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君を守れるなら夜でも消す。  作者: よいのまる
始まり

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8.無知は罪


──松田一家本邸 応接室・昼



応接室の空気は重く、窓の光が淡く差し込む。


「資金の工面ですか――いかほど必要ですか?」


立石は気取って軽く笑い、指をひとつ伸ばしながら答える。


「まずは…1000万だ。まずは様子見ってことでな」


悠吏の瞳が一瞬、僅かに細まった。

だが声には動揺も嘲りもなく、冷静そのもの。


「なるほど、随分と“様子見”から始めるのですね」


立石は、若くて女である悠吏に見下されることなど考えもしなかった。

むしろ自分が指示を出す立場だと思い込んでいた。


「えぇ、まずはこれくらい出してもらえれば、裏通りを掃除するためには金が必要だ。でなきゃ、俺の計画は前に進まない」


悠吏の唇がわずかに笑う。

それは慈悲ではなく――鋭く研ぎ澄まされた警告の微笑だった。


「“裏通りを掃除するための金”、ですか。随分大胆な発言ですね」


悠吏の扇子を広げ口元を隠すも微かな笑みが浮かべながら立石を見据える。

その笑みは慈悲ではなく、冷徹な観察眼の産物だった。


「ふふ……面白い冗談ですね」


立石は冗談だと言われ、口角をわずかに上げる。


「いや、冗談じゃない。俺の計画は本気だ!裏通りを掃除して、この町を俺の手で変える!」


悠吏は微動だにせず、静かに立石を見る。

声は柔らかいが、その一言一言が鋭く突き刺さる。


「…あなた、ご存じないようですね。彩華町では、表通りと裏通りの棲み分けは絶対です。勝手に裏通りを壊すなど、許される行為ではありません」


立石はそれでも強気に胸を張る。

だが、その言葉の端々に含まれる悠吏の冷徹な威圧に、心の奥底で小さな動揺が芽生えていた。


「何を言う!お前たちが協力すれば、この町は俺のものになる!」


悠吏は軽く首を傾げ、静かに答える。


「協力…ですか。あなたの望みを叶えるために、私たちに動けと?それどころか、彩華町の掟を破るあなたの計画など、聞く耳も持たない」


立石の顔色が変わる。

座っていたソファから立ち上がり、指を悠吏に突きつけながら、怒声を上げる。


「な、なんだその態度は!女のくせに!俺はこの町を――」


悠吏は微動だにせず、静かに立石を見据える。

その視線の冷たさは、まるで氷の壁が立ちはだかるようで、立石は言葉を続けられなかった。


応接室には、立石の荒々しい息遣いと、悠吏の静謐な空気だけが支配していた。


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