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09.影葬者(ネクス・ノクティス)の目覚め

リズはナギアとつるむようになり、一緒に暮らすうちにナギアとの関係が深くなるほど自分が本当は暗殺一族の者だったということを言えずにいた。



怖がれたくない。


本当の自分を見せたらまた捨てられてしまうかもしれない。



そう思い、リズは戦闘を避けるように、ナギアに守ってもらうを後ろで見ているだけだった。

街の人といつもケンカをして帰ってくるナギアについて呆れていたが、それでも本人が楽しそうに生きているから許していた。



『あたしはマフィアのトップになってバカにしてきた奴ら全員見返してやる』



どうせ夢物語だと思った。

だけど、いつからかナギアは変わってしまった。

本当に自分が望む世界になるように真っ直ぐ歩き始めた。


それについていくアーティ。

でも、私は素直についていくことができなった。


暗殺一族のリズ


この足枷をどうにかしないと私は前に進めない。


****


____現在にもどる



今、リズの目の前にナギアが血を流して腕の中にいる。


本当の私を…暗殺一族のリズを知っても受け入れてくれた彼女を…。

私の考えを聞こうとしてくれた。知ろうとしてくれた人。

かけがえのない私の恩人であり、仲間の”ナギアが”。

もっと傍で彼女を支えたい。



リズをナギアを抱える手に力が入る。


そして、ゆっくりナギアを下す。


「……リ…ズ…?」


「大丈夫だよ。ナギア。それと…ありがとう」


「……ッ」



ナギアに対してそっと告げる。

ナギアはリズの目つきが変わったことに気づく。



リズは静かに立ち上がる。



「それと…この勝負は私が蹴りをつける。私の大切な人を失わないために!」


最後の言葉を言い終えるとリズの足の周りが黒く染まり、リズを包み込む。



≪加護 影葬者ネクス・ノクティスに目覚めました≫



それはリズが願い、選んだ力だった。

誰かを守るための陰の力。



「嘘。リズ姉さまが加護を……」


「落ち着きなさい。シズ。加護を授かろうが私たちの目的は変わりません。彼女たちを排除すること」


動揺するシズに、冷静な言葉をかけて冷静を取り戻そうとするマーズ。



「…ねぇ、2人とも。どうしてブラボラなんかに従ってるの?ダンセーズ一家はそんなことしなくても、帝都の王家御用達の暗殺一族。こんな廃れた国のマフィアに媚びるだなんて」


リズは静かに疑問を投げかける。



「うるっさいわね。私たちだってこんなことしたくないわよ」


マーズが怒り任せにリズを攻撃する。

しかし、リズは影を使い影の中に隠れる。



「隠れるなんてずるい」


マーズはプンプンと怒る。

しかし、どこから攻撃してくるかわからないこの状況。

敵2人に緊張が流れる。



「暗殺する方法に卑怯もくそもない。暗殺できるかできないかそれが大事だって教わらなかった?」


「ッ」




マーズとシズが二人並んだ後ろにリズが現れる。


「何?これ」


「体が動かない」



しかし、どういうわけか2人は身動きが取れない。

リズは2人の首元にダガーナイフの先を向ける。



「やめてくれ!リズちゃん」


声のする方を3人とも目を向ける。


「あなたは…」


「オーキス!!!?」


リズが驚くがそれを上回るようにマーズが驚く。

オーキスはゆっくりとマーズの側に走って向かう。



「どうして……死んだんじゃ…」


マーズの目には涙が浮かぶ。

リズはナイフをレッグホルスターに仕舞う。


「違うんだ。マーズ。俺は死んでいない」


「じゃあ、どうして…どうして…死んだことになっているですか…。私がどんな思いで今まで過ごしていたか…あなたにわかりますか…?」


オーキスはリズの顔を見る。

リズはオーキスが何を求めているのかわかっていたがそれを断る。


「私の大切な人に手を出す人を解放するわけにはいかない」


その言葉にシズは睨みを聞かせるが、オーキスは2人に頭を下げる。



「どうか、頼む。これまでのことをマーズ…君に説明をしたい。しかし、リズちゃんに危害を加えないでほしい。俺の…命の恩人なんだ…だから…頼むッ」


全力で頭を下げる。

その様子にシズが何かを話そうとするがマーズが制する。


「シズ…やめて!リズ…約束するわ。危害を加えないから解放してください」


リズはマーズの目を見る。

その言葉に嘘がなさそうなためリズは術を解く。



「それでオーキス一体どういうことなの、リズが恩人ってどういうこと?」


マーズはオーキスに尋ねる。

オーキスは優しい目つきでマーズを見つめる。


「マーズ。俺の家はずっと不正を働いてきたんだ。それで等々6年前に刺客が送られて…それで来たのがリズちゃんだったんだよ」


「え?リズが…」


オーキスはリズを見つめる。

リズは興味なさそうにナギアの方へ走っていく。


「そう。俺もあれこれ改善しようとしたけど、ダメで絶望して最後にワインを飲んでいたらリズちゃんが来て、最後に愚痴をこぼしたんだ。そしたら、リズちゃんが逃がしてくれたんだ」



「6年前って」


「リズ姉さまが家から追放された時期と被ってる…」



「リズちゃんにね。話している途中でマーズのこと好きかどうかを聞かれてね。愛しているって答えたんだ」


「えっ、ちょっと」


赤面するマーズ。

その様子を微笑ましそうに眺めるオーキス。


「そのあと、いろいろと愚痴をこぼしてたら、リズちゃんも色々と悩んだ結果、僕を逃がしてくれたんだ。それで家を追放されたって、噂で聞いてたから、心配してここら辺探し回ってたんだけど、全然見つからなくて…。ずっと謝罪と感謝を伝えたいと思ってたんだけど…多分、今のリズちゃんにはそれよりも大事な仲間と一緒にいることが大切なんだね」



2人は改めてリズの方をみる。

家にいるとき、リズは真顔で過ごしていることが多かった。

しかし、今リズは少なからず表情を出し、伸び伸びと暮らしている。


「あと、多分だけど、俺を殺さなかったのは…マーズ。君のためだと思う」


「私の?」


オーキスは首を縦に振る。


「そう。きっと君が僕のことを大切にしているのをリズちゃんはずっと見ていた。だから僕がマーズを好きかとか、家を復興しようと行動したかを尋ねたんだと思う。それで俺も一緒に悪さしてたり、君のことを愛していなかったら殺されていたかもしれないね。言葉に出さないだけで、彼女なりに君たちを守りたかったんじゃないのかな?」



「……」



2人は考え込んだ。

今まで出来損ないとリズをバカにしていた。しかし、もともと彼女は優秀でとても優しかった。

感情が表に出ていないが、マーズやシズが好きそうなものが依頼主の荷物であるとそれを盗んだり、普段もできなことやわからないところは根気強く教えてくれていた。


マーズは下向き、シズは 涙がポロポロとこぼれる。

2人は顔を見合わせて、先ほどからアーティとナギアのことで口論しているリズのもとに向かう。



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