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02.異世界と元世界の相違

凪は窓から見た景色に絶句した。


街は廃れており、古いコンクリートの廃墟にトタン屋根をつけているだけが多い。

人も皆、ボロボロで痩せ細り、身なりも黄ばんだボロボロの服をみんなで着ていた。



凪のいる場所は、天井があって古い影響か、数カ所、天井に穴が空いていてその下にバケツが置いてある。



「…雰囲気的には廃墟…。でも…この衛生環境の悪さ…もしかして…スラム街?」




「おっ、起きたか!ナギア姐!」




「…ッ!?」



ドアのついていない入り口を見ると金髪の猫っ毛のタレ眉の青年が立っていた。



「ここ…どこ?きみは…だれ?」



凪は尋ねると男の子は不思議そうに答える。



「何変なこと言ってんだよナギア姐!。俺の名はアーティ。ここは俺たちのアジトだろ?」



「…アジト?……」


アジト?普通に家?っぽいけど…。

それより、何でこんなところで私たちは暮らしてるんだ?



アーティの背後から、もう1人のショートに片方だけ刈り上げている人が顔を出した。



「……ん?やっと起きたのか?ナギア。全く…ん?なんか様子おかしくないか?」



「俺の名前も忘れてるっぽいだよ、リズ」



どうやら、後ろにいるのはリズというらしい。

そして声は意外とかっこいい感じの女の声だ。



凪は状況が掴めず、頭の中は混乱していた。ここがどこで、自分がなぜナギアと呼ばれているのかも、まだ分かっていない。


「ナギア……たら。な〜にが“将来、あたしはマフィアのトップになって、バカにしてきたヤツら全員見返してやる”って、ドヤ顔で言ってた癖に記憶なくしてるとかカッコ悪っ」


凪は、動きを止める。

その言葉は____記憶のどこかに、聞き覚えがあった。


「……え? それ……私が……?」



「アンタ以外にいる?階段でふざけて『姐御の登場!』とか叫んで転げ落ちて……。頭から血出して気絶してさ、こっちはマジで焦ったんだからな?」


アーティもリズも、真剣な目でこっちを見ている。

でも、凪の心臓は別の意味で跳ね上がっていた。


(……姐御の登場……? マフィアのトップ……?)



(ちょ、ちょっと待って? 全く状況が読めない…マフィアって何…?◯が如くとかのやつ?)



あまりの前回の自分の人生とのギャップに理解が追いつかず頭を悩ませる凪。思わず額に手を当てて深く息を吐く。



その様子を見たアーティが言った。



「なあ…ほんとに大丈夫か? もう『真面目に生きるのはやめた!』って叫んだナギア姐じゃなくなったのか?」


「……」



凪はその言葉にピクッと反応した。



【真面目に生きるなんてアホらしい】



私が死ぬ時に思った言葉に似てる。

ナギアは何を思ってそう言ったかはわからない。




「何で…その私?はそんなこと言ったの?」



「…本当に覚えてないのか…」



リズは疑うように尋ねる。

凪は静かに首を縦に振る。


2人は顔を見合わせてから色々教えてくれた。




どうやらここは灰都アヌラ。

100年前まではここら辺の栄えた都だったが、現帝都

に負けてからずっと廃れてしまい、スラム化しているらしい。

そして、ナギア、アーティ、リズはここプラダ地区で生活を共にしている悪ガキ3人組らしい。

依頼があればなんでもこなす非公式ギルドの端くれらしい。


しかし、ここ最近真面目に働いても支給されるお金も、税金が高くなり、食べ物も減ったことで飢餓が増えてきている。


それをみていたナギアは真面目をやめるといい

どんな手でも高い報酬をもらえるようにするため、マフィアになると言ったらしい…。


「でも…どうやってマフィアになるの?組織に入るの?」


その言葉にアーティはニヤっと口角を上げる。



「ナギア姐さん。そりゃ違う。ナギア姐は、そんな小さいこと言いません!俺たちが作るんですよ!」



「つくる?マフィア…?」




「そうそう。だってマフィアって変な掟とかあるじゃん?それを自分達が守ってたら今と変わらないからなら作っちゃえって…」




「いやいやいやいやいや、無理無理無理無理」



凪は全力で否定する。



「普通に考えて、マフィアなんて危ないし、しかも普段から生きてて関わることもないじゃん」




「やってもないのに諦めるなよ。前のナギアはそんなんじゃなかった!」



食い気味、怒りぶつけるアーティ。



「今、俺たちだっていつ死ぬかわからない。盗みをしないと腹も満たせないし。見ろよ!この光景をここら辺の人はみんな苦しんでるんだ!それをどうにかしたいって!変えたいって言っていたじゃないか!」



でも中身は違うし…。


凪は心底困っていた。

言葉にしたら変人に思われることを恐れて。

それをみてリズは静かに語る。



「ナギア…、真面目に生きてる人達が今この窓から見える人たちだよ」


凪はもう一度窓の外見る。


____必死に汗水流して働く人


____もう力尽きて座り込む人。


____物乞いをする人。



様々な人がいる____みんな生きるために。



凪は手を強く握る。

顔を下に向ける。



「私たちがやろうとしてるのは…遊びじゃない。怖いなら逃げた方がいい」



「おい!リズ!」



リズは静かに外に向かう。

アーティは出る前に凪の方を一度見る。



(今は…頭を整理する時間が必要かな)



アーティは記憶喪失によって困惑しているナギアを

心配するが、1人になることも大事だと気遣い、リズを追いかける。



凪は1人、外は賑やかはずなのに静まり返った部屋で

ゆっくりベッドに横なって目を瞑った。

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