最年少総指揮艦 アルベルト・アレン
今日、俺はようやく長年の努力が認められ帝国の最年少総指揮艦になることができた。
ここまでの道のりは決して楽なものではなかった。
侯爵である父親に頼み込んだり、実家が公爵である母親に頼み込んだり、友好関係が広い姉に「何でもするから」と頼み込んだり、友達に頼み込んだり、とにかく俺は色んな人に頼み込んだ。
人にものを頼むというのは自分で何かするよりもめんどくさいということを俺は実感した。
俺は姉の要望を可能な限り叶えるという条件で姉にお願いをした聞いてもらっていた。
最初のうちはほっぺにキスとかデートとか簡単なものだが、次第にエスカレートしていきある時「ずっとお姉ちゃんのそばにいて」とお願いされた。
少し、いやかなりなんて答えるか迷ったので保留にしておいたら姉が実家で暴れて大変なことになった。
そんな大変な思いをしながら俺は晴れて第423遊撃艦隊の総指揮艦に抜擢された。
俺がここまでして軍人になったのには理由がある。
それは、働かなくていいから。別に軍人という職業が働かなくていいわけではない。
現在の帝国軍の遊撃部隊とは言わば体のいい左遷先、つまりやることなんてほとんどない。
やることと言ったら、帝国の辺境地帯をパトロールするくらい。
俺はそんな仕事を全て部下に丸投げにするためにこの役職ついた。
そんな夢のような役職を承るために俺は今皇帝陛下のお膝元である首都星、通称帝都バビロンに訪れていた。
「 アレン、皇帝陛下に決して無礼がないように、もし何かあったら私たちの首が飛ぶから」
「心配ないです父上、皇帝陛下には何度もあったことがあります。とても優しい方だったので父上の首だけで許してくれます」
「ははは、やっぱり最年少総指揮艦のいう冗談は違うな」
「・・・」
「え、冗談だよな?」
そんなやりとりを父親とやっているうちにようやく就任式が始まった。
「レーベル・レオンハルトはアルベルト・アレンが帝国軍第423遊撃艦隊総指揮艦の任に就くことをここに命ずる」
「承りました。陛下のご期待にお答えできるよう粉骨砕身の覚悟で任務を全ういたします」
堅苦しい式典を早々に終えた後は最年少総指揮艦の誕生を祝うパーティーが開かれた。
「アレン様この度の就任、心よりのお祝いを申し上げます」
「ありがとうございます」
「アレン殿、うちの娘との婚約などいかがだろうか」
「はは、まだ私には婚約は早いですよ」
「ご安心ください、うちの娘はアレン様よりも年下です。将来はきっと美しい娘になります」
「なおさら私にはもったいないですね」
(俺より年下って何歳だよ)
「ふ〜」
俺とコンタクトを持ちたいだけの貴族どもや、俺の父親の傘下の貴族たちとの会話はかなり疲れた。
(事あるごとに結婚を勧めてくんなよ、結婚したら俺の自堕落ライフ計画が台無しになるだろ)
「アレン、陛下がお呼びだ。どうやら二人で話したい事があるらしい。」
「わかりました父上」
「お呼びでしょうかレオンハルト陛下」
「君に任せる部隊についての話をしたい。率直に言おう君に与えられる艦隊は規模だけを言うなら遊撃部隊の中で最大のものになる。しかしだ、君の部下になる者たちはそのほとんどが下級貴族の令嬢や平民の女達になる」
?????
(え、なんで。そんな事されたら仕事丸投げできないじゃん)