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6話

 坑道のような薄暗いトンネルを進んでいくと、オレンジ色の街灯がぽつぽつと見えてくる。

 都の明るさの対比で考えるととんでもなく暗く、いるだけで気分が悪くなる空間である。


(牢だ…俺が入るところか…?)


 無数の牢がトンネルの側面に沿って拡がっている。

 牢には囚人たちが入っている。皆一様に元気がなく座り込んでいて、鬱屈しているのがわかる。


「この牢だ、ほら、立て」


 ミラに急かされて、馬車から降りた。そして、牢に頭から無理やり押し込まれた。首へ牢に備え付けの鎖をつけられ、手には手錠をつけられた。いよいよ教祖から囚人への転身が始まった。


 —————翌日


 早朝から、裁判が始まった。

 牢からミラに連れられ、かなりこぎれいな裁判所に連れられた。

 だが、部屋には三つ椅子が横並びに置かれていて、そこに3人の貴族風の男たちが座っていた。


「ここに立て、変な気は起こすなよ…」


 ミラはいつもの大声とは異なり、少しボソッと耳元で語りかけてきた。

 3人の前に立たされた。

 妙な緊張感が漂っている。


「被告人ん イケメン教教祖 ロバ…?」


(早速、人違いなんですけど…あと話し方変だな…)


「貴様わァ、虚言で村民をだましィー、金品をだまし取ったあ。この事実間違いないなァ?」


「いえ、間違いです」


「口答えするな!貴様の返事は『ハイ』のみだ!」


(この人、この期に及んで無茶苦茶だ…)


「はい…」


 言わないとこの場でミラに首を切られることは間違いない。

 生存戦略としての承諾である。


「ん、では、刑を言い渡す!死罪…執行は明日の闘技場だ…はあ眠いなァ」


 いかにもアホそうな貴族が一秒も間を空けずに『死罪』という強すぎる刑を言い渡した。


「よっし!」


 ミラは小さくガッツポーズをして、なぜかうれしそうなのである。

 

(嫌われすぎだろ、てか、やばい、ピンチすぎる…)


(ああ、ピンチだな…)


 ヴァンがテレパシーで話しかけてきた。

 部屋の窓の外にヴァンがいるのが分かった。


(まあ、色々考えておくよ…)


(すまん、マジ頼む!)


 —————翌日


 闘技場に連れてこられてすぐには、闘技場での死罪とは一体どういうことなのかわからなかった。しかし、その意味はすぐにわかった。


「みなさん、お待ちかね!死罪人の刑の執行だあああ!一人目の刑の執行は、ダイヤモンドタイガーとの素手での殴り合いです」


 ウオオオオ—————


 要は刑の執行が興行として執り行われているのである。悪趣味さに吐き気が出てくるが、当事者になると吐き気どころではない。


(あ~、どうすんだこれ…ヴァンはホントになんかしてくれるのか…?)


 そんなことをうじうじ考えていたら、外では続々と刑が執行されているようだ。

 受刑者たちの悲鳴がこの闘技場の罪人控室にも響き渡る。美しい都の悲しい部分を見ているような気分である。刑の執行自体は、王たちの前で行われるようで王やその取り巻きが度々感想めいたものを述べたりしている。


「あ~、今のやつは微妙だよね…うん、微妙…担当者は後で説教ね…」


「確かに、私も微妙だと思いましたー!」


 お偉方の感想に司会者が適当に合わせているのがよくわかる。どの世界も同じである。


 —————小一時間経過


 段々と控室の人が減っている。

 さっきまでこの部屋にいた人たちは、もうこの世にいないと考えると、その恐ろしさが肌身に実感となってやってくる。

 

「おい、次はお前の番だ」


 —————意外と物語が終わるのは早いのである。

——————————

 声をかけてきた兵士風の男に連れられ、控室から闘技場に向かう。

 距離にして15mほど。だが、感覚としては1歩か2歩の感覚であった。

 そして、闘技場の入り口に来るとコロッセオ風の作りになっていることが分かった。


(この土の広場で起きるショーをみんなで見下ろして楽しむのか…なんか趣味悪いな…)


 兵士風の男に入るように促され、とぼとぼと会場に入っていく。

 すると、大歓声に体が包まれた。


「なんだあの目出し帽-!面白いぞー!」


「体格はいいぞ!いい戦いするんじゃないのか?」


(こっちは最高に情けないんだぞ!)


 会場は笑いが渦巻き、これから始まる殺人ショーにボルテージが上がっている。


(一体俺がされる『殺人ショー』っていったいなんだ…てか、マジでピンチだ)


「会場にお集まりの皆さん、続いての犯罪者は片田舎の村で『イケメン教』なる怪しい宗教を立ち上げ、貧しい村民から金品をだまし取った詐欺師です!」


「くそやろー!」


(確かにその言い方だとかなりエグイことしてるように聞こえるわ…)


 観客の盛り上がりがどんどん上がっていくのを感じる。


「こいつの刑は、とびきり上等な刑だ―――!」


 オオオオオオ!!—————


(できるだけ、楽にあの世に行けるやつでお願いします…)


「刑はなんと!王女様の攻撃魔法での執行となります!」


(ここにきて普通に人の魔法かーい、王女の魔法ならワンちゃん耐えられるんじゃ…)


「王女様は魔法学校を今年主席で卒業され、特に攻撃魔法は竜族を一撃で粉みじんにするほどの破壊力を持っています!」


(すいません、前言撤回で…本気で終わるやつだ…)


 オオオオオオ!!—————


 歓声が再び大きく響いた。視界を上にあげると、おそらく王族や貴族らが座っている特別な席が見えた。そこから、一人のドレスをまとった女がゆっくりと恭しくおりてくる。


「おい、貴様ここに座れ」


 背後に兵士二人が立っていた。膝をつけ正座をさせられると、首輪に鎖をつけられ地面と接続された。要は立ち上がることが不可能になったのだ。


「下手なことをするなよ、まあ王女様にはどうあがいても勝てないんだがな」


(だろうね、まぁどのみち粉にはなるんだけどね…)


 この観客たちに囲まれる異様な雰囲気とどうあがいても刑は免れない諦めのスパイラルでとてつもない無力感を感じている。この世界にきて初めて孤独を感じるのである。


(これで終わりかー…まあよくやったよな…うん、きっといろんな人から天国でほめてもらえるはず!)


 ちょっとしたカラ元気も乾いた感情を実感させるだけである。観客の喧騒が遠のいていく。自分の鼓動が耳に響くのを感じる。


 ピュイー、ピュイーー…—————


(あ、ヴァンだ…最後に俺の死にざまを見に来たのか…いい奴だ…でも、お前、護衛の仕事しろ…)


 ヴァンは闘技場の上空を飛んでいる。が、空中で急停止した。

 そして、体をくねらせて腕を振る。すると、遠くでかすかに破裂音がした。


 パンッ—————


 突然、顔付近に撫でるような風が吹いた。すると、その風が強烈な突風に変わり、目出し帽が裂けた。

 その結果、顔面が衆目にさらされた。

 ちょうどそのタイミングで王女は自分の真ん前に立っていた。


「ぎゃああああああ!!」


 史上最大級のホラー映画を見た8歳児のごとき叫び声でその場にぶっ倒れた。あまりに刺激的な顔面を見て、衝撃を受けたのだろう。ガタガタ震えながらぶっ倒れている。


「王女様ー!」


 多くの観客や兵士が王女を呼び、騒いでいる。


「なんという高貴な顔面…」


 取り巻きの兵士たちも膝をつき、涙を流して膝を付いている。

 会場中が大きくざわついている。観客たちのところからでは、あまりこちらの顔までは見えないようだ。


「みな、近づくな!あやつは顔面から怪しい妖術を放つ。王女に当たらないように遠距離魔法で処分するぞ!」


 ミラが煽動して兵隊を整列させ、遠距離魔法の準備をし始めた。


「皆の者、王女に絶対に当てるなよ!構えええ…撃てええええ」


 ここぞとばかりに、容赦なくぶっぱなしてくる。

 とりあえず、過程はどうあれ終わった。


 ドンッッ—————


 バンッ—————


 遠距離魔法が自分の側から逸れて後方に、はじけ飛んで行った。


「……え?」


 自分の目の前に王女が立っている。

 そして、杖のようなものを大きく右側に掲げている。

 王女が魔法を弾き飛ばして、後方へと弾いたのである。


「…王女様…?」


 ミラは王女が魔法を防いだことに茫然とし、言葉が出ない様子である。


「殺してはなりません…こんな芸術を…人類史に残る芸術を…」


 王女は目の前でぶつぶつ呟いている。

 そして、改めて呼吸をし直した。


「皆の者!この者は無罪!バルデン王国第二王女ルーシーの名のもとにイケメン教『教祖ロバ』を無罪とする!」


 会場からは音が消え、静寂に包まれる。


 ええええエエ—————


 会場がこの日一番の盛り上がりを見せた。

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