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第一夜 先生のおもらし

 6月中旬、梅雨に入って半月。休み時間も放課後も校庭に出て遊ぶこともない。ジメジメして机の中のコッペパンもカビだらけになっている。


 6年2組の僕らの教室に、教育実習のお姉さんがきた。大人しそうで少しおどおどした感じが、まだ先生ではない近所のお姉さんといった感じが強い。


「小清水里見です。今日から二週間、みんなと一緒に勉強をすることになりました。よろしくお願いします」



 今日も朝からずっと雨が降っていた。薄暗く昼間でも教室の室内灯をつけていた。蛍光灯の白い光が無機質でなんだか気持ちが晴れない。


 十一時五〇分、もうすぐ午前の授業が終わり、給食のお時間。そんな時だった……。

 クラスの後ろの席の方からどよめきが聞こえてきた。


「うわっ、きったねー、こいつ漏らしやがった!」

 シュワシュワシュワー。今まさに、放出中の音まで聞こえてきた。


「うわぁぁぁぁん」


 クラスの内気な女の子、サクラが漏らした。トイレに行きたいと先生に言い出せずについに漏らしたのだろう。両手で股間をスカートの上から強く押さえているがとまらない。まだ放出中だ。シュワシュワシュワ。太ももとふくらはぎを伝い、靴下も上履きも濡らした。そして椅子の下の床に水溜まりが出来ていた。


「くっせー、離れろよ」

 となりの男子が、そんな事をいう中、僕はたまらずサクラに駆け寄って言った。


「そんなこというなよ、漏らしちゃったもんはしょうがないだろ。お前バケツ、雑巾持ってこいよ」


 サクラは、僕の家の近所に住んでいて幼なじみだ。同級生なのだが、なんだか妹みたいな感じなんだよな。ちっちゃいし。だからクラスでからかうように言われると無性に腹が立ってしまう。


 先生も近づいてきて、サクラを慰めつつ、体育着を持って保健室に行った。


 どよめく教室。人の失敗を笑うこの空気は、いたたまれない。午前の授業の就業のチャイムがなった。

 すぐさま僕も保健室に向かった。


 保健室では体育着に着替えたさくらと先生が笑いながら話をしていた。あれ? なんだ結構大丈夫そうじゃん。


「あ、しのみやくん。さっきはありがとう」

「いいってことよ」

「しのみやくんかっこいいねえ! 先生感動しちゃった!」

「よ、よせやい」

「もう大丈夫だから、教室に戻って給食食べましょう」

「はーい」

「はーい」

 何事もなかったように教室に戻った。



 ――放課後


 放課後クラブ活動を終えて、帰宅しようとした時、僕は教室に体育着を置き忘れていたことに気が付き、急いで教室に戻った。


 すると、教壇横の先生の机のところで、小清水先生がお腹に手を当てながら、机に顔を突っ伏していた。


「……!」


 床がビショビショに濡れていた。よく見ると先生のスカートと白いストッキングが湿っているのが分かった。


「先生……、どうしたの? お腹痛いの?」

「あ、しのみやくん……。大丈夫、なんでもないの」


「そうなんだ、じゃあ僕は体育着を取りに来ただけなので、もう帰りまーす」

「あのね、しのみやくん。大人になると、意味もなく突然おもらしをしたくなることがあるのよ」

 普段、まじめで大人しい小清水先生が、僕にそんな事を打ち明けてきた。


「えっ、先生、突然どうしたんですか?」

「もうね、何もかも面倒くさくなっちゃって……小学校の先生がこんなに大変だとは思ってなかった……もうやだぁぁぁぁ、先生辞めるぅぅぅぅ」


「あの……もう、帰ってもいいですか?」

「あっ、ごめんなさい。なんでもないの。また明日ね、さようなら」


「先生さようなら!」

 先生のお腹、ほんとうに大丈夫なのかな。こんなこと、友達にも絶対に言えない。

 でも、なんだか放っておけなくて。教室を出た後、廊下の流しまで、バケツと雑巾を持って水を汲みに行った。


 教室に戻ると先生はまだボーッとしていた。


「先生! 雑巾絞ってきたからこれで拭いてあげる」

 僕が濡れ雑巾を先生のスカートの股間に押し付けようとしたら、


「やさしいのね。大丈夫。自分で出来るから……」と言いながら軽く手で払い除けてきた。

「じゃあ、僕は、床を拭くね」


 おしっこなのだろう、でも透明で、さらさらで匂いもない。なんだか花瓶の水をこぼしたかのような清涼感。しかし先生のスカートと白いストッキングは濡れていた。やっぱりおしっこなのだろう。


 先生、なんだか落ち込んでいたような感じがしたし、泣いていたのかな。おもらしも、涙みたいなものなのかな。


「今日、午前中、サクラちゃんがおもらししちゃったでしょ? あのあとサクラちゃんに、おもらしは恥ずかしいけど、気持ちよかったでしょう? と言って慰めていたんだけど……」


 えっ、何を言っているんだろう、この先生は。


「私、思い出したんだ。辛いこと悲しいこと、何もかも嫌になった時、服を着たまま、おしっこをするとね、とても気持ちのいい事をね、思い出しちゃったんだ。それで、みんなが帰ったあとの教室で、久しぶりにシちゃった」


 僕は、ただ黙って先生を見ていた……。


「ごめんね、こんなどうしようもない先生で……。こんなんじゃ先生になれないかな……」

「まって、先生……分かるよ、多分ぼくも同じ気持ち」


 ジョロジョロジョロ……


 短パンを履いたまま豪快に漏らした。短パンの隙間から太ももの内側をつたい、膝から裏にまわりふくらはぎをまんべんなく生ぬるい液体が流れていった。上履きまでビショビショ。


 でも、なんだか……。


「先生……わかった。これ気持ちいいね。なんだかスッキリして気持ちいい」

「ふふふ、私は悪い先生ね。児童に何度もみっともないところを見せるばかりか、同じことさせちゃうんだから」


「ううん、先生は悪くないよ。僕が勝手に真似しただけだから!」


 今度は先生が廊下の水飲み場にいき、バケツと雑巾を持ってきた。そして優しく僕の股間から足先まで丁寧に拭いてくれた。


 僕と先生だけの秘密。あ、もしかしてサクラはもう知っているか。


 雨が止んでいた。雲が晴れ、少しずつ明るくなってきた。今年ももうすぐ夏が来る。今度、小清水先生を海水浴に誘おう。


 先生の水着と僕の海パンでおもらしだ!


          (了)

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