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恋愛ホラー小説「約束はディナーの後で」

作者: 虫松
掲載日:2026/03/30

約束は守ろうね。


「前に約束したよね。

私を、お嫁さんにするって」


目の前には

十年という時間を重力ごと喰った存在。


牛魔王の牛鬼蘭子。


挿絵(By みてみん)


床がきしむ。いや、悲鳴を上げている。


床が「もう無理」と言っている。

俺は言った。


「それ、小さい頃の約束だろ」


一瞬、静寂。


次の瞬間


ズンッ!!!!


床が一枚沈んだ。


「口約束でも契約は成立するのよ」


蘭子は微笑んだ。


その笑顔で、近所の犬が遠吠えした。


「でもさ、俺、忘れてたし」

「そう言うと思って」


スッ——


スマホ。

LINEのスクショ。


『らんこけっこんしようね!ぜったいだよ!』


ひらがなだ。

知能が低い時代の俺だ。


「なりすましかもしれないし」


「そう言うと思って」


再生。


『らんこちゃんとけっこんするー』


俺の声だ。


鼻水すすってる音まで入ってる。


「いや、それ声変わり前だし」


「そう言うと思って」


動画。


泥団子を持ちながら誓っている俺。

しかも背景に母親。


「タカシ〜、ちゃんと責任取りなさいよ〜」


母親、共犯だった。


「いやいや、家族に確認とか」


「そう言うと思って」


蘭子は指を鳴らした。


ゴゴゴゴゴ……

床が開いた。

地下。

そこに——

正座している俺の家族。


「ごめんタカシ…もう無理だ…」


父は折れていた。


「え、なんで幽閉してんの!?」

「同意を得るためよ」

「強制じゃん!!」


その時だった。


ピンポーン。

インターホン。


「はい?」


モニターには


市役所の人。

「婚姻届の事前審査に来ました」


早い。

展開が早い。


「ちょっと待ってください!」


「待てません」


蘭子が言う。


「今日は記念日なの」

「何の!?」

「契約履行記念日」


テーブルが用意されていた。

ディナー。

ロウソク。

ステーキ。


……三人前。


「誰か来るの?」


「ええ」


ドアが開く。

入ってきたのは


弁護士。

神父。

そして

小学校の担任。


「結婚証人よ」

「多すぎる!!」


神父が言った。


「異議のある者は?」


俺は手を挙げた。


「はい!!あります!!」


その瞬間

地下から父の声。


「ないでーす」


裏切りが軽い。

弁護士が言う。


「証拠は十分です」


担任が言う。


「彼は昔から責任感がありました」


記憶が捏造されている。


蘭子が微笑む。


「さあ、ディナーにしましょう」


ナイフが渡される。

手が震える。

肉を切る音がやけに大きい。


ジュゥ……


まるで運命を焼く音だ。


「ねえ」


蘭子が言う。


「約束は——」


一口食べる。


「ディナーの後でしょ?」


その瞬間。

地下から歓声。

市役所の人が拍手。

神父がうなずく。

弁護士が書類を差し出す。

担任が涙ぐむ。

俺は思った。

逃げ場はない。

論理もない。

救いもない。


でも、ステーキはうまい。


俺はステーキの肉をナイフで斬りながら、

この危機的状況からの逆転の一手を

必死に考えていた。


END


おまけ


カクヨムのホラー週間ランキング7位達成で喜ぶ、牛鬼蘭子ちゃん18歳


挿絵(By みてみん)

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