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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第6部【試練と拡張才能】

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264/359

Sense264

 翌日、朝の早い時間帯にタクと待ち合わせをした俺たち兄妹は、昨日と同じ待ち合わせ場所で待っていた。

 普段は、やや遠巻きに俺たちを見てくるだけの人が多い中で、今日は一人のプレイヤーが近づいてきた。


「よっす! 元気かぁ?」


 日焼けした肌と南国風のシャツを着流し、痛んだようなくすんだ銀の短髪にゴーグルを掛ける男だった。ペタペタとビーチサンダルのような履物で近づいてくると陽気に手を上げて挨拶をして来る。

 最初は、そのまますれ違うのかと思ったが、相手はそのまま近づいてきた。


「今度、タクちゃんがお世話になるなぁ。そっちも今日は頑張りな」

「は、はぁ……」


 少し困ったように眉を下げるセイ姉ぇと誰? と首を傾げるミュウ。この人物と面識があるのは、タクと俺だけのようだ。


「いきなりで驚いてるだろ、シチフク。それとタクは今居ないぞ」

「キッツいなぁ、ユンちゃんは。タダの挨拶や、挨拶。昨日、タクちゃんがうちの所に来た縁っちゅーことで」


 昨日、タクが訪れた所と聞いて二人は、タクから話の詳細を理解した。


「って事は――この人」

「たまにしか会わないけど、【アトリエール】のお客さんの一人でギルド【OSO漁業組合】のギルマス・シチフクだ」

「どうも、よろしゅーな」


 日焼けした細マッチョな男だが、どこか剽軽な態度と印象が三枚目のように見える人物だが、中小規模のギルドとしては実力者のはずだ。また、ギルドのメンバーともノリが良く、信頼もされている。


「いや、ホンマ。タクちゃんには助かったぁ、まさかあの申し出を受けてくれるとはねぇ」

「申し出?」

「あれ、聞いとらん? 今度、船上戦闘の訓練するからその手伝いに来てもらうんよ」


 初耳な情報に少し目を見開くが、すぐに情報の価値について思い出す。

 湖底のボスの情報に対して、それはいささか軽すぎるんじゃないのか?


「なぁ、ボスの情報の交換条件ってその訓練参加なのか? 軽くないか?」

「ユンちゃん、甘いよ。対応するセンスがあれば分かる情報だよ。あんまりこっちは痛くはないんよ。むしろ、うちらの方が大助かりなんよ」


 そう言って、淡々と船上戦闘の訓練の重要性を教えてくれる。

 水中に適応していないプレイヤーと【泳ぎ】センスを所持したプレイヤーでは、心理的な働きも違う。船から落ちたらアウトと落ちても復帰できるとでは大きな違いがある。そこで、明確な実戦形式でどこにプレイヤーを配置すべきか、を色々と研究。また、落ちたプレイヤーのリカバー方法などの練習を兼ねている。


「まぁ、タクちゃんとの訓練楽しみにしている、って伝えてくれると嬉しいな。それと興味があるならタクちゃんに聞いて、見学に来ればいいよ。そんじゃ、お兄さん行くからね」


 気のいいお兄さんと言った感じのシチフクがひらひらと手を振りながら、去っていく。ペタペタと石畳の上をサンダルで歩いていくのを見送り、これまた濃い人物だ。とミュウが漏らす。


「ユン! ミュウちゃん、セイさん!」


 去っていくシチフクの代わりに、タクがこちらに向かって走って来る。何やら焦ったような感じだった。


「どうしたんだ、タク。待ち合わせにはまだ時間はあるのに……」

「……シチフクが見えたからな」

「何か心配事か? シチフクは軽い兄ちゃんって感じだけど、ナンパとかするタイプじゃないだろ」

「そうじゃなくて……。何か聞いたか?」

「うん? こんど船上訓練があるから見学に来ないか? って。それでシチフクが訓練を楽しみにしている。って」

「……絶対来るな。時間が分かっても絶対に来るな」


 なんか、眉間を皺を寄せて、きつく言ってくるタク。シチフクの話だと面白そうな事を

するらしい。と聞いていたのに、目の前のタクは珍しく苦々しげな表情を作る。


「ねぇ、タクさん、何でな—―「さぁ、この話は終わりだ。今日はボスを倒して、クエストの第二段階に進もう!」――」


 ミュウの言葉を遮るようにして話を終えるタク。それとほどまでに知られたくない何かがあるのかもしれない。ここはそっとしておくに限る。と俺とセイ姉ぇは同じ意見だったので深く追求しない。


 ポータルへの転移までは微妙な雰囲気のままだったが、流石にポータルで転移した直後から全員がボスへと挑むために気を引き締める。


「ユン。ボスを引き付けるの、頼むな」

「ああ、行ってくる」


 俺は、インベントリから宝石を嵌め直した身代わり宝玉の指輪を装備し、センスを確認し直す。


所持SP6


【弓Lv50】【長弓Lv37】【魔弓Lv10】【魔道Lv22】【看破Lv34】【空の目Lv21】【付加術Lv45】【俊足Lv33】【大地属性才能Lv4】【泳ぎLv17】

 控え

【調薬師Lv12】【調教Lv32】【言語学Lv24】【料理人Lv13】【登山Lv21】【合成Lv48】【彫金Lv28】【錬金Lv47】【生産者の心得Lv13】【呪い耐性Lv30】【魅了耐性Lv16】【混乱耐性Lv13】【怒り耐性Lv12】【身体耐性Lv1】


 水中でボスと戦う訳ではないので、武器となる包丁は使わない。その代り、地上で安定してダメージを与える為に弓系センス三種類を装備した状態で俺は、水の中へと潜っていく。

 澄んだ水の中には、不気味なほど生物の気配が無く小魚一匹見ることが出来ない。

 意外にも深い湖を底へと沈んでいき、光の弱まる場所へと到達する。何らかの光源がないと見通すことが出来ない場所で【空の目】の暗視能力がボスの影を捉える。


(で、でかい!?)


 暗く、輪郭しか分からないが、大きな山のような存在が湖底で静かに佇んでいる。

 更に観察するべく、近づくと口らしき場所から小さな気泡を吐き出している。


(大き過ぎて、形が良く分からないな)


 暗視能力が暗がりを見通すと言っても色彩まで完全には分からない。更に、湖底の色と似ているのか、判別がし辛く、一部同化して見える。

 そんなボスをもっと近くで観察しようと潜水を続けると、気砲の噴き出す場所より高い位置の色が変わる。色の乏しい場所が赤い色になったのだ。


(すぐに離脱を――っ!?)


 俺が接近したことで、ボスが反応し、水面へと浮上を始める。

真下に向けていた頭を上に向け、水中を蹴り、少しでも早く水面へと向かう。問題なく脱出し、ボスの迎撃に備えなくては――そう考えていた俺は、ボスの姿を確認するために下を向くと、細い枝のような物がギヂギヂと動いており、気泡が一瞬止まる。


(くはっ――!?)


 ――ズン、と俺の体を突き抜ける圧力があり、その一撃で身代わり宝玉の指輪に罅が入る。今の衝撃は、攻撃だ。だが、その攻撃が見えなかった。

 その後も、一方的に攻撃が放たれ、近くの水底の岩が砕ける。


(早く上がらないと……)


 急いで水を連続で蹴り続け、一心に水面を目指す。俺の後を追うように浮上するボスは、遂に水面へとその姿を現す。


「ふはぁっ!? ぷわっ、流され――」


 その巨体が水を押し上げ、姿を現す。その背中に乗せた大量の水が湖へと落ちて、大きな波を作り出し、俺を陸地へと一気に押し流す。


「ユンちゃん、大丈夫?」

「こほっ、こほっ……大丈夫。じゃない」


 地面に体を打ち付けたために地形ダメージが入り、身代わり宝玉の指輪がまたしても全てのダメージ無効を使い切ってしまった。

 額にべったりと張り付く髪を掻き上げ、ぐっしょりと濡れた服を引き摺るように立ち上がる。まだ水の残る湖の周辺でセイ姉ぇは氷の足場を作り逃げ、タクとミュウは木の上から水が引けるのを待っている。


「お前ら……自分だけ逃げ出して」

「あははははっ……まぁ、いいじゃん。それよりお姉ちゃん、後ろ!」


 ミュウの言葉に振り返り、ボスの姿をはっきりと見る。

 艶のある白い甲殻が重なる背中、赤く光らせる透明度の高い瞳は、虫の複眼のような無機質さを持ち、巨体を支える太くて硬い手足と食べ物を捉える枯れ枝のような舌を幾本も持つ口。

 その姿は、巨大なダンゴムシだ。


「これは――風の谷の! 話に聞いたのよりも迫力あるな」

「まぁ、それに似てるけど、私はどっちかって言うと、水族館にいるダイオウグソクムシに近いと思うなぁ」

「これ可愛いなぁ。ねぇお姉ちゃん、調教出来る?」

「出来る訳ないだろ! てか、怖いわ!」


 ギリギリと口を擦り合わせ、金属質な音を響かせる巨大なダンゴムシのようなボス――【皇帝愚足蟲こうていぐそくちゅう】だ。

 すぐに攻撃する様子は無く、水面をその太い脚で泳ぎ、湖の淵に巨大な顔を乗せて対峙する。

 背後が水面だから、死角からの不意打ち・奇襲が使えない。また正面は、太く硬い蟹の足のような手を向けて、振り回して来る。


「それじゃあ、ミュウちゃん。先制攻撃と行こうか!」

「うん! お姉ちゃん!」

「まずは小手試しに――【アクア・バレット】」

「――【ソル・レイ】!」


 セイ姉ぇが十を超える水弾を生み出し、ボスへと放ち、その後よりミュウの光魔法が硬い甲殻に突き刺さる。

 弾ける水と乱反射する光がボスの姿を一瞬隠す。俺の【空の目】の見え過ぎる弊害か、眩しさに目を細めて、待つ。

 魔法のエフェクトが消え去り、その向こうのボスの姿を確認して、言葉を零す。


「――嘘だろ。魔法が利いてない?」


 HPを減らした様子は無く、圧倒的な存在感でその場に存在し続ける皇帝愚足蟲。勝てないと思い、一歩下がる俺をタクが後ろから支える。


「良く見ろ! 効かなかったのはセイさんの魔法だけだ! ミュウちゃんの魔法は利いてた!」

「どういう事だ?」


 俺は、背後を振り返り、セイ姉ぇとミュウを見るが、決して心は折れてはいない。逆に、真剣に事態に対処している。


「ミュウちゃん。もう一度!」

「――【ソル・レイ】!」

「それじゃあ、私も――【アイス・ランス】【アクア・バレット】」


 今度は、氷の槍と水弾を一つずつ生み出す。先ほどよりも総ダメージ量の少ない攻撃を何故選んだのか。

 ミュウの光魔法が再び甲殻に刺さり、HPを僅かに減らす。続く氷の槍は、表面に膜のような物が見え、続く水弾は波紋を広げて散らす。水弾一発分のダメージがそのまま、ボスのHPに変換される。


「――【氷属性無効】と【水属性吸収】」


 そう、セイ姉ぇが呟いた瞬間、今まで黙っていた皇帝愚足蟲が口をギジギジと鳴らし始め、その速さを増す。そして、その音が最大限まで発した時、手足の先から圧縮された水の刃が俺たちを襲う。


「――【ウォーター・ラウンド】」


 セイ姉ぇが水の丸盾を生み出し、ボスの魔法の射線上にそれを移動させる。威力の差から、水の丸盾五枚を切り裂く高圧水流を受け止める。


「タク君! 私は、今回サポートに回るから攻撃よろしくー! ミュウちゃんとユンちゃんも頑張ってね!」

「はっ!? どういうこと?」

「セイお姉ちゃんと相性最悪のボスってことだよ」


 ボスの情報が一部欠落していたのだろう。聞いた情報源がシチフクの所だけで、ボスの保持する耐性。いや、属性の無効化と吸収までは知らなかったのだろう。

 そして、それが今回セイ姉ぇとの相性が最悪だっただけだ。


「さぁ、心の準備は出来たか。改めて――作戦開始だ!」


 タクが飛び出し、それに続く形でミュウもボスへと向かう。

 そして、俺も戦闘へと移っていく。


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