第26話 美波の事情(後編)
「結奈は優斗先輩ですか!」
彼女は一瞬驚いた表情を見せたが、諦めたように肩を落とし男性の姿へと変えた。その姿は正真正銘……「優斗先輩」
「良く分かったね。容姿模写、Aランクのスキルだよ。見破ったという事は外観真贋のスキル持ちがいるのかな」
思わず声を上げてしまいそうになるが言葉を飲み込みんで平静を保った。「そうかもしれませんね」とだけ返す。
もしかしてアイソレイトで得たひなつのスキルが外観真贋なのだろうか。
「黙っていてもらえないか」
先輩をずっと探している美波先輩を思うと黙ってはいられない。直ぐに駆け出したい衝動に駆られるが、容姿を騙してまで近くで隠れているということは何かがあるのだろう。
「事情を教えてもらえないでしょうか」
「ちょっと待っててくれ」
カウンターで料理を作り始める優斗、作り置きの食べ物と共に大量の料理がひなつたちのテーブルに置かれていく。「みるるくんと話があるからちょっと待っててもらっていいかな」と言葉を添えて。
「先輩……」
「今日は閉店かな」。扉に掛かるプレートを裏返すと隣に座った。
「一体なんでこんなところにいるんですか。美波先輩がずっと探してましたよ」
「実は……」、優斗先輩は語り始めた。
この町に防彩高校から飛ばされたのは4人、男子剣道部員が2人と優斗先輩と美波先輩。剣道部のふたりは自ら軍部に志願し、美波先輩は宿屋に必須のスキルを持っていたことから宿の仕事に就いた。
優斗先輩は容姿模写というAランクスキルを持っていたことから軍部の諜報員を強制されたが、他国を回ることになるので美波先輩と一緒にいられなくなる事実を知ってひとりで逃げたそうだ。
「逃げたと言っても本気で逃げた訳じゃない。自分のレベルを上げて美波と一緒にこの町を出ようと思ってるんだ!」
「ああ、それで昼間は森でレベルを上げて夜に彼女を見守っていたんですね」
「そういうことだ。見つかれば軍部に強制連行されかねない。それでも僕は美波の傍にいたいんだ」
「|。・゜゜ ‘゜(*/□\*) ‘゜゜゜・。《大泣き》」
「ひなつ……いつからそこに……」
「優斗先輩殿の声が大きいからまる聞こえでござる」
いつのまにか僕の後ろで一緒に話しを聞いていた。あれ? あんこが聞こえたって……。
「あんこは話しが聞こえたの?」
「ミミ殿のスキルで教えてもらってでござる。便利でござるな」
「ああ、拈華微笑か」
「みるるさん、あんこさんやひなつさんも心配していますしなんとかなりませんか」
なんとか……。僕が出来るとすれば表示詐称スキルを使って優斗先輩のスキルを書き換えることだけ。しかし使うという事はこのことを知られることにもなる。でもふたりのことを考えると……
「みるるくん、君たちは一体何者なんだ。美波からは男子剣道部で最弱と聞いていたが」
「僕が出来ることはひとつだけです。優斗先輩は容姿模写のスキル持ちって言っていましたよね」
「ああ、自分のレベルより低い者へ姿を変える事が出来るスキルだ」
優斗先輩の秘密を僕は知った。それが広まったら困る以上、僕の秘密を口外することは無いだろう。なによりふたりを放っては置けない。
「書き換えます!」
「そんなことが出来るのか」
「はい、実際にスキルが変わるわけではないのですがミリオンはごまかせます」
優斗先輩のスキルを書き換えた。新しいスキルは『家庭料理』、料理上手な優斗先輩にもってこいだと思う。「作った家庭料理の味が1ランクアップするスキルということで」
「それは良いでござるな。優斗先輩殿の料理は美味しいでござるからな、バレないでござるよ」
「これでミリオンから逃げなくてもいいんだな……」
優斗先輩の目には涙が溢れていた。手に持ったコップにポトリ、水を飲んで「これしょっぱいなぁ」と喜んでくれた。
「優斗先輩さん、美波先輩さんのために頑張らないといけませんね。キレイな人だから早く迎えに行ってあげないと誰かに盗られちゃいますよぉ」
「君は小さいのにませてるなぁ。大丈夫だ、必死にレベルを上げてあと3つになったら直ぐにでも迎えに行くよ」
「応援しています。僕たちは明日にはこの町を発ちますので頑張ってください」
スッキリした気持ちだった。彼女が出来たことのない僕にとっては羨ましかったけど、先輩達には幸せになってもらいたい。一葉……一葉はどうしてるんだろう。
「みるるくん」
優斗先輩の声に振り返る。
『鍵の譲渡が行われました。あなたは現在3本の鍵を所持しています』
「先輩……これは……」
「僕からのお礼さ。もともと必要がないものだし君が持っていた方がいいと思うんだ」
僕たちは宿屋に戻った。お風呂でひとやすみして気力に体力に回復させぐっすりと眠った。
「美波先輩、ありがとうございました。またいつか遊びに来ます」
「うん。きっとまた来てね。待ってるから」
「美波先輩殿、みるる殿に聞いたでござる。優斗先輩殿をどこかで見つけたら帰るように言っておくでござる」
笑顔……美波先輩は笑顔だった。「大丈夫よ、私はね近くにいるような気がするの。いつかきっと……きっと迎えに来てくれる予感があるの」
僕たちはタカノスを発った。
「みるる殿、美波先輩殿は全部知っておったのではないでござるか」
「(o^-^o)」
「さあね、どうだろう」
さわやかな空気、抜けるような青空の元僕たちは隠れ里を目指した。
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《登場人物紹介》 IN タカノス
・速水 三流 所持金:金1000:大銅3
ミミをデミハーフの村に送り届けるのが今の使命
・日向夏
猫耳ヘアーの女の子。喋れない。
・餡子
巫女のような服を着た女の子。聞こえない。
・ミミ
ロンリとの交渉人。馬車をひくのがうまい。
タカノス
・美波 スキル:選別眼
女子剣道部の先輩。NO4の実力者。優斗を探している。
・結奈 = 優斗
スキルで姿を変えて美波を見守っていた。




