15.作戦会議
ナギアとアーティがたわいのない話をしていたら
ドアからノック音が聞こえてきた。
「社長、お客様をお連れしました」
秘書の後ろからリズが現れる。秘書が扉を閉める。
すでにナギアとアーティはソファに腰掛けていた。
リズは空いてるナギアの左の椅子に腰掛ける。
「久しぶりね」
「うん、数年ぶり」
ナギアが短く返す。
「揃ったね。じゃあ始めよう。白銅商会について、情報を整理しようか」
アーティが先に口を開く。
「先に俺から話させてもらう。まず白銅商会は、4年前に経営者が変わってから突然組織として急成長している。経営から見ても、怪しい点は多い」
アーティは2人に報告書を渡す。
それに目を通しながら2人はアーティの話に耳を向ける。
「例えば金融業とかは4年前から突然やり出してる。当時は、換金する役割が多いが、ここらでは農作物も育たなければ、物自体もないからそんなの儲からない。そんな中で金融業を急激に成長させるための膨大な資金はどこから出たのか…おかしいと思って、それで色々調べた結果、違法の植物や、人身売買等を犯罪まがいのことをしていることがわかった」
アーティの発言にナギアが顔を歪ませる。
「でも、そんな表立って商会がそんなことをしてたら流石に自警団たちが黙ってないだろう」
「そこは買収してるからできるのよ」
リズは見ていた報告書を膝に置き、口を開く。
「灰都アヌラの貴族とブラボラは繋がってる。だからこそ、ほとんどアヌラはブラボラの手が回ってるわ。自警団も表向きは市民を守るように見せかけて、仲間はブラボラの手下達よ」
その言葉を聞いてアーティは納得する。
「だからか。所々…帳簿があってなくてね。税収に歪みが出ている。つまり、灰都の役人ごと買収して”数字”をいじってるってことだ」
「なるほど、アヌラ全体がブラボラの配下ということか…」
ナギアの言葉に、2人は頷く。
「ええ……白銅商会は、ブラボラの資金源。アヌラのお金はここに集う。所謂”金庫”よ。依頼の金の流れも、人員の調整も、全部そこを通す」
ナギアが腕を組む。
「商会の裏の顔は”金庫番”。しかも、武器、薬、労働者__裏の商品を合法に見せかけるのが奴らの仕事」
アーティがすぐ重ねる。
リズは小さく笑う。
「表と裏をつなぐ架け橋……白銅商会そのものが”黒幕”ってわけね」
ナギアが前のめりになる。
「つまり___あそこを崩せば、裏社会も表社会も揺らぐ」
しかしリズが制止する。
「確かに、商会を潰せばブラボラに大打撃になる。でも怖いのは、ブラボラの参謀、ルッズ。ブラボラの特攻団、ガルダンよ。ブラボラ自体はそこまで大したやつじゃないけど、この2人が出てきたら少しまずい」
「それはどういうこと?リズ」
ナギアはリズに説明を求める。
【影の部屋】
リズは能力を使った…が特に周りは変わらない。
「リズ…何したの?」
アーティはリズに尋ねる。
「…ここからは、さらに聞かれたらまずいからね…。私の能力で、音が外に漏れないようにした…」
その言葉を聞いて、アーティも能力を使うと、周りに聞き耳を立てている人間が3人。
「なるほどね、味方だと思ってたけど。どうやら味方の中に敵がいるみたいだ…」
アーティは眼鏡を外し、深く息を吐いた。
ナギアはニヤリと笑う。
「そう。そんな悪い子には少し天罰を与えなきゃね」
ナギアが指をパチンと鳴らす。
「えっ、何をしたのナギア」
リズが尋ねる。
ナギアはにこりと笑う。
「ただ、ちょっと寝てもらってるだけだよ」
その笑顔に2人は背筋が凍る感覚を覚える。
(…普段のナギアとなんか違う…)
(……これが姐さんの裏の顔…)
ナギアは、空気が変わったことに気付き、いつも通りのテンションでリズに問う。
「それで…なんだったっけ?…あぁそうそう。2人がどうして要注意人物なのか説明してくれる?リズ」
「…あぁ…うん。えっと、参謀のルッズは魔法使いなの。しかも洗脳魔法が得意だから…真っ直ぐ挑んでも洗脳させられて負けてしまうわ。次にガルダンだけど、ガルダンは鉄壁のガードがある。まず、攻撃が入らない」
その言葉を聞いてアーティが考えを述べる。
「正面からやれば確実に潰される。……方法は一つ。内側から食い破るしかない。俺に良い策がある」
沈黙。
次の一手を考えるように、三人の視線が交わった。
いつも読んでくださって、本当にありがとうございます。
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