再会と出会い
再開と出会い
目が覚めると、俺は茂みの中に仰向けで寝転んでいた。
「う、うーん」
軽いうめき声をあげながら、俺は上半身を起こした。
「ここは、何処だ?」
まだクラクラする頭を右手で抑えながら、どうして俺がここにるのか思い出してみた。
「確か、俺は裁判所に、いや冥道にいた。あの赤い穴・・・」
ようやく思い出した。俺は、幽体のままこの世界に迷い込んだ魂を回収しに来たんだ。
「どうやら、人間界と植物はそんなに変わらないようだな」
辺りを見回すと、ここはどうやら森の中みたいだった。地面が傾いているので、恐らく山の中腹だ。危険はあるかもしれないが少なくとも砂漠や氷原よりは遥かにましな場所だったので俺は胸をなでおろした。
「痛っ」
枝の先が俺の頬を引っ掻いたのだ。その事を妙だと思った俺は、自分の顔を指先でなぞった。
「か、仮面がない?」
どうやら、この世界に来る途中で骸骨の仮面を落としてしまったようだ。そういえば、鎌もナップザックも手に持っていない。全部落としてしまったのだ。すぐ近くにあるといいのだが。祈るように茂みからはい出ると、目の前に鎌とナップザックが落ちていた。
「ああ、助かった」
こいつが無かったら、完全に途方に暮れていただろう。残念ながら仮面は見当たらなかったが、この二つに比べたらさほど重要でもない。壊したり無くしたらまた支給されるし。
ナップザックは一応ローブの上からも背負えるようになっていたが、どうも肩ベルトのおさまりが良くなかった。俺は黒いローブを畳んでナップザックに仕舞ってから背負いなおした。
死神の制服はかなり自由度が高く、ローブの下は個々人の好きに決められる。大抵の場合は動きやすいラフな格好で、俺も明るい茶色の長袖のシャツにくすんだ緑色のズボンをはいていた。ベルトは好きではないので、ウエストのサイズを調整してずりおちないようにしている。
どこかから山鳥の鳴き声が聞こえる。それに、俺が今立っている場所は幅が60センチ程度のけもの道だ。姿は見えないがどうやら動物もそんなに変わらないようだ。
「人間は、いるのかな?」
ナップザックの中には三日分の保存食しかなかった。後は釣りの道具やナイフが入っているので、自力で何とかしろということらしい。村か町さえあれば、食料は遥かに容易に手に入る。
「まずは森を抜けないとな」
地上を悠長にうろついてる時間はない。空を飛んで辺りを見回そうか。
「きゃああああっ!」
突然の悲鳴に、飛び立とうとした俺はバランスをくずしてつんのめった。
「っ、とっと・・・」
再び入った茂みを突き抜けて、俺は別の道に飛び出した。さっきのけもの道の何倍もの道幅がある林道だ。山の形をなぞっているのか道が大きく湾曲してて木々が邪魔で見えなくなっている向こう側から、少女が走って来る。
「いやー! 助けてーっ!」
さっきの悲鳴は、どうやら彼女のようだった。彼女の後ろから、ガラの悪そうな男が数人続いて走ってきた。男たちは全員ナイフや剣を手にしており、どう見ても山賊が少女を襲っているようにしか思えない。
黒い半そでに短パンの少女は、何故か黒いリュックサックらしきものを背負ったまま走っていた。少しでも身軽にする為に捨てた方がいいと思うのだが、そんなに大事な物なのだろうか?
「この世界にも、人間はいるようだな」
死神は、人間界の事件や災害等に首を突っ込んではいけない決まりだった。俺だって、陰惨な事件の被害者達が殺されるのを空から黙って見下ろしていた事は何度もある。
もっとも、いつもの人間界とは違う世界だからここで俺が関わるのは禁止されてはいない。しかし、長年の死神稼業で身についた習慣はそう簡単には変えられない。
「そこの方、助けて下さい!」
そう、だから少女が助けを求めて来たからといって・・・。
「えっ、俺が見えるの?」
黒い短髪に黒い目をした少女は、俺にすがり付くことで質問を肯定していた。
「お願いです、助けて下さい」
山賊らしき連中は、俺たちを半円形に囲んで切っ先を向けた。
「やいてめえ、その娘を渡しやがれ!」
「そんな鎌で俺たちに勝てると思ってんのか?」
うん、完全に俺が見えているね。それに言葉も通じるみたいだ。ため息を一つついた俺は、大鎌を構えて少女を後方に突き飛ばした。
「危ないから、そこで伏せてい・・・」
全部言い終わる前に、山賊の一人が切りかかってきた。不意打ちなら、俺を倒せるとでも思ったのだろうか。
「甘い!」
これでも俺は、死神に義務付けられた素振りの日課と週一の訓練場通いをサボったことがない。不真面目な俺は教官に目を付けられてて、休むに休めないからだが。
俺はまるでバトントワラーのように大鎌を軽快に回転させると、高速回転させた切っ先の軌跡を山賊の動きに重ね合わせた。
「ぎゃあ!」
山賊の両肘から先が、剣を掴んだまま弾き飛ばされた。
「まだだ!」
大鎌を構えなおすと、俺は山賊の胸を切り裂いた。いつもの仕事の時は鎌の先を首に刺して魂を身体から切り離すだけだが、今は本気で戦わないと命が危ない。死神だって、刃物で切られたら死ぬのだ。
山賊たちも、俺が只者ではないと察して一斉に攻撃するつもりなのか互いに目配せした。しかし、その程度で俺とあいつらの実力差は埋まらなかった。
そもそも宙に浮いて大鎌を振り回す俺たち死神は、重力遮断や慣性制御が自分とオーダーメイドされた鎌と数キログラムまでの持ち物に対して機能しているのだ。常識ではありえない鎌さばきを初見で見切れる人間は、そうはいない。
まず足払いをして右端の男の脛を切り裂くと、そのまま振り上げて隣の男の腰に鎌を突き刺した。これで半包囲が崩れたので、鎌を引き抜きながら右へと突進した。
目標が急に目の前からいなくなったので、残り四人の山賊は剣を振り下ろすのを慌てて止めようとした。その躊躇を見逃さず、俺は三人目の首をはねた。弾け飛んだ首が当たった四人目が驚いている瞬間に、背中に鎌を突き刺す。
あっという間に三人が死に一人が足を失って立てなくなったのを見て、残る二人は恐慌状態に落ち入って闇雲に剣を振り回しはじめた。そんな剣が当たる筈もなく、二人まとめて首をはねた。
最初に足を切られた山賊の方を振り返ると、よっぽどショックが強かったのかそれとも倒れた時に頭の打ちどころが悪かったのか、既に息絶えていた。
「まあ、ざっとこんなものだ」
何度も人間を殺した事はあるが、切り合ったのは初めてだった。そんなに強くない相手で腕試しが出来たのは、むしろ幸運だったかもしれない。
今回はただ鎌を振り回しただけで、奥の手は使わなかったとしてもだ。
後ろに気配を感じて振り向くと、地面に伏せていた少女が立ち上がろうとしていた。
「どうやら、怪我はないようだな。山賊の死体は俺が埋めとくから、お家にでも帰って・・・」
そこまで言って、俺は大変な事に気が付いた。村や町の場所は、彼女に聞けばいいじゃないか。
「おい、お前に聞きたい事がある」
俺が声を掛けたが、少女は何故かあさっての方向を見ていた。
「なんだ?」
彼女の視線を追った俺は、背筋が凍りついた。何人かの山賊たちの死体から、幽体が離れてきたのだ。
「しまった、忘れてた」
いつもの習慣で首をはねたから、魂が肉体から離れたのだ。首以外の場所を切られた死体からは幽体が出ないのが、不幸中の幸いか。
しかし不思議なのは、少女の反応だ。明らかに幽体が見えている。俺の姿が山賊たちにも見えていたから、この世界では死神や幽体が見えるのだろうか?
「あれ・・・」
少女が今度は空を指差した。俺も見上げると、今度は何かが飛んで来た。
「まさか、あいつは?」
こいつはヤバい。俺は慌てて鎌を持っていない方の手で少女の手を引いて、茂みの中へと飛び込んだ。
「そりゃ、こっちの世界にも当然いるよな」
おそらくあいつは、この世界の死神だろう。
同じ死神とはいえ、あいつが無断でやってきた俺に友好的だという保証はない。今は隠れて様子を見るべきだ。
茂みの中で息をひそめた俺は、事情が呑み込めない少女が茂みから出ないように彼女を抱きしめて口にも手を当てた。
山賊たちの中に舞い降りた死神は、俺たちとは全然違う格好をしていた。全身を騎士のような銀色の鎧で包んでいたのだ。兜には鳥が翼を広げたような飾りがあり、背中には赤いマントを羽織っていた。死神だと辛うじて判ったのは、あいつも骸骨の仮面をしていたからだ。その仮面も、鎧に合わせてあつらえたのか銀色だった。
「これは、どういう事よ?」
首を傾げた死神の声に、俺は驚いた。女の声だったのだ。顔も骸骨の仮面に隠されてて見えなかったが、よく見ると確かに彼女のボディラインは鎧の上からでも判る程に細かった。あまり筋力があるようには見えない。
西洋の鎧の重量が何キロなのかは知らないが、恐らく俺の鎌みたいに重さを感じない仕組みでもあるのだろう。
「最近、不可解な事ばかりあるわ」
そう言って、彼女は腰の剣を引き抜いた。刀身が鏡のように周囲を映し込んでいるその剣は、山賊たちの剣より遥かに出来のいい剣なのが遠目でみても良く判った。
彼女は恐らく、地縛霊の浄化をしようとしているのだろう。予定にない事故死や予定より早い急死で地縛霊になった魂を、俺もたまに鎌で浄化している。首を切られなかった山賊が彼女に蹴り転がされると、死体と同じ姿だが色があせて灰色で半透明の幽体が分離されてそこに残った。
「この頃どうも予定外の死者が増えてるわね」
地縛霊達が彼女の剣に切られると、無数の光の粒に分離して消滅した。
「余計な仕事のせいで遅れちゃうじゃない」
女の死神は、幽体離脱して空へと浮いて行った方の魂を追いかけて飛び去った。
「よし、もう大丈夫だぞ」
少女から手を放した俺は、茂みから恐る恐ると鎌で枝を掻き分けて出て来た。
「それで、さっきの話の続きなんだが」
俺が振り返ると、今度は少女の方から抱きついて来た。
「おっなんだ?
何が起こったのか判らなかった俺に、少女は更に思ってもみなかったことを言い出した。
「ご主人様ぁ!!」
「ええっ?」
何が何だか全く判らないが言葉を失っていると、何か足音らしいのが曲がり角の向こうから聞こえてきた。人間だけじゃない、馬の蹄のような足音もだ。
「山賊の仲間か?」
緊張して、鎌を持つ手に力がこもった。少女にはしっしと手を振って追い払おうとしたが、彼女は俺の背中に寄り添って離れようとしない。
「本当に、どうしたんだ?」
仕方がないので、彼女を守りながら迎え撃とうとする。しかし、様子がどうもおかしい。山賊の仲間にしては、足音がゆっくりしていた。
「これは、ただの通りすがりかな?」
だとすると、鎌を向けると余計な挑発をする事になる。しかも人間には見えない事が前提の大鎌には、カバーも入れ物もない。かと言って山賊の可能性もまだあるから、鎌を手放すべきではない。どうすべきか迷ったが、取りあえず切っ先を下に向けて出方を伺うことにした。
俺たちの前に現れたのは、五人の男女だった。二頭の馬に乗っているのが騎士らしい甲冑を着た男と淡いオレンジ色のゆったりとしたローブを着た女性だった。
男は、兜というよりラグビーのヘッドギアみたいな形の金属製の防具をかぶり、後頭部の黒髪が露出していた。甲冑の胸の部分には、何か幾何学的な模様が刻まれていた。
軽く波打った金の長髪の女は、木が生えているようにも人が両腕を広げているようにも見える奇妙なエンブレムが青く輝いているやけに横幅が広いオレンジの帽子をかぶっていた。
徒歩の三人は、二人の従者だろうか。二人は皮製の鎧を着た軽装で、それぞれが槍と短剣を手にしていた。最後の一人は、俺の死神のローブに似た青いローブを着て飾りのない簡素な木の杖を地面についていた。フードを顔の上半分が見えない程に深く被って口の周りに茶色い髭を生やしている。
「うわっ! これは何事よっ?」
先頭を歩いていた槍の女が、山賊たちの死体に面食らった。短剣を持った小柄な従者が、俺たちを指差して騎士と何か話している。杖を持った男が、俺に向かって歩きながらたずねた。
「この死体は、お前たちの仕業か?」
これは、どう答えるべきだろうか。この世界の法律なんて、勿論知らない。正当防衛というのが無かったら、俺は犯罪者だ。どう答えるべきか一瞬迷ったが、正直に説明して相手の反応を窺ってみるか。
「先に山賊がこの少女に襲ってきたから、俺の鎌で切り殺したんだ」
俺の背後ですがり付いている少女も、うんうん言って何度も首を縦に振った。
「鎌でだと?」
男は、山賊たちの切断面と俺の鎌を交互に見比べた。そして、杖を大きく振りかざしながら振り向いた。
「おーい! 俺たちの計画は、いきなり第一段階で終わってしまったようだぞっ!」
何、計画だって?
槍の女が、死体を器用に飛び越えて俺に近づいてきた。
「あたし達は、山賊たちを退治しに来たのよ。まさか、先に倒されてるなんて思わなかったわ」
死体の前でしゃがんでいる小柄な従者が、短剣で死体をつついて死亡を確認しながら口を尖らせた。
「でも、どうすんだよ。山賊を生け捕りにしてアジトを聞き出そうって作戦が台無しだよ」
おや、どうやら小柄なんじゃなくてまだ子供みたいだ。声が子供っぽい高さだ。
作戦とか言っているが、もしかして俺は結果的にこいつらの邪魔をしてしまったのか?
「仕方ありませんわ。あの方たちも山賊と戦うしかなかったんですから」
馬上の女性が、おっとりとした口調で少年をなだめた。
「こうなったら、次に近い山賊の目撃情報があった場所にいくしかない」
ローブの男が遠くの山を杖で示した。どう見ても日帰りは無理そうなのが次に近い場所なのか。短剣の少年がうんざりした顔をしている。
「一度ふもとの町で野営の準備をして、朝一で再出発しないと」
そうか、それは大変だな。て、町に行くのか? このチャンスを逃さないと。
「町までついて行っていいか? 実は道に迷ってたんだ」
突然の提案に、全員俺の事を怪しんでる目を露骨にした。山賊でないとはいえ、怪しい奴には変わりがないから仕方がない。この世界の死神が違う格好だったのが不幸中の幸いだ。
「そういや、まだ自己紹介してなかったよな。俺の名前は紅灼。ベニヤって呼んでくれ」
槍を持った女が、俺の背後にいる少女の方を向いて指差した。
「そっちの連れは何て名前なのよ?」
えっ、連れだって? そうか、俺たちが仲間に見えたのか。
「ああ、こいつは俺の連れなんかじゃなく・・・」
「ご主人様!」
そういえば、こいつはさっきから俺の事をそう呼んでいたんだった。
「なんだね? お前たちは主従関係なのか?」
青いローブの男の問いかけに、俺は大きく首を横に振った。
「いやいや、俺は知らないぞ」
「あたしを忘れたって言うんですか? ご主人様!」
突然、少女の黒いリュックが大きく膨らんだ。いや、あれはリュックじゃなかった。大きな鳥の翼が、畳まれていたのだ。
「なんだこりゃ?」
その黒い翼は、少女の背中から生えていた。あの紫色の羽根の先は、どこかで見たような気がするが・・・。
「あれ? もしかして、お前クローラなのか?」
「やっと思い出してくれたんですね。ご主人様」
羽根をまた畳んだクローラが、大喜びで俺に抱き着いた。いや、待て。なんであのカラスが人間の姿になったんだ? しかも、腕があるのに羽根もあるとか体の部位の数も違ってるし。
俺の姿も人間に見えるようになったし、どうやらこの世界は俺たちの常識が通用しないらしい。
山賊退治の一行は、唖然とした顔でクローラを見ている。そりゃそうだろう。いくら世界の常識が違うといっても、流石にこれはないだろう。
「あなたは翼人だったのですね」
て、ありなのかよ。馬上のローブの女性の言葉には、俺の方が驚いた。
「しかし、黒い羽根の翼人は王都でも見た事がない。こんな目立つ少女を、お前は今まで忘れていたのかね?」
何か、もっと他に聞くべきことがあるだろうと突っ込みたくなる質問だな。多分、俺が嘘つきかどうかを探っているんだろう。
「うんとね、ご主人様と最後に会ったのは、あたしがこの位の大きさだったの」
クローラが、両手でカラス程度の大きさの輪郭線を空中に描いた。
「なんだ、赤ん坊の時に会ったきりなら忘れててもしゃあないか。て、それを憶えてたお前の方がすげえよ」
短剣の少年が、クローラの中途半端な説明を聞いて勝手に納得してくれた。
「それでね、空からご主人様を見つけて地上に下りたらあいつらと鉢合わせしたの。羽根を広げようとするたびに切りかかろうとするから、走って逃げるしかなくって大変だったのよ」
なるほど、だから俺の方に向かって走ってきたのか。
「でも、そんなに会っていなかったのに、どうしてご主人様なの?」
「だって、ご主人様はご主人様なんだもん。あたしの命の恩人なんだから」
え? 命の恩人って何の事だ? 俺にもわからないぞ。
「病気で死にそうなあたしを、ご主人様が買い取って看病してくれたんです」
ああ、そういえばそうだった。死神は三年間働けば使い魔が支給されるが、そんなに待てなかった俺は初任給で購入する事にしたんだ。ところがカラスって意外に高くって、死にかけた雛しか買えなかったんだ。クローラが助かる見込みは殆どなくて迷ったが、只同然の値段に目が眩んで買ってしまった。辛抱強く看病した俺は賭けに勝ってカラスを同期の中で最初に手に入れたのだ。
「買い取っただって?」
杖の男が驚いた顔をしている。しまった、今のクローラは人の姿だった。これじゃ俺が人身売買に手を出したみたいじゃないか。
少年が短剣の先を俺に向けながら馬上の女性に話しかけた。
「なあ、こいつも悪い奴なのか?」
「いえ、彼女が赤ん坊の頃なら。翼人の売買は合法でした。それに彼は助ける為に彼女を買ったみたいですしね」
どうやら、俺とクローラの関係を好意的に解釈してくれたらしい。
甲冑姿の男が、馬に乗ったまま俺の前まで近づいた。稼働式の兜の面を上の方に開いているので、表情もよく見える。茶色い目をしている二十歳前後の若者だ。精悍だが陽気な顔つきをしている。
「まあいいんじゃないか、町に連れてっても。ただし、お前が何かやらかしたら、俺が切り捨てるからな。わかったか?」
「あ、ああ。それでいいけど」
今度は俺の方が違和感を感じた。
「何というか、言葉使いが意外にカジュアルだな。このせか・・・この国の騎士ってみんなそうなのか?」
俺の言葉に、杖の男が下を向いて額に手を当てた。なんか悪い事聞いたかな?
「だから、黙ってろと言うのに」
「仕方がありません。コートが勇者になるのは、これからなのですから。それに、勇者は騎士とは違います」
ローブの女性が、甲冑姿の男に向かって馬を進めた。いや、まてよ。大事な事を彼女は言ってなかったか?
「コートって、名前かい? それに勇者とか言ってたが何なんだ?」
まさかコートって木場光都と関係あるんじゃないだろうな。
「そうでした。まだ自己紹介をしてませんでしたわね」
ローブの女性は、そう言って俺たちに向かって微笑んだ。




