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5話

 

 王国筆頭の女騎士は、手が抜けないタイプらしく、『消し炭にしてやる』とか言うおよそ国民に言ってはならないことを口走っている。


(皆頼む…!いい感じに追い払ってくれ!)


「コダンはおるか!」


 村の老人が一人の名前を呼んだ。

 すると、村民の集団の中から、かき分けて前に若者が出てきた。


「ああ」


 特段、魔法の能力が高いようには感じないが、ものすごい筋骨隆々の青年である。生命力にあふれる男は、何か期待させてくれる雰囲気を持ち合わせている。


「やるぞ!みんなもやるぞ!」


 オオオ!—————


 コダンという村の若者の掛け声に合わせて、村民たちが皆手を上げだした。すると、村民の手から目に見える光、おそらく魔力がコダンに集まっていく。


「ほお、珍しい魔法だ…『代行者』と呼ばれる魔法…まさに弱者の魔法!」


(なんかこいつ魔王みたいなんだけど、王国騎士さんですよね…?)


「はぁあああーーー!」


 コダンが大声をあげると、みるみる体に光が帯びだしていく。えげつない力がコダンの体から湧いて止まらないように見える。すると、コダンは体の前で右腕を大きく伸ばし、女騎士の方に向けた。


 カタカタ—————


 地面が小さく細かい揺れから、徐々に大きな振動に代わっていくのが分かる。

 その震源は間違いなくコダンだ。エネルギーが右腕にたまっている。

 そして、コダンは大きく息を吸った。そして、


「サンダァァァーストライク!!!」


 巨大な雷を女騎士に向け放った。


 ドガァァァン———————


 瞬く間に女騎士の姿が土煙に消えた。

 女騎士の後ろにあった誰かの家は残念ながら消し飛んでいる。


(お前ら、程よくやれって!存在ごと消しちゃう魔法じゃん!『やりすぎはだめ』って教義作るか…)


 土煙のせいで、あたり一面が視界を奪われている。

 しかし、次の瞬間


 ブゥォォン———————


 土煙の真ん中から、突風が吹いた。

 村民たちは思わずたじろいだ。

 そして、その風の中から女騎士は無傷で現れた。


「ふん!私の10歳くらいの時の魔法と同じくらいの威力かのう、才能が無いなりによくやった」


 まるで何も影響をもたらせていないかのような語り口である。

 多くの村民が膝をつき、『無理だ…』と呟きながら、諦め始めた。


(無理もない…人智を超えてるってこのことだよな…)


「皆、諦めるな!」


 コダンは、まだやる気がある。この心根の強さは、かなり尊敬できるのである。


「はっはっはっ、お望み通り全力で滅ぼしてやる!」


(村滅ぼしたらあんたが逮捕されるんじゃないのか…てか村民守らないと!)


 やむを得ないと考え、今にも一触即発の村民と女騎士の間にとぼとぼと割って入った。


「皆さん!!やめましょう!私は大丈夫です、必ず帰ってくるのでそれまで待っていてください」


 目出し帽の情けない人間が大きな声で、主に村民を説得した。


「教祖様…」


 村民たちは、半ばあきらめのような表情で自分を見つめている。村民たちも多くはこの女騎士にはかなわないことをわかっているのである。それでも助けようとしてくれたことはうれしかった。


「教祖は少し脳みそがあるようだな、連れてけ!」


(お前のせいだぞ!)


 女騎士は、部下の騎士たちに自分の連行を指示した。


 ドンッ—————


(なんだこの音!入口の方から音が聞こえたぞ…)


「今度は何事だ!」


 女騎士が入り口のほうを振り返った。


 鳥人族の襲撃だーー!!—————


 村人の一人が入り口の方から大声を出して駆けてくる。


(あいつらか、このタイミングで復讐にきたのか!)


「隊長ーー!鳥人族のダルスが村の入口に来ています」


入り口を見張っていた、王国騎士の一人が馬で駆けてきた。


「ほう、指名手配中の鳥人族のあいつらか。よし、そいつらを消し炭にしよう。まさに一石二鳥だ」


(悉くを滅ぼそうとする姿勢がすごいな…鳥人と王国騎士どっちが強いんだろう…?)


 女騎士に何故だか一緒に引っ張られて鳥人族のいる入り口のところへ運ばれた。


「なぜ王国騎士がいる?」


 入り口付近でダルスと呼ばれた鳥人が部下2人と浮遊している。

 ダルスはこの前ヴァンを攻撃した眼帯の鳥人であった。


(そらそうだよね…びっくりだよね…)


「貴様らには関係のないことだ。丁度いいから、貴様らも度重なる狼藉の罪がある。投降するか、死ぬかを選べ」


 女騎士は鳥人のダルスを睨みつけている。

 ダルスも女騎士には引くつもりがない表情である。


「今日は貴様と戦うつもりはなかったのだが、仕方ない。死ねぇええ」


「いでよ!聖なる槍(ゲイボルグ)!ハア!」


 女騎士の周りに光が生まれ、その光が互いに引かれるようにくっつく。すると、段々と形を成していき、大きな槍が組み上がっていく。光の槍が7~8本ほどが現出した。

 女騎士はダルスに向けて手を伸ばした。


「死に晒せエエエ!!」


(悪役すぎるぞこいつ…)


 槍はとんでもない勢いで回転しだして、そのままダルスたちの方へ突っ込んでいった。


 ドォンッ—————


 ドォンッ—————


 放たれた衝撃で村の家の2棟が半壊した。

 そして、空中で槍が爆発した衝撃でものすごい振動が村中に響いた。


(オイ!人の村を壊す気か!)


 空中での爆発の煙から、鳥人たちの影が落ちてくるのが見えた。さすがの鳥人達でも、この女騎士には、敵わない相手のようである。


 ドスッ—————


 鳥人たちは地面に落下した。まだダルスのみは命からがら息をしているようにみえる。

 女騎士は、ドシドシと歩みを進め、ダルスに近づいた。


「鳥人がどんなものかと楽しみにしていたがこんなものか…終わらせてやる」


 背中にかけていた剣を抜き、ダルスの上で構えた。そして、すかさず構えた。


「はああああ!」


 ガハッ—————


 ウッ—————


 2回ダルスの体に剣を突き刺した。

 血がダルスの体から噴き出して、村の入り口付近に血の水たまりができた。


 —————遠くの空に薄暗い雲ができているのが分かる

——————————

 ダルスは、女騎士にボコボコにされ死んでしまった。

 その後、無理やり連行され、荷台に牢が備え付けられている馬車に乗せられた。


「教祖ーー!絶対に帰ってきてください!」


 村民たちは、大きな声を上げ、悲しみにくれていた。

 もう帰ってこれるのか、全く分からない。


 —————


 あの村から馬車に乗せられ、田舎道をひたすら走っている。

 目出し帽を日本でも被ったことがないのに、まさか異世界で被ることになるとは思わなかった。


(にしても、なんもないな~この世界…でも、日本よりよっぽどいい世界に見える…)


「おい、何をきょろきょろしている。」


「空を眺めていたのです…この美しい空を見てください…人間の営みなど鼻くそ以下でしょう?」

 

 ミラは時々こっちの行動をいさめる。

 さも荘厳で教祖らしい口調でミラと呼ばれている女騎士に語りかける。


「ふん、鼻くそ以下は貴様だ、下郎!」


(当たりキッッツ!だれのおかげで飯食えてるんだ!まあ、納税してないけど…)


 そんなこんなでダラダラと馬車で運ばれていると、大きな城壁が見えてきた。


(オー!巨大だ…超巨大都市だ…てかあの尖がっているのが王城かな…)


 とにかく興奮した。魔法も中々だが、この城壁といい王城といい最高に気分を上げてくれている。

 そうこうしていると城門が眼前にそびえたった。


(20mは軽くあるよな~魔法の力で建造するのかな…)


「ここの門をくぐるのはお前の人生で1回だけだ、少しゆっくり通ってやる…」


 ミラは真剣な眼差しで話しかけてきた。

 優しいのか、とんでもなく嫌味ったらしいのかわからないが、眼差しの真剣さから嫌味と感じない。田舎者に最後に思い出を残してくれているのだと思う。


 —————そして、城内に入るとそこは夢の世界である。全人類があこがれる世界だ。


 石畳の大通りは、遠くに見える王城へとつながっているのが分かる。

 木造と石造りの建造物が混ざり合い、なんともファンタジーな世界を作り出している。

 そして、ところどころに川が流れていて、水路のようなものが複雑に都市を這っている。


「田舎者よ、これが『水の都 レイン』だ。私たちはこの美しく荘厳な国を守るため、お前らのようなウジ虫を滅ぼすのだ」


(愛国心がねじ曲がっている…が、どの言葉も本気だ…)


 しばらく美しい街並みを眺めていると、急に馬車が止まった。

 都市の路地裏である。薄暗く人通りも少ない。


「ここだ。お前が繋がれる牢への入り口だ」


 ミラは、冷静に話しかけてきた、いよいよという雰囲気を語り口から感じる。

 暗くて見えない大きなトンネルの穴がある。入り口には兵士がいて、簡単に出入りができない場所であることがわかった。


 —————最後の空かな…


 目出し帽では、どんなに頑張っても逆転はない。

 イケメンの効果を奪うにはあまりにも強すぎるアイテムである。


(あのマンホールで落ちた段階でもしかしたら死んでいたのかもしれないし、ここは奇跡的な延長戦ってだけかも。)


 半ばあきらめの気持ちが心の奥から湧いてきた。

 空がどんどんトンネルの天井に置き換わっていく。


「あ、ヴァンだ」


 思わず口をついた。


「ん?」


「いや、なんでもないです」


 空にはヴァンが飛んでいた。最後の見送りに来てくれているようだ。


(もっと話したかったな、貴重な友達なのに…)


 そして、視界は完全にトンネルの天井のみとなった。


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