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10.現在のダンセーズ一家

「…何?」


その言葉がどこまでも冷たく、2人との心の距離が開いてしまったことを感じた。


「リズ…今まで本当にごめんなさい」


「私もリズ姉さまに色々と教えてもらったのに…出来損ないってバカにしてごめんなさい」


2人とも頭を下げる

それに続くようにオーキスも頭を下げる。


「俺を逃がしたことで、君が家を失うことになってしまい本当に申し訳ない」


3人に謝られ、ため息をこぼすリズ。


「別に気にしてない。それと家を失ったことで大切な仲間と出会えたからむしろ、感謝したい気持ちよ」


清々しい表情で答えるリズ。


「大切な仲間かぁ…リズが俺のことをそんな風に思っていたなんて」


「アーティ、あんたは違うから!ナギアだから」


「なんだと!」


揉める二人にナギアが笑って声をかける。


「仲いいね2人とも」


「仲良くない」


アーティとリズがハモり、またお互いにらみ合う。

ナギアが思い出したかようにマーズに声をかける。


「そういえば、さっきダンセーズ一家は帝都の王家の御用達ってリズが話していたけど、どうしてブラボラの手下になっているの?」


その言葉にマーズは大変言いにくそうに答える。


「……簡単な話。私たちダンセーズ一家は帝都の王家とのつながりを切られたのよ」


「えっ?そんな簡単に切られるものか?王家なんて伝統とか気にしそうなのに…」


アーティが予想外だと答えるとマーズも頷く。


「本当にそう。理由は他の組織と手を組んだから用済みって言われたとお父様が激怒していたわ。それもあって、暗殺一族であるダンセーズ一家の信用が下がって仕事の依頼も減ってしまって、それでもどんな手を使ってでも、お父様はお金を作れと私たちはブラボラ様の直属の部下にしたの…」


「なるほど~そんな理由があったなんて…」



ナギアは理由には納得するがこの後2人をどうしたらいいのかについて悩んだ。



ナギアはしばらく考え込み、目線を落とした。



二人をこのまま帰すのか


それとも捕らえて帝都に引き渡すのか



__どちらも容易ではない。



悩んでいるとリズがナギアに近寄る。


「ナギア、お願いがある」



その声音はいつになく真剣で、まっすぐナギアを見つめていた。




「___________」



リズのお願いに一同驚く。

しかし、ナギアはリズのまっすぐな眼差しから溢れる雫…彼女の優しさを理解して首を縦にうなづいた。







数日後_____



ナギア達が勝利しマーズとシズはなくなったと情報を回した。それに伴い、2人はオーキスの家がある海都へと去っていった。


「いいのか?リズ。散々言われたい放題だったのに、まさか生かして、婚約者と一緒に暮らせるようにするなんて」


アーティは去る馬車をみてリズに尋ねる。

あの後リズは、ナギアに対してしたお願い。


『マーズ、シズを灰都からの追放で許して欲しい。どうか…わがままなのは知ってる。でも…私は…大切な家族を…殺したくない…』


いつもクールなリズが、初めて静かに涙を流しながらナギアに頼んだこと_____


「それでもいい。マーズとシズはもうブラボラには戻れないし、戻らない。なら、ブラボラの手が届かない外で生きる道を作ってあげたいし…それに…」



リズは、幼き日のマーズとオーキスが婚約が決まり2人で仲慎ましく過ごしていた日々を思い出す。



「…殺し屋一族の割に意外と…優しんだな」





アーティが口を挟む。

リズは一瞬だけ目を伏せ、そして静かに言った。


「……あの時、家を捨てたのは自分の選択。今さら恨む気なんてない。むしろ、このまま放っておいたら、二人ともブラボラに潰されるのが目に見えてる。私はそんなの望んでいない」





「そうかよ」



アーティはつまらなさそうに話す。

ナギアはオーキスとマーズのやり取りをみて、本当に2人はお互いを大切に思っているのが伝わるような様子を思い出した。



(きっと…殺し屋一族だからこそ…諦めなければならない幸せを…リズはどうにかして叶えたかったんだろう…)




こうして、ナギア達は、黒金の舞姫ノアール・ダンセーズとの戦いを終え、リズの願いから婚約者のオーキスと2人が安全に灰都から出られるよう、街の裏ルートと協力者へ連絡を取り始めた。



リズは2人を乗せた馬車が見えなくなるまで

まっすぐに見つめていた。


あの日、別れてしまった二人の幸せを祈るように_____。











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