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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第8部【攻城戦イベントと魔女城】

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Sense321

久しぶりに書けた。遅れてすみません。

一つのことを集中したらそれが終わるまで他に手をつけられないタイプでやっとWEB向けの脳内に切り替えることができました。

 俺とマギさんは、殺伐としたイベントの準備日としての一日を喫茶店で癒しを得た後、喋りながら町中を見て回った。

 どこもかしこも昨日の悪魔召喚の影響で若干壊れていたりするが、それもプレイヤー全体の士気は高いようだ。


「やっぱり、一度倒されても即リタイアじゃないのが良いんですかね?」

「そうだね。けど、強いプレイヤーほど、倒された時の待機時間が長くなるから初日に無理した人は、明日の城壁攻略作戦には参加できないんじゃないかな?」


 まぁ、明日は無理でも明後日の城内攻略には復帰するんじゃない、と苦笑いを浮かべるマギさん。

 それでも、攻城兵器を投入した城壁攻略を明日にした理由は、攻城兵器の組み立てや調整等があるが、それと同時にイベント期間中に倒されてデスペナルティーを受けたプレイヤーの復帰を待っていた側面もある。

 俺たちは、明日の城壁攻略の際の動きなどを話しながら、のんびりと過ごし、クロードの【コムネスティー喫茶洋服店】に戻って来る。


「ユンさん、おかえりなさい。それとマギさん、いらっしゃい」

「いらっしゃい!」

「カリアンにラテム。お邪魔するわよ」


 そう言って、マギさんがひらひらと手を振りながら、喫茶店の中に入っていく。

 既にカリアンさんとラテムさんたちは、夕飯の支度を始めており、クロードは奥に籠りっぱなしのようだ。


「私も今日はここにお世話になっちゃおうかな?」

「なら、フィオルに一人前多く作るように言ってきます」


 ラテムさんが奥の厨房に駆け込むのを見ながら、その後ものんびりとマギさんたちと夕飯を食べて情報交換をしてその日は過ごした。

 何かやらなければ、という焦りはないわけではないが、今は休むのが仕事と言い聞かせ、次元の魔女の城の攻略に向けて英気を養う。


 そして、翌朝――


 日の出と共に、平原に集まり始めるプレイヤーたち。

 その後方に控える攻城兵器群の隣に俺は立っていた。


「ユンっち! 行けるね!」

「行ける、って言うか、俺は、ただ発射する役割を務めるだけだけどな」


 昨日、試運転させた投石機ではなく、バリスタと呼ばれる据え置き型の大型クロスボウとも言える。

 試運転の時、投擲された石の威力や飛距離がプレイヤーの装備している武器や防具、アクセサリーなどの追加効果を影響されるという検証結果を受けて、他にも対応する【センス】の有無なども調べた結果、そちらでも威力強化されるとのことだ。

 そのために、急ピッチに俺専用の攻城兵器としてこのバリスタがリーリーの手によって用意された。


「装填の準備は任せて! 僕らは昨日練習したから!」

「俺が期待されてるのは、センスと装備だよな」


 俺の持つ【弓】系センスを装備することによる補正、そして今背中に担いでいる【黒乙女の長弓】にある【遠投】の追加効果が期待されている。

 既に、発射角度が調節されているバリスタの前に立ち、俺たちは、その時を待つ。


『――攻城兵器、攻撃開始!』


「いくぞ! 第一射、発射!」


 俺の掛け声と共に放たれるバリスタの極太の矢弾は、初速の速さによる巻き起こる風が俺の長い髪を叩く。

 他にも投石機から発射される大小様々な砲弾が城壁に突き刺さっていく一方、敵の城壁上部から人型MOBが反撃として魔法や弓矢を下に向けて放ってきている。

 そして、俺たちが放ったバリスタの一撃は――


「狙い外したか……センスの補正を考えて右上に角度調節!」


 一射目の初速は、今までに感じたことのない衝撃を弓使いの俺に感じさせるが、それでも矢自体が極太であるために、空気抵抗により狙いの振れ幅が広く、射程も俺の使う長弓と大した差はない。

 だが、それを補う攻城兵器の破壊力はすさまじかった。


「まさか、城壁の石ってあんな風に砕けるもんなんだな」


 城壁に矢弾が弾かれはしたが、城壁表面の石に小さくない亀裂が走っているのが見えた。

 もっと多くの矢弾を放ち、城壁に多くの突破口を作るのだ。


「ユンっち、次弾装填完了したよ!」

「わかった!」


 俺は、一度深呼吸して落ち着くと、ふとあることを閃く。

 それは、バリスタも分類上、弓なのだから【アーツ】が使えないだろうか、という物だ。

 そして、第二射を放ちながら、俺は、アーツを唱える。


「――《弓技・一矢縫い》!」


 その瞬間、周囲の空気を押しのけるように放たれた矢撃が城壁の石に深く突き刺さる。

 その光景に目を見開く俺だが、リーリーは構わずに矢弾の装填を始める。


「アーツも併用できるんだね! ユンっち、どんどんやって! 今度は城壁の上の敵

!」

「分かった!」


 更にバリスタの角度を上方修正して、三射目を放つ。

 今度は、城壁の上の敵を薙ぎ払うように、範囲を持ったアーツを選択する。


「――《弓技・疾風一陣》!」


 本来ならダメージ判定のある緑色のベールのような物を広げながら放たれるアーツのはずだが、バチッと拒否するように俺の手に痺れが走り、そのまま矢撃が放たれる。

 センスや追加効果、アーツの恩恵の得られない通常のバリスタの攻撃となって予想よりも低い位置の城壁に当たって弾かれる。


「MPが足りなかったか」


 大型の攻城兵器ほどアーツの消費MPは大きい。先程は、よく確認していなかったが、比較的初期に覚える《弓技・一矢縫い》だけでも相当のMPを消費している。

 また失敗した反動でダメージを受けているために、強引な攻撃はできないと判断した。


 その間もこちら側の攻城兵器の攻撃は続けられており、相手のMOBからの反撃の魔法も放たれているが、こっちの方の射程が長いために、アウトレンジから一方的に攻撃していることになる。


 俺は、リーリーたちと協力し、センスと追加効果、アーツの補正の乗った弓弾を次々と放っていく。

 城壁上部に到達すれば、反撃してくるMOBを一撃で城壁向こうに突き落とし、城壁に当たれば、深々と弓弾の極太の矢が突き刺さる。

 だが、これらは弾を消耗する種類の攻撃であり、他の攻城兵器も戦果を上げる中、その弾を使い尽くす。


 そして、プレイヤー側の攻城兵器の攻撃が止み、城壁上部に並ぶMOBたちが歯抜けのような状態になりながらも、反撃を続ける中で、新たな号令が下される。


『――魔法、攻撃開始!』


 攻城兵器の長い射程と打撃力で城壁やMOBにダメージを与えた後、温存していた魔法使いたちが次々に攻撃を始める。

 投石や弓弾で罅割れた城壁の一部を狙った攻撃は、ダメージを蓄積させ、より穴を広げようと奮闘する。


「俺たちの仕事は、これで終わりかな?」

「そうだね。後は、他のプレイヤーに任せる感じかな?」


 攻城兵器による打撃、魔法による追撃、最後に白兵戦と言った感じの手順で組まれた作戦は、今のところ順調に行われている。

 また、上空では、飛行可能な使役MOBを持つプレイヤーたちが城壁上部に向けて爆弾や火炎瓶、魔法などを投下するなどして、城壁を攻められた時にやられたら嫌なことをやり返す形になっている。

 まぁ、飛行可能なMOBを所持するプレイヤーの絶対数が少ないために、攪乱程度の戦果くらいしか挙げられていないのは、少し寂しいところだ。


 着実に城壁へのダメージを蓄積させていき、少し離れた場所の城壁に穴が開き、崩れ始める。

 それを皮切りに城壁の何か所かの場所で同じように高低差の違う穴が開く中で、戦闘がより加速していく。


『――強襲部隊、進撃開始!』


 その号令と共に、梯子を担いだプレイヤーたちが魔法飛び交う戦場を一気に駆け抜け、穴の開いた城壁に梯子を掛ける。

 それを妨害するように城壁上部から下へと一方的に攻撃を仕掛ける敵MOBの軍団。

 魔法の炎が引火しないように控えていた油壺や投石など新たな攻撃手段を投入し始めた魔女の城の防衛部隊に今度はプレイヤーが苦戦を強いられ始める。

 また、開けた穴から跳び出してくる敵MOBもおり一気に城壁は混戦状態になる。


「うわぁ、まだあんなにMOBが残ってるのか。こっちが優勢だと思ったんだけどなぁ」

「城攻めには、戦力三倍が必要って言うのは間違いじゃないかもね!」


 攻城兵器の周辺に集まる俺たちは、既に白兵戦が始まってしまえば、味方の被害を出さないために戦闘に参加せず見守ることになる。

 勿論、可能な範囲でエンチャントを行なっているが、それでも戦闘の状況は一進一退の攻防を繰り広げている。

 飛び道具が飛び交い、互いに武器で斬り合いをする戦場は、リアルな中世の戦争を再現しているようだった。

 だが、これは、ファンタジー系のゲームであり、当然ただの攻城戦では終わりはしない。







今月22日にベルサール秋葉原にてファンタジア文庫大感謝祭が行われます。

色々な企画やイベントがあるので是非、ニコ生やイベント会場に遊びに来て頂けたらと思います。

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