1.拾いもの
ダークな世界観のを作りたいなと思いました、あくまでも趣味、初投稿です
彩華町の夜は、相変わらず騒がしく彩り鮮やかなネオンが煌めく。今日も相変わらず人々で賑わい活気に溢れている。『夜が終わらない町』としての彩華町の姿がそこにはあり、ネオンの光が揺れていた。
至る所から聞こえる人々の笑い声と車の音が交じるその中で、1組の男女は静かに見回りを続けていた。
「中井さん、今夜は妙に静かですね」
坂田成未が呟く。
黒の髪に内側には赤を入れ、まだ年若いが普通とは違った雰囲気を纏っている。
「嵐の前ってやつかもしれねぇな」
そう中井裕也は短く返す。
深い緑色の髪を短く切り揃え目つきは鋭い、首からは刺青が顔を覗かせる。
誰が見ても裏の人間だと分かる風貌。
なんとなく中井は路地裏に目を向けた――そのときだった。
何かが変だと感じ取り足を止める。
薄暗い路地の奥、ダンボールの隙間に、小さな手を見つける。
近づいてみると、それは小さな子どもだった。
中井が片膝をつき、肩に手を置く。
反応はない。
だが、かすかに胸が上下している。
息は…ある。
成未も近付き、子どもの頬に手を当てる。
「体温が低い……」
成未は慌てて上着を脱ぎ、子どもにかけ抱き上げる。
「こんなに軽いなんて……」
抱き上げた成未の声には、驚きと同時に怒りのような震えがあった。
中井は一度、空を仰ぐ。
「放っとくわけにゃあいかねぇ。連れて帰るぞ」
「……うちにですか?」
「ったりめぇだ、急ぐぞ」
二人は足早に帰路へと向かった。
その腕の中の子どもは、まるで命の火が消えかけている蝋燭のように、かすかに息をしていた。
彩華町を縄張りとし、ここら一帯を治めるは極道 松田一家。その本邸は純和風な作りの荘厳たる豪邸。
2人は夜の庭を抜け、本部の玄関を荒々しく開ける。
「戻りました…!」
肩で息をしながら成未が叫ぶと奥から、着物を着た水色の髪の女性が姿を見せる。
この人は松田一家・若頭の花里天音、いつも優しげな顔をしていて、朗らかな性格の一家の良心。
「どうしたの、さっき見回りに行くって言って出たばかりなのに」
成未が腕の中の子どもを見せると、天音の表情が一瞬で曇る。
「天音さん…この子を助けてあげたいんです…!」
成未は声を絞り出した。
そんな姿を見て天音は思う、本当に優しい子ね、と。
だが天音は状況を即座に把握した。
「姐さんは今居ないのよ…だから私が判断するわ。客間を空けて。すぐにお布団とお水、それと軽い食事…そうね、スープを用意して」
「はい!」
成未は中井に子ども預け急いで準備をするために駆け出した。
中井と天音は客間に向かうと既に布団は敷いてあった。
成未は食事の準備をしているのだろう。
客間に入ると中井は子どもを慎重に寝かせる。
天音が冷静に脈を取り、額に手を当てる。
「……よかった。この子、まだ生きてるわ」
その声は、いつもの穏やかさより少し強く、温かかった。
中井は静かに子どもの小さな手を見下ろす。
「この町の闇は……いつだってこういう形で顔を出す」
天音は短く頷いた。
「そうね。だからこそ、私たちはこの町を守らなきゃいけないのよ」
遠くでネオンの光が揺れる中、松田一家の客間にひとつの小さな命が横たわっていた。
それはやがて、彩華町を大きく揺るがす存在になるとは、この時まだ誰も知らなかった――。




