逃避行
毎日投稿と言ってもなんか曖昧なまま進みそうなのでここいらで目標を立てます
10時までに作りますという目標を
少年は興味なさげに視線を逸らす。転校生のそれを受け流すかのように。それもそのはず、少年にとっては色白の少女よりも家のこと、弟たちのことだけが気がかりだった。
空がまだ青いうちに帰路に着く。雲一つない、健全すぎる空だ。深呼吸するだけで健康になりそうなほど清々しい日でも、僕にとっては関係ない。またいつも通り、多忙と堕落の狭間で眠るだけだ。僕は空を見上げる。いつもは息を吐いてばかりの口が、今度は息をのんだのだ。昔から空を見上げるのは好きだったほうだ。今日の雲はなんの形に似ているだとか、あの夕暮れは焼き芋みたいな色だとか。そんなどうでもいい連想に時間を費やす時がある。そんなときこそ、僕が僕である瞬間なんだ。
「おい、謝れよ。」と、若さの抜けきらないガラ悪い声が聞こえた。見上げていた目が正面を捉える。夢中で気づかなかったが、正面の制服を着崩した高校男児にぶつかってしまったらしい。「ごめん。」と僕は謝る。だがそれは彼の求めてた応対でなかったようで…
「あァん!?舐めてんのかこの野郎!!?」
と返されてしまった。こういう、嬉しいのか嫌なのかよく分からない日が苦手だ。
「シカトしてんじゃねェぞ!財布よこせや!!」
僕は相手からもらったパスが地面に落ちるのをただ眺めていた事を思い出した。ごめんなさいごめんなさいと繰り返しながら、カバンの中をまさぐる。ここで大ケガをおうより、五百何十円の損失の方が軽いと考えたんだ。僕の右手が財布を持ってカバンからでてきたその瞬間、彼はイラつきながら奪い取った。
「全ッ然入ってねェ。ムシャクシャする。一発殴らせろ。」
あまりの恐怖にそれを言われただけで目をつぶってしまった。僕はただ空を見ていただけなのに。僕はそれに憧れることすら許されないのだろうか?心臓に悪い時間がただ膨張していく。
「これ、君のじゃない?」
この声には聞き覚えがある。目に光が入ったとき、驚きのあまり「わっ」と情けない声を漏らし、身じろいでしまった。羞恥心を感じつつ口に手を当てる。正面にいたのはぼーっとしている高校男児と、僕の財布をこちらに差し出してきた転校生だった。
「あ、ありがとう。」
「どういたしまして。」とかすかながらも芯のある声が聞こえた。
彼は直立不動で、立ちながら眠っているような状態だった。