、ユンっち!」

「さぁ、行こう!」


 俺は、リーリーとマギさんに手を引かれ噴水の中に足を踏み入れる。

 水を滾々と吐き出す竜の口にマギさんと一緒に片手を伸ばし、もう片方の手で俺がリーリーを抱えるように抱き締め、俺の後ろでマギさんも俺に体を密着させてくる。


「それじゃあ、行くよ!」

「ええい、なるようになれ!」


 俺は、マギさんと一緒に把手を引っ張ると、足元が開き、すぐに俺たちを飲み込み長いパイプの中を水と共に駆け抜けていく。


「――っ!?」

「うわぁぁぁっ!」

「きゃぁぁぁっ!」


俺は、二度目の経験のために口を閉ざし声を上げずに滑り降りる。。

 俺の前にいるリーリーは、水飛沫の中で感嘆の声を上げ、俺の後ろにぴったりとくっつくマギさんは、楽しそうな悲鳴を上げながら、ぐんぐんとパイプの中を滑り落ち、地下の薬草畑の前まで降りてくることができた。


「ふぅ、二回目は心の準備が出来てたから慣れたかも」

「あー、楽しかったね。でもびしょびしょだ」


 マギさんが楽しそうな笑みを浮かべて、体に着いた水気を払う。

 俺もパイプを降りる時に水を吸った防具や髪の毛の水気を絞る中で、リーリーはざぶざぶと楽しそうに水を掻き分けて進みながら、俺とマギさんの正面に回り込んでくる。


「ユンっち! もう一回! もう一回やらない!」

「やらないから。それに調べることがあるだろ」


 そう言って濡れているリーリーの頭を撫でるように押し留めると、少し不服そうに唇を尖らせる。

 その直後、高速でパイプの中を降りてきたクロードがマントと水の抵抗の少ない体勢のままパイプ出口から飛び出し、僅かに水の上を滑り、勢いを留めるのを見て、リーリーが再び目を輝かせる。


「ふむ。撥水性を高めたマントだから水の抵抗少なく滑ってしまったな」

「クロっち! なにあれ今の! 僕にもやらせて!」


 水で濡れた髪の毛を掻き分け水路から抜け出し、俺たちと合流するクロードは、リーリーを窘めつつ、全員の衣服が乾いたところで予定を話す。


「確か、武器と本、機織り機があるのだったな」

「ああ、その右手前の階段の上だ」

「それなら私とクロードでちょっと回収してくるわ。あのイシルディンの祭礼剣が復活していれば回収するわ」


 リーリーの作る木工系の武器とは違い、マギさんの作る金属系の装備は、炉で溶かしてインゴットに戻せるので疑似的な鉱石採取とも言える。

 また、クロードは幻想の機織り機と【魔女の技術書】の本が目当てのために二手に上へと登っていく。


「僕らは、植物探すね!」

「昨日、俺が探したけど、まだ見落としとかあるかもしれないからな」


 地下に作られた薬草畑は意外と広いために、俺が探した範囲以外にも見落としがあるかもしれない。

 それを探すためにリーリーと一緒に探し、またリーリーとクロードが欲しい繊維系や染料系の植物や苗木も余分に確保する予定だ。


「それじゃあ、行ってくるね!」


 リーリーが手を振り、魔女の研究部屋らしき一室に続く螺旋階段を登るマギさんとクロードを見送りながら、俺はリーリーと共に薬草畑の方に向かう。

 薬草畑は、隠しエリアの存在が伝わっているために既に生産職やギルドの一部のプレイヤーたちが薬草畑の中に入り、アイテムを回収している。

 そのために所々に虫食いのような穴が見える。


「さて、俺たちもやるか」

「そうだね、ユンっち。それと後でここにいる人たちと話し合って植物の情報交換しようね」


 万が一、植物の見落としがあったら困るために他のプレイヤーと確認し合い、持っていない植物を交換して互いの見落としを補完し合うつもりだ。

 既にそうした情報のやり取りをしているプレイヤーがおり、俺がそちらの交渉に向かい、リーリーが好き勝手に薬草畑の中に入り込んで適当に薬草を探している。


「植物の情報交換を頼めるか? 俺が持ってるのは、こんな感じ――」

「勿論、こっちが確保したのは――って植物だ」

「あー、そうなんだ。やっぱり見落としてたか。食材系の植物は見つけて無かったんだよなぁ」

「こっちは、繊維系の植物がないから交換頼む」

「【錬金】の《下位変換》で種子にした奴があるけどそれでいいか?」

「もちろん――」


 そんな感じで他のプレイヤーと交渉していたら、互いに情報を補完することができ、持ってない植物を集めたり、【錬金】の《下位変換》で変えて貰うことを頼まれたりした。

 中には、朝食を食べずに採取作業を始めて満腹度が減ったので、この場の食材系アイテムを俺に差し出して、食べ物との交換を頼まれたりした。

 そして、それは、昼頃まで続き、何故か俺が昼飯の準備をすることになった。



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