12話
——————魔王軍との決戦当日
バラックの城壁前には、3万人の人間がきれいに隊列を組んでいる。
ここ数日で近隣の城からも応援が集まってきたようだ。
城壁の上から遠くを見渡すと魔王軍の軍勢が良く見える。緑のゴブリンなどではなく、どす黒いゴブリンと巨体のオーガが隊列を組んでいる。
(かわいさのかけらもないな…ガチファンタジー…武装もかなりしっかりしている)
こちらの王国軍の先頭にはこの前自分たちを案内してくれた女騎士が背丈ほどの大斧を持ち、重武装をして馬に乗っている。
(ミラとは違ってすごい優しい人だったな…あの人はそんなに偉い人だったんだな)
すると、女騎士が斧を掲げた。その瞬間は直ぐにやってくる。
——————この国の運命はこの瞬間に決まる!!皆のもの我に続けえええ!!
女騎士が敵の部隊に突っ込んでいく。後方に控えている魔法使が何やら魔法を発動しだしている。
——————ドガガッン!
大砲のような音が地鳴りのように響く。空中には、火や雷、土の弾丸などが浮遊し、一直線で魔王軍に目掛けて飛んでいく。城壁の上からも魔法が放たれている。あっという間に魔王軍の部隊が土煙に覆われて見えなくなる。
王国軍は、女騎士を中心に一直線に突っ込んでいく。おそらく馬にも魔法がかかっており、スポーツカー並みの速さで進んでいる。
「先制攻撃は結構いい感じで効いてるんじゃないのか?」
「どうだかね、魔王軍も防御魔法はお手の物だ。近接攻撃で魔法障壁を破壊するほかないように俺は思う」
ケルテンは城壁に片足をかけて戦況を眺めながら言う。
そして、王国軍の前衛と魔王軍の前衛が接触を始めた。この状況の中でミラ、ヴァン、ケルテンそして自分は特殊な任務があるため後続の部隊として動くこととなっている。
——————戦闘前夜
ミラに呼ばれてヴァンとケルテン、そしてセラと作戦会議室に向かった。
そこには、周辺の地図と戦略駒が配置されていた。そして入室するなり、ミラは『作戦を伝える』といい、地図に手を伸ばした。
「戦闘開始後、私の部下数名と応援の兵士たちが相手の厚い守りをに北側に引っ張っるように行動 する。そうすると、ちょうど真ん中に位置している相手の本陣であるタザン陣地の正面の守りが薄くなる」
ミラは戦略駒を慣れた手つきで動かす。
「そこに私と直属で率いている王国騎士団が全力突撃する。その後、ケルテンとヴァンで更に穴を空ける。」
戦略駒の動きがやや直線的で荒い。
「そして、そこでタザンと対峙する貴様が雷魔法を打ち込め!簡単だろ?」
「あ、はい」
(そこまでは安全に連れてってくれるのでしょうか…)
——————
そんなこんなで昨日の夜に、怪我で戦闘不能のコダンから魔法をもらい受けた。そして、イケメン教の信者となった疲労困憊の兵士やスラム街の人から魔力を集めて回った。
そのため、全身に力がみなぎっており、踏ん張ると間違ってサンダーボルト漏らしてしまいそうになっている。
「まずいわね…」
セラは戦況を見つめながらつぶやく。
人類は、何度も遠距離魔法を放ち、雷や炎の弾が空を覆う。
ドォンン——————
魔王軍の軍勢に撃ち込まれていく。一部の魔物がはじけていくのが見える。全くポップさのかけらもない血肉が飛び散っている。
「前線の数が思った以上に減っていない…遠距離魔法があまり有効ではないのか…」
ミラは攻撃の進捗をあまり芳しいものではないと考えているようだ。相手も魔法障壁や、単純な防御力で攻撃を耐えているのだ。
確かに、相手の勢いはとどまるどころか、むしろ加速しているように見える。
「このままでは、ダザンの周りの兵を薄くすることすらできず、ただの自爆になりかねない…」
セラは戦場の魔力量を把握し、冷静に分析している。風が少し吹くと、血と焦げ臭いにおいが混ざった、鼻をつく匂いが広がる。
そして、両軍の前線が衝突した。甲高い音と共に鈍い音も聞こえていて、戦場の苛烈さを物語っている。
「人類の前衛は決して弱くない。むしろ剣技などで他の種族を圧倒している。ここである程度深くまで相手を押し込む必要がある」
ヴァンは、作戦実行の行く末を考えている。
「ふん、あの副団長ヒームの強さをなめるなよ。私の一番弟子だから、このピンチは必ず打開する」
(ミラは、部下に対しては優しいのかもな…)
すると大斧を振り回しながら、大声を上げている。すると、巨大な火炎の渦が戦場に10本ほど柱となって現れた。
その炎は、敵陣で暴れまくって、魔物を燃やしている。たちまち、戦場に大きな黒煙が立ち込めた。
「おお、やるなあいつ」
ケルテンもさすがにあのヒームの強さには感嘆している。
「ふはははは、いけー!」
(相変わらず魔王様な笑い方…ま、ミラ閣下もお喜びならよかったです…)




