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第三章 悲報

 ジミーが、モトクロスのレースに復活する話を聞いてから早一年、時代はSNSの時代で活躍している情報は入ってきていた。

 彼は、復帰早々いきなりの活躍で、本年度のチャンピオン争いをしていた。

 今日は、全日本モトクロス選手の最終戦!

 しかも、会場は俺の地元のサーキットでおこなわれる。

 だが、彼のこと応援はしているけれど、俺はレースの世界から退いた人間。

 そんな俺は、日曜日も営業しているので仕事を優先して家で寝ていた。

 夕方ごろ目が覚め、そろそろ結果でてるかなと思い、テレビをつける。


『速報です。本日、全日本モトクロス選手権の最終戦が、ここ徳島県、美馬モーターランドにておこなわれたのですが、ジミー選手がレース中の事故によりお亡くなりになりました』

『即死でした。事故の原因は・・・』


 ・・・・・


「嘘だろ・・・」


 それ以外の言葉がでなかった。


 後日、彼の告別式がおこなわれたのだが、レース関係者、夜街関係者、友達等で俺はこれだけ大きいな告別式を初めてみた。

 俺とジミーは個人的には深い関係だったが、誰も深い関係だったとは知らない・・・

 でしゃばる訳にいかず、俺は式場の後ろの端で、


 “ジミーよっ、お前は好きなことをしながら死んだ、最高にかっこいいよ!俺は絶対泣かんし、これで最後な。墓参りなんぞ行かんからな、ほなの・・・”


 心の中でそういいながら、そっと彼を見送った。


 それから数ヶ月後・・・


 “カラ~ン”


「いらっしゃいませ!あっ、ご無沙汰しております」

『その節はお忙しい中、ジミーを見送りにきていただきありがとうございます』


 営業中に、彼の彼女であるジュリアがきた。


「その節はなんと言っていいか分かりませんが、大丈夫ですか?」


 俺はこんなときに、なんて声を掛けていいのか分からず戸惑ってしまう。


『大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます』

『ただ・・・龍司さんには本当のことをいいたくて』

『私が悪いから誰にもいえなくて・・・』


 泣きながら、彼女は語りだした。


『実は・・・ジミーが一度、レースを辞めるといったとき凄く嬉しかった』

『それからの日々、私は幸せだったんです』

『けど、またレースに復活するとなって嫌だった』


 この言葉を聞いた俺は、ジミーが彼女を紹介してくれたとき、


「ジミーのこと頼みます」


 そう俺が言ったときに、彼女の心の中に、なにか潜めているような気がしたのはこのことだったのかと思う。


『レースする彼を応援できなかった私は、復帰するレースに向けて出発する前に、別れたんです』

「まじで!」


 俺は、彼が長いこと彼女と交際していて、彼から紹介してもらうまで彼女とラブラブだったことを聞いていたのでビックリする。


『だけど、離れて気づいたの・・・』

『やっぱり彼のことが大好きで、離れられないと、だから彼が事故をする前日に、彼に会ったの』

『すると、彼が“夢叶えられたら結婚しよう”っていってくれたん』

『すごく嬉しかった』

『それでね・・・レース当日、彼を見送ったのよ』

『レースする姿、私は近くで応援できないから、彼が帰ってくるのを待ってた』

『そしたら、私に待っていたのは結婚式でなくて、葬式だって・・・』


 俺は、泣かないと決めていたのに、泣いてしまった。


 “レースをしていたら怪我をするのは覚悟の上”

 “また、運が悪く死ぬこともありえる”

 “他のスポーツでもありえることである”

 “それをしている人は、好きなことして死ぬならと、覚悟を決めている”


 だから、俺は泣かなかった。

 だが、彼女の話を聞いて裏でこんなドラマがあったと聴き、また前日のできごとの次の日だったと・・・

 この話を聞いて俺は、お店にご来店してくださるお客様や、最後にあった人に“今日が最後かも”と思いながら生きていくようになった。


『話を聞いてくれてありがとうございます。話したことで少し楽になりました』

「いや、聞くことしかできず申し訳ない」

「ただ、これだけは言わせて」

『なんでしょうか?』

「こんなこと言える立場でないけど、レースで死んで良かったと思い!ジミーは自分の大好きなことをして死んだ」

「これが、ほんまにただの交通事故だったり病気だったらどう?」

「ジュリアさんには申し訳ないけど、俺はそっちの方が辛い」

「生きていたら気持ち伝わらんけど、彼はジュリアさんの気持ち今なら届いているし、それに、いつまでも引きずるなと天国でいよるよ!知らんけど」

『知らんのかいっ!』


 泣いていた彼女も少し笑顔になり。


『はい!ジミーのことは一生忘れませんが、前を向いて私、幸せに生きます』


 そう決めたジュリアは、人一倍、生きることに強くなったと思う。


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