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いちがん ーBelieveー  作者: とらすけ
七章 面影村後記

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 最終話・怒りの矛先


 最終話 怒りの矛先



「馬鹿な 信じられん あれだけの魔獣を…… 」


 ヘルシャフトの一人が青ざめて逃げ出そうとするが、その目の前にいつの間にか剣を構えたコッコが立っていた。コッコはにやりと笑う。


「残念だが、俺からはもう逃げられない 」


 ヘルシャフトは剣を抜き斬りかかるが、コッコはあっさりとかわし二刀の短剣を目に見えない程の速さで振る。ヘルシャフトは断末魔の声を上げると血飛沫をあげて倒れた。


「貴様ぁ 」


 もう一人のヘルシャフトがコッコの後ろから斬りかかるが、これもコッコはしゃがんで余裕でかわす。そこへ、イノがヘルシャフト目掛けてロートホリゾントの引鉄を引く。イノの銃弾を何発も浴び、このヘルシャフトも血飛沫をあげて倒れた。


「その一人は捕まえてくださいっ 」


 ミイの大声で、残った一人に斬りかかろうとしていたユーナが寸前で剣を止める。


「ミイさん どうしたの? 」


 走ってきたミイとケイは、マゴットに取り押さえられたヘルシャフトを見て腰の剣を指差す。


「その剣で”ダム”を創りだしていました 」


「何だってっ! 」


「剣を取り上げて、どういうことなのか 聞いてみましょう 」


 全員が押さえつけられたヘルシャフトの持つ虹色に輝く剣の方にに目を奪われた瞬間、グワッという悲鳴と共に何かが地面を転がっていった。

 よく見るとそれは今捕らえていたヘルシャフトの頭だった。首から血を噴出し、ゴロゴロと転がっていく。


「これは、見えない敵 みんな気を付けろっ 」 」


 すぐさま事態を把握したイノの言葉で、瞬時に全員が戦闘態勢をとり周囲を警戒する。ゴンタも耳を立て気配を探ろうとしていた。


「怖い怖い みんな、反応早すぎですよ ついでに一人位始末しておこうと思ったんですがね 」


 かなり離れた場所から声がする。イノは染料の入った小袋を声の辺りに投げつけ、ロートホリゾントでそれを撃つ。染料がまわりにばら撒かれるが、声はすでに違う場所から聞こえてきた。


「そんな汚いものを投げないでくださいよ そんな事しなくても、あなたたちに見えるようにしますから 」


 そして、突然、白い甲冑に身を包んだ小柄なヘルシャフトが現れた。それは、今までいたヘルシャフトとはまるでレベルの違う威圧感を漂わせており、そこにいる全員がこのヘルシャフトは神将であると認識した。

 そして、このヘルシャフトの持つ輝く剣からは、今まさに首を切り落とした血が滴り落ちていた。


「僕は極光のライトと云います そこの赤い銃を持つあなたと、大きな盾を持つあなた、それにその小動物には以前お会いしましたね 」


「お前は、あの時の…… 」


「あぁ、そうだった その小さな男と赤いバトルスーツの女、それに黒いスーツの上品そうな女性の一人にもお会いした事がありますね 」


「えっ 」


 全然、覚えがない三人は驚く。


「どこで覗いてたのかしらないけど、ストーカーみたいな奴ね それに、ミイさんが上品な女性なのはわかるけど、なんで私は女なのよ 」


 ユーナが変なところに拘る。


「それについては主観の相違だと思うぞ 気にするな 」


 イノが小声で言う。すると、マゴットが、


「まあしかし、客観的にみてもそいつの言うことは正しいかもな 」


 と、またも余計な一言を言う。イノとコッコが慌ててユーナを抑えた。


「でも、本当に、何処で見られているか分からないなんて気持ち悪いですね 」


 ユーナとミイに嫌悪の視線で見つめられ、それまで余裕のあったライトが狼狽する。


「酷いな そんな言い方をされるとは心外だ 」


 ライトは激しくショックを受けたという顔で一同を睨みつけた。


「それにあんた こいつは仲間じゃないのか 」


 イノがようやく話を戻せたというように、首を切られ倒れているヘルシャフトを指差し、ライトに詰め寄る。


「仲間? そんな奴どうでもいいさ 僕が必要だったのは、この剣だけだから…… 」


 言いながらライトは虹色に輝く剣を振りかざして見せる。えっと一同が慌てて倒れているヘルシャフトを見ると、いつの間にか腰にあった剣が無くなっていた。


「僕の部下のヘンズレーが自分の剣を貸したと言っていたからね 少し気になって様子を見に来たんだよ 」


「あんた 剣のほうが大切だと言うのか 」


「当然だろう これは”レインボーデーモン”という貴重な剣だしね 」


 ライトが剣を光にかざすと、虹色の輝きがさらに増す。確かに普通の剣とは一線を画する輝きとオーラを纏っていた。


「それにこの剣を使いながら、こんな失態を犯す様じゃ、きちんと処分しないと示しがつかないからね 」


「処分だと 」


「事後処理は大切だろ 」


 全員が、ライトのこの態度に怒りが込み上げてくる。


「ユーナ 無茶するなよ 」


 ユーナがローゼパイチェに手をかけたのに気付き、イノが小声で言う。


「わかっているわよ あいつ、何するか解からない怖さを感じる 」


 そう言いながらもユーナは気付かれないように今度は背中のロケット砲を操作する。そして、上空に向かってロケット弾を撃ち出した。

 何だ、と、ライトが上空に気を取られた瞬間、イノがロートホリゾントの引鉄を引き、ミイとケイがヨーヨーをスローしていた。が、ライトの姿はイノたちの視界から瞬時に消える。


「さすがに僕も一人で君たちと戦う気はないよ あのギルモアとバレットを追い詰めて、メイスンに大怪我を負わせた奴らだからね 今日は剣も回収できたしもう帰るね 」


 姿の見えないライトの声が響く。


「そうそう、いい事教えてあげるから 君たちも早く帰って準備したほうがいいよ 」


 ゴンタが耳を立て、声の位置からライトのいる場所を掴もうとするが移動しながら話しているようで、その場所を特定することが出来ないようだった。


「今度、ハローの中に取り残されているライディーンという君たちの集落を滅ぼすことにしたんだ 大人しくしていれば別に放っておいたけどね、良からぬものを研究しているようだから消えてもらう事にした…… 」


 だんだんと遠くへ離れていくようで、ライトの声が小さくなっていく。


「守りたいなら、早急になんとかすることだね、時間はあまり無いよ ふふっ…… 」


 イノたちが呆然と立ち尽くすなか、それきりライトの声は聞こえなくなった。一同は、顔を見合わせると、肩を竦める以外なかった。

 ライトの最後のあざ笑うような笑い声が、一同の耳に残り消えなかった。


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