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04.ナギアの決意

混乱しているナギアのために整理をする時間が必要だと思って2人は街に出る。

2人は何も言わずにただ周りを散歩していると突然人集りができている。



「ねぇ、アーティ。やたらとあそこ盛り上がってない?」


「ん?本当だ。なんかあったのかな?行ってみよう、リズ」


すると、アジトにいるはずのナギアが何故かここらのエリアを牛耳っているハバルドを倒していた。



「ナギア!」



2人は息が切れて、倒れかけるナギアの元に向かう。

アーティは倒れるナギアを抱き抱え、必死にナギアに呼びかけるも反応はない。



「ナギア…ナギア!!…ナギアッ」 



まるで、この世の別れのように惜しむアーティ。

そんなアーティをみてリズは頭を軽く叩く。



「…アーティ…よーくナギアを見てごらん」



「えっ?………」



アーティはもう一度ナギアを見る。



「____寝てる?」



「うん…多分。ここで寝かすのもあれだからアジトに戻ろう」



「そうだね」



アーティはナギアを抱えて、リズと共にアジトに戻った。



____夜



アジトのベッドで寝ていたナギアが目を覚ます。



「あ…あれ…ここは?」


ナギアは今まで外にいたのに、アジトに戻っていることに不思議そうに見渡す。



「おはよう…ナギア。調子はどう?」



リズはナギアの様子を見にきたら、起きていたので、

いつものクールな感じで声をかける。


「…ん…あ…大丈夫ッ」


ナギアが答えると両頬をリズの両手で挟まれ、黒い笑みを浮かべて尋ねる。



「一体何があったのか、答えてくれるかしら?」



「はい…」



しばらく待っているとアーティが帰ってきてものすごく、ナギアを心配した。それからご飯を済ませた後、ナギアはゆっくりと話した。


「ハバルドが男の人に乱暴をしていて助けを求められたから助けた」


心配症のアーティは声を大にして意を唱える。



「そんなのここでは日常だろ?今までも見てきたじゃないか。関わったら俺たちが目をつけられたりするんだぞ! それに、今回は倒せたからいいけど…もし倒せなかったら……ッ」



顔を歪ませながらアーティは必死に話す。

それを聞いたナギアは冷静に話す。


「ありがとうアーティ。心配してくれて…。でも…確かに日常だけど、それが助けを求める人を助けない理由にはならない。アーティ。自分に不利益になることから逃げたり、遠くから観察することは簡単だよ。でもね、そんな人を君は信頼できるのかな?」


「え…」


アーティは目を大きく開けて少し目線を下げる。

リズも少し驚く。

ナギアは気にせず話を続ける。


「それに、助けを求めるって結構難しいことだと思う。特にアーティが言ったように、ここでは暴力が日常化している。その中で助けを求めるってある意味ギャンブルだと思うんだよね。 誰も助けを求めてくれない中で、必死に声を出して助けを求める。その人にとって、その行動は唯一の希望であり光だと思う。そこで助けない私は人の光を踏み躙り、上に立つあいつらと同じになりたくなかった」



静かにナギアは胸の前で手を握る。



「逃げればいいのに…そっちの方が楽なのは知ってる…。でも私は楽な方にどうしてもいけないんだ…。本当時々自分の不器用さに疲れ切ることもあるけど…。 そうこうしたら《裁断者:ヴェリタス》の加護に目覚めて、能力を使って倒したところまでは覚えてるけどその後は…」


しんみりとした空気を変えるかのように途中からあっけらかんと話すナギア。

ナギアの話を聞いたリズは静かに言葉を落とした。


「──あんた、本当に変わったよね」


「え?」


「いや、昔からそうだったのかも。……ただ、私たちがようやくあんたの本質に追いついただけかもしれないね」


照れたように肩をすくめるリズ。


すると、そのときアーティがぽつりとつぶやいた。


「……ナギア。俺、まだ怖いんだ。正義とか、光とか、そういうのを信じきることが」


「うん。わかるよ」


「でも……君の言葉を聞いて、ちょっとだけ思った。そんなふうに誰かのために動ける君を、やっぱり俺は──信じたいって」


アーティは真っ直ぐナギアを見つめた。


ナギアは柔らかく笑った。


「ありがと、アーティ」




──翌朝



アジトの外はざわめきに包まれていた。


「ナギア様だよな!?」


「あのハバルドをやったってのは本当か!?」


「おかげで夫が戻ってきたんです!ありがとうございます!」


街の住民たちがこぞって礼を言いに訪れてくる。



「……なにこれ……?」



ナギアは戸惑った表情で扉の奥から顔をのぞかせる。


「どうやら一夜にしてヒーロー誕生、ってわけだ」



リズが肩をすくめる。


「わ……私そんなつもりじゃ……」



「まぁまぁ、もう少し寝てなよ、英雄さん」



アーティが笑う。どこか優しい声色だった。


──


その日の夕方、街の広場の陰に、見慣れない男の影が立っていた。


漆黒のマントを身にまとい、左目には十字の傷跡。


「“ナギア”……か。ハバルドのやり方に俺も迷惑していたからなありがたいが…ブラボラ様にとって害になりそうな蕾は早めに摘んでおいた方が良さそうだ」


彼は地面にポタリと赤い血を落とすと、虚空に溶けるように姿を消した。



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