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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第8部【攻城戦イベントと魔女城】

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Sense327


 噴水の底面の一部が抜け、その中に溜められた水と一緒に押し流された俺は、今、ウォータースライダーのようなパイプの中を水と一緒に落ちていく。


「うわぁぁぁぁぁっ!」


 自分の絶叫が響く中、既にパイプを左右に蛇行して動いているために、入って来た入り口は見えない。

 だが、逆に俺の下方には、出口らしい明かりが見え――


「うわっぷ!? こ、ここは……」


 俺が落とされた場所は、何やら水の溜められた場所だ。

 地下か閉鎖された区域のように見えるが、明かりはかなり強めに確保されており、視界は十分だ。

 俺が落ちた場所は水を溜める場所であり溜められた水は、緩い勾配の細い水路に細かく分けられ、その先にある何らかの畑にあるスプリンクラーのような装置に繋がれ、定期的に散水している。


「これは……薬草畑か? 」


 俺は水の溜められた場所から抜け出し、辺りを確かめる。

 隠しエリアとは思えない明るさは、植物育成のための道具であり、ここは第二階層に繋がっていた植物園とは別のエリアなのだろう。


「とりあえず、出口を探さないとな」


 俺は、近くにある四つの階段を見つけ、その中の一つを選んで出口を探して登り始める。

 真っ直ぐに続く螺旋階段はある程度登っていくと、白い霧のような門を見つけ、そこを潜り抜けると――井戸底のような場所に出た。


「ここは、何処だ?」


 枯れ井戸とは違うようで、足元には僅かな水が溜まっている。

 その他にも、俺が潜って来た門の隅には、パイプのような物が伸びており、井戸の壁を張って上まで続いている。


「これ、登れるかな? っていうか、梯子とか手摺りとかないし、なにか――」


 俺は、何かないかと探し、【看破】のセンスで反応する色合いの違う石を押し込むと、井戸の内側から階段のように足場が競り出してくる。


「これで上に登れるか……」


 この先、一人では不安だがあの地下の薬草畑にいても仕方がないので先に進んだ俺が井戸の底から抜け出して見た場所は、植物園の一画だった。


「ここは、植物園のエリアに繋がっていたのか。それで井戸のそこから繋がっていた水道パイプは、スプリンクラーの水を引いていたのか」


 よくよく見れば、枯れ井戸風の外側にも俺が登って来た足場を出す仕掛けがあるために、行き来はできるようだ。


「よし、場所が分かったし、もう少し調べてみるか」


 俺は、一度井戸底に戻り、再び白い霧の門を抜けて地下の薬草畑に入っていく。

 他の螺旋階段の先を調べれば、二つ目は、砦内部に繋がっており、突き当りであるために軽く確認するだけで隠し通路を探した人はいないのかもしれない。

 三つめの階段の先は、ロの字型の使用人の部屋の食堂の調理場に繋がっていた。

 そして、最後の一つは――


「長い。どこまで続いてるんだ?」


 他の階段より長い螺旋階段を上った気がするが、もしかして第二階層より上に出たんじゃないだろうか、と不安になる。

 そして、やっと終わりを示す白い霧の門が見え、俺は恐る恐るその中に入り込むが――


「ここどこだよ。まさか、第二階層より上ってことはないよな」


 それだったら、ダンジョン攻略の大幅なショートカットが出来てしまう。それはないだろう、と思いながら当たりを調べれば、ここは、完全に独立した空間のようだ。

 やや古ぼけた感じの本が一冊残されている。

 その他にも壁に幾つかのアイテムが掛けられていたり、壁には外を確認する覗き穴がある。


「とりあえず、現在位置を確かめないとな」


 俺がそっと覗いてみれば、そこには赤い絨毯の敷かれた長い廊下が伸びており、その廊下を一組のプレイヤーたちが歩いていた。


『このまま進めば、次は第五階層か。中ボス級の敵との連戦だろ? 大丈夫か?』

『平気よ。出現すると言ってもリポップまでの猶予があるし、先行したプレイヤーたちが倒しているからいないかもしれないわよ』

『でも、異次元の魔女を倒すと入り口に強制的に戻されるし、経験値の効率的な稼ぎだけなら第五階層の中ボスでレベリングの方がいいんじゃないか?』

『そうだな。中ボスでレベリングして、帰る時は異次元の魔女と戦えばいいか』


 そんな会話をしているプレイヤーたちの会話を壁裏から聞いていた俺は、ここが第四階層にあることに気が付く。

 だが、どこにもここから出ていく方法が見当たらないために再び部屋の中の探索に戻る。


「壁に掛かったアイテムか。これ回収して良いのか?」


 俺は、その内の一つに手を伸ばす。

 簡単に手に取れるアイテムの中で取れるのは、三つであり、他はオブジェクトだった。

 その入手したアイテムは――


イシルディンの祭礼剣【武器】

 ATK+60


 樹霊杖・ドリード【武器】

 ATK+20、INT+85


 幻想の機織り機【道具】

 魔力を織り交ぜ、幻想的な生地を織るためだけに存在する機織り機。


 俺が見つけた物は、ステータスこそ対してそれなりに良品だが、追加効果のないプレイヤーが作るデフォルト武器のような性能だ。

 砦のダンジョンでは、イシルディン金属が手に入り、刀身が仄暗い祭礼剣は、そのサンプルとしてここに置かれているのかもしれない。

 もう一つの杖は、リーリーが確保した【ドリアード・ウッドの苗木】が成長した木材を使用しており、こちらもサンプルなのだろう。

 最後に、この【幻想の機織り機】は、クロードに必要なのかもしれない。

 思えば、ミシンやオリハルコンの縫い針など手に入れたが、肝心の布を作る機織り機もなかった。

 まぁ、なくても使えるだろうが、魔法を織り交ぜると言う分が気になる。

 俺の【魔力付与】のEXスキルのような物だろうか。


「さて、回収したし、最後は――」


 俺は、最後に残された本を手に取り、表紙を確認する。


「タイトルは【魔女の技術書】か」


 その場で前半部分を軽く確認してみると、上位のポーションであるメガポーションやMPポットなどの俺が既に作れるポーションのレシピが含まれていたり、EXスキルの【魔力付与】を利用する魔法薬系のレシピが乗っている。

 他にもジョーク系のアイテムやポーションだけでなく、塗り薬や丸薬タイプのアイテム。

 また、複数の状態異常に対応する【万能薬】や今の【蘇生薬】をベースに更に改良した【蘇生薬・改】、色付きポーションであるブルーポーションの上位であるイエローポーションとレッドポーションなどのレシピも存在した。


「凄いな。これができれば、一気に所持レシピが増えるぞ! でも……」


 書かれている素材の中で万能薬や効果の高い魔法薬で使われる素材は、俺ですら持っていない未知の素材だ。


「まぁ、ここにレシピがあるってことはあるんだろうなぁ」


 魔女の研究部屋らしき場所を後にして再び長い螺旋階段を降りて、本を片手に薬草畑まで戻って来る。

 そして、密集した薬草畑を調べていけば――


「やっぱり、あったな。けど、区画整理されてないから見つけにくいなぁ」


 万能薬の基本素材となる薬草を一つだけ見つけ、それを手に取る。

 それを【錬金】センスの下位変換スキルを使い、種を確保した。


「とりあえず、これで【アトリエール】で栽培できるな。他にも珍しい薬草とか植物を持ち帰れればいいな」


 俺は、そう思って薬草採取を始める。

 その場にしゃがみ込んでぷちぷちと千切る薬草は、薬草系である薬草、霊薬草、薬秘草。MP回復系の魔霊草に魂魄草、解毒系の薬草に、状態異常系の毒草、他にもハーブっぽい薬草が多数あり、それらは、本の中では魔女の秘薬と呼ばれるジョーク系アイテムのレシピにある素材だ。

 そのまま使っても多少の効果もあり、料理にも使えるのでこれも回収する。


「青薔薇の苗木、四季果の魔木、エルダーフラワー、宝石産みの苗木、鉱石産みの苗木、ブラックツリー、霞綿花、紅仙花……知ってる植物が一つもない」


 青薔薇は、染料や食べ物として使える青いバラを咲かせ、青薔薇の紅茶を作れる。

 四季果の魔木は、気候によって、四季折々の果物を実らせる不思議な樹木だ。

 エルダーフラワーは、万能薬草であり、花を摘み取り煎じて飲めば、それだけで立派な回復薬となる。

 本のフレーバーテキストには、魔女の美容と健康を保つ万能薬草と書かれている。

 宝石産みの苗木は、育てば、様々な宝石が木に生る不思議植物。

 鉱石産みの苗木は、育てば、様々な鉱石が木に生る不思議植物。

 ブラックツリーは、毒性の強い樹液を滲み出し染料として使える植物。

 霞綿花は、触れると溶けて消えてしまいそうなほど細かくてふわふわと柔らかく、キラキラと輝いて見える綿花だ。

 ただ、弾けた綿花の周りには、鋭い棘があるために採取には、厚手の革グローブで集めなければ、手を傷つけるだろう。

 紅仙花は、とげとげとした黄色い花を咲かせ、こちらも花の搾り汁を調合すれば染料として使える。

 また、油を搾ることも、加熱して食用とすることもできる他にも、染料を更に精製することで魔女の口紅を作ることもできる。


 一つ一つの植物を本と比較してその効果を確かめる。


「なんともご都合主義的な苗木だな。けど、すごい便利な植物って訳じゃないよな」


 便利そうな宝石産みや鉱石産みの苗木なんかは、それだけで便利そうだが、成長度合いが低ければ、一日の収穫量は小粒だったり低級の金属だったりする。

 また、成長しても上位の金属が生成されるには時間が掛るために、説明を見る限り、やっぱり使い勝手がいいとは言えない。


「まぁ、レアな鉱石は、【メイキングボックス】で増やせばいいか」


 夏のキャンプイベントで手に入れたメイキングボックスは、一日に一度設定した素材アイテムを確率で複製することができるために、俺は多少の不便はは解消できる。

 また、ここで手に入れた他の薬草も必要とあれば、メイキングボックスで複製することができるので気にせず、手当たり次第に集めていくが――


「この薬草畑、密集しすぎだろ。全部採ることなんて無理だぞ」


 自分の手の届く範囲の薬草を次々と回収していきながら前進する中で、途中で疲れて立ち上がり体を伸ばす。

 ふと後ろを振り返ると、刈り取ったばかりの薬草畑の地面から既に薬草の芽が伸び始めており、下手にこれ以上進むと帰る時に薬草を掻き分けなきゃいけなくなる。

 たまに薬草の中に隠れてブラックツリーなどの直に触れると状態異常を受ける危険な植物などがある可能性もあるので、そろそろ頃合いだろうと思い薬草畑から抜け出す。

 

「さて、帰るか」


 俺は螺旋階段を上り、植物園のエリアにある枯れ井戸の底に出て、井戸の内側の仕掛けを作動させて足場を出して外に出た。

 既に植物園の疑似的な空は夕焼け色に変わっており、俺はマギさんたちと合流するために歩き出すのだった。


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