第16話 淡瑠璃色の靄
目の前にあるのは……岩? いや、違う。
見たことがある生き物。
閉じ込められた洞窟で命を繋いでくれた……蛙牛。
「こんなのって……」
鎌首をもたげる。高さは10メートル……いや、もっとあるかもしれない。
牛柄の巨大な蛙がそこにいた。こんなでかい生物って──「あっ」
物凄い速さでカメレオンが虫を捕獲する勢いで大蛙牛の舌に吸い付けられた──
一瞬で開かれた口が目前に迫る。あまりの速さに何かを判断する余裕はない。
食べられるっ。覚悟した瞬間、既で舌から引き離され、勢いそのままに天井に激突!
衝撃がクレーターを作り破片を撒き散らす。崩れた破片とともに雹のように降り注いだ。
「あっぶねぇ。青水で守ってなければ死んでたぞ……」
死が身近にある恐怖。生まれたのはなぜか笑い。なんだろう、生きている実感なのか……それとも青水があれば死なないという余裕だろうか……。
「きた!」
雨のように狙ってくる大蛙牛の舌を絶対パリィで捌き続ける。
「はぁ、はぁ、はぁ、おっと」
いつのまにか地面は粘液まみれ。ぬるぬるした地面に足を取られ体制を保てない。
やばい! こうなったら…… えい!
縄のように青水を放ち大蛙牛の足に巻き付けると、「ロケットパーンチ」、足に向かって空を飛ぶ、ゴォォォと風を切る音に威力の高まりを感じ、心は満足感でいっぱい。
ヒィィット!
ググググググ──ゴムのような足にめり込み威力が消されていく、感じる生臭さ──ググ……グ!
「うわぁ~」
跳ね返された。倍増した勢いが壁に大穴を開ける。遠くまで散らばった破片の数々が衝撃の大きさを物語っていた。
『指を何本か立てて……プッ……僕の考えた最強の攻撃とやらをやってみて』 ──間延びした声、吹き出すのを堪えているような笑いに腹が立つ。
「この声……ずっと僕を見ているのか……」
瑠璃色の少女が頭に浮かぶ。ポイントポイントで少女の姿を見ている気がすr──「おっと危ない」
──ビターン! 大蛙牛の舌、重い一撃が地面を揺らす。
指を立ててか。3本をピシッと立てる。
「指示倍加……」
体中に力が漲る。4本、5本。伸ばす本数を変えるたびに力の加減が切り替わる。
3倍、4倍、5倍。僕の考えた最強の攻撃を大牛蛙にお見舞いする。
強さによってめり込む深さは違うものの、ダメージを与えるには至らなかった。
「困ったな」
大牛蛙の攻撃を避けながら倒す方法を考える。ドゴーン、バゴーン、デゴーン……一撃で金属なんて粉砕しそうな強い攻撃。
それにしてもここの鉱石は硬いな。何かに使えそう……粉砕された破片を拾い集めポケットにどんどんしまっていく。
「あ!?」
ゴムのような舌、風船のような体。青水。
解が導き出された。
異次元ポケットからベオカで買った剣を取り出す。左手には5本の指、壁に向かってキーック。
想像力全てを使ってバネをイメージする。足に取り付けた青水スプリング、限界まで収縮させる。
手に握られた剣は少しでも質量をバネに使うため青水刀は使わないため。
「スクリュードライバー!」
電動ドライバーがごとく大牛蛙に突撃。
空気を巻き込み大牛蛙のどてっ腹に向かって突き進む。
ズシャッ──。 腹の皮を破り大牛蛙の体液を浴びながら体の中を突き抜けた。
勢いあまって壁に激突、「ウモォォォ」という断末魔と共に生気が徐々に消失し巨漢は崩れるように倒れた。
「はぁ、ぎもぢわ”る”い”」
体と剣は大牛蛙の体液まみれ、青水で洗浄しようとしたその時、体と剣に吸収されて消失した。
「え”、一体なにが……」
特に変わった様子はない。でもこれって後から絶対に何かあるやつじゃん。そんな気がしてならなかった。
「さぁて次は……」
奥へと続く通路、大牛蛙で塞がれていたのが顔を出した。
「そうだ! 次に行く前に……」
大牛蛙のまる茹で、200グラム程度の大きさにカットして異次元ポケット収納していく。その中の一つにガブリ!
「うっまーい」
はぁ、なんか懐かしい。蛙牛とともに過ごしてから色々あったなぁ……。
うんうん。美味しい。でもやっぱり肉は焼いて食べたいな、それにお米が欲しくなる。
鉱石の破片を異次元ポケットに放り込み奥へと進む。あまりの硬さに僕の青水では傷がつけられない。いつかきっとこの石が役に立つはず! ゲーム世界ならフラグになるはずだ。
ズゴゴゴゴゴゴ。ドームから一歩足を踏み出すと、地を擦るような巨大な音と共にドームへの道が塞がれた。
もう驚かないぞ、絶対に誰かに誘い込まれているんだ。
『ねぇ』 ──間延びしたいつもの声。
「うわぁ」
ビックリしたぁ。急に後ろから声をかけてくるなんて驚くに決まってるじゃないか。
声の方に在るのはぼやっとした瑠璃色の靄、淡瑠璃色とでも言うのだろうか、見ているだけで心が洗われる。
『そのまま聞いて。この場所であなたは強くなったわ。まだまだ私と会うには物足りないけど』
「どういうことだ」
『プ……僕の考えた最強の攻撃とやらもそうだけど………ププ、過ぎたる力は異端、どの国でも迫害されてしまうかもしれない。なるべく彼女たちと協力して力を隠しなさい』
「彼女たちって……、ひなつやあんこのことか。居場所を知っているのか!」
『最後にこのスキルを与えましょう。他のスキルは鍵を探すうちに得ることもあるかもしれませんね』
僕は淡瑠璃色の靄に、ひなつを救う事となるスキルを得ることになるのであった。
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《登場人物紹介》
・速水 三流 所持金:金1008枚大銅4枚
ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)
レベル:1 スキル:絶対パリィ
初めての依頼が大変なことに。仲間の護衛を失った。
・日向夏
ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)
レベル:8 スキル:言霊詠唱
猫耳ヘアーの女の子。喋れない。あんことともに行方不明。
・餡子
ランク:3流 ギルド:冒険者(黄)
レベル:16 スキル:武器長短
巫女のような服を着た女の子。聞こえない。ひなつとともに行方不明。




