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第11話 初めての依頼

 冒険者ギルドから指名依頼が入った。


「みるるさん大変です。あなたに指名が入りました!」


 ランクは()から始まる虹色7種に銀、金、(はく)を加えた10段階。指名というのは依頼主と信頼関係を得た者や、確実に依頼達成ができる高ランク冒険者に来ることが時折ある程度だそうだ。


「1度も依頼を受けたことがない茶ランクの僕に……なんで?」

「それは私にも分かりません」

「(o'ω'o)?」──良く分からずボーっとしている。

「ちなみに何の依頼なんですか」

「護衛です。しかも金貨5枚、指名料も5枚の高額報酬です」

「指名料?」

「ええ、指名料も報酬の一部です。金貨10枚の高額依頼です。依頼主はソリカ商会のポンポさんです」



 * * *



 馬車に揺られていた。しかも別の冒険者と一緒に……


 ポンポさんの言葉が思い返される。


「君はもっと外の世界を見た方が良い。蛙牛(かえるうし)のようにレアを引き付ける何かを感じる。私から出したこの依頼は君に対する投資だと思って欲しい。心配することは無い、君たちとは別に護衛を雇っている。そいつらが悪さしないか見張るお目付け依頼くらいに思ってくれればいい」

 :

 :




「お前ら邪魔だけはするんじゃねぇぞ」


 サイドを刈上げ長い髪をオールバックにした男が(つば)を飛ばしながら言い放つ。続けるように坊ちゃん狩りの男、


「でもホント生きてて良かったって感じだよなぁ、俺たち動物が人間の上に立てるんだからよー」


 人間の上? ふたりがぺちゃくちゃ騒がしい。聞きたくもないのに声が大きすぎて話の内容が耳に飛び込んでくる。

 まあ、元の世界で恐怖の対象だった人間が、人形(ひとがた)という対等な立場になったことで見下しているような内容、マナーの欠片もない喋り方は不快でしかない。


 

オールバック(キジマ)さんと坊ちゃん狩り(イッチ)さんは仲間なんですか?」

「ああ、俺たちがこの地に来た時のことだった…… (遠い目、長いので以下略)」

 

 要約すると同じ日、同じ場所に転移した二人はバトル系スキルを持っていたことで一緒に冒険者になったようだ、お互いを大事にする仲間意識に感動したが、いつのまにか人族の罵倒へと変わる。何を話しかけても同じように人族の悪口につながるので話しかけるのは止めようと心に決めた。



「すっごい大きな街だな~」


 馬車の窓から見える城壁に守られた巨大な都市、遠くから城が街を見下ろしている。まさしくゲーム、竜が飛び立ったり地下に宝箱が隠されているのかなぁと窓の(さん)に両手を置くと一意専心(いちいせんしん)して見入ってしまう。


「まったくよ~、やっぱ人族はどーしょもねーな。あそこは首都の『タマサイ』だ、この辺りの魔物はウシガスキレベルだからな、お前らじゃ一コロだぞ」

「ははは……相変わらずですね」

「(´・ω・)」──無表情で黙っている。人族を悪口に反応して力強く握ってくる。


 

 太陽が頂点に向かって昇っていく。長かった木々の影も随分と短くなった。目的地の到着は夕方、ちょうど半分を過ぎた頃だろうか……。



「暇だなぁ、護衛は何もなかったら乗ってるだけだもんなぁ」

「ちげぇねぇ。このままじゃ体がなまって仕方ねぇ」


 相変わらずのふたり、アニメならその台詞は強力な魔物を呼び込むフラグだろう。まぁ現実に言葉が何かに作用するなんて考えられるはずが……ハッとしてひなつを覗き込む。


「(o゜-゜o)?」

「い、いや何でもない」


 考えてみたらひなつの『言霊詠唱』……。本当に言葉の力で何かを変える事が出来るなら……窓の外をキョロキョロ見回す、前か、後ろか……上か! まさか下から突き上げてくるのか!


 

 考えてみたら言霊の力をもっているのはひなつだ。彼らに力があるわけじゃない……アニメで観てきたフラグを立てるような言葉、現実でありえるはずない想いが心の中をせめぎ合う。


 村のあるサムゲン大森林に入った頃には気を張りつめすぎて疲労感満載、ぐったりしていた。


 背中をポンポン叩いて癒してくれるひなつ。顔を見れば『(o^-^o)』……彼女を助けていなかったらと思うと恐怖しかない。思い出し笑いならぬ思い出し恐怖とでもいうのだろうか、ぶるっと背筋が震えた。


 ガゴー、ギャー、バサバサバサー。


 鳥の飛び立つ音が騒がしい、大森林という名の通り、高い木々が立ち並び伸びきった植物が道の両端に伸びている。太陽の光も葉の隙間からしか入ってこないせいか薄暗い。そんな中を馬車は順調に進む……。


「馬車を牽く馬は朝からずっと走りっぱなしだけど疲れないのかなぁ」


 ひょいひょいと袖を引くひなつ。顔は「p(*^-^*)q」……大丈夫ということが言いたいのだろう。


「お前は何も知らないんだな。この国は魔法が発達した世界なんだよ、元の世界は技術だとか物づくりの技術が発達してたって人族は言ってたけどな。手綱(たづな)に疲労回復の魔法が付与されてるんだよ。馬用のスキルはいくつかあってスキル持ちは御者(ぎょしゃ)に引っ張りだこだな」

「ありがとうございます。そうだったんですね」

「お前は人族なのに偉そうにしないんだな。冒険者ギルドに入ってるやつは──」


 ヒヒヒーン──。馬の(ひづめ)が強く打ち付けられる音、鳴き声が森の中に反響する。


「襲撃か!」


 扉を蹴り上げ、「イッチ行くぞ!」と共に飛び出すキジマ、「おう!」とイッチも飛び出していった。


「僕たちもいくよ」

「(゜ω゜)(。_。)……(。•́︿•̀。)」──返事はするも不安そうな表情。


 手を添えてひなつを馬車から下ろすと音のした前方へと走る。後方担当の僕たちは商人の乗る馬車を越え、前方を守っていた護衛たちの馬車へ走った……。


 

 既にキジマとイッチは倒れ前方を守っていた3人の護衛と共に横たわっていた。それを見下ろすように立つ一人の女、白粉(おしろい)を塗ったような青白い顔をした人形(ひとがた)がそこにいた。口に目元に真っ赤に塗った顔、例えるならドラキュラをイメージするいで立ち。


 手には刀を携え唸るような言葉は何を言っているのかサッパリ分からない。この姿はネコミさんに教えてもらった魔人を越えた魔人の姿そのもの。


「来る!」


 刀の剣先は僕の喉元を捉えていた。 

==========

 金貨1枚……日本円で約50,000円

  依頼は金貨10枚=日本円で約500,000円です。


《登場人物紹介》

 ・速水はやみ 三流みるる 所持金:金貨999枚 

   ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)

   レベル:1  スキル:絶対パリィ

   初めての依頼が高額報酬、しかも指名までされてしまった。

 ・日向夏ひなつ

   ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)

   レベル:8  スキル:言霊詠唱

   猫耳ヘアーの女の子。喋れない。みるるをサポートする女の子。


キクの街

 冒険者

 ・キジマ キッサ

   ?:?:LV?:?

   紫ランク冒険者、それなりの実績を積んでいるが素行が悪い。

 ・イッチ チッタ

   ?:?:LV?:?

   紫ランク冒険者、それなりの実績を積んでいるが素行が悪い。


 魔人

 ・魔人を越えた魔人(女)

   一本の刀を武器に手練れの冒険者を一瞬で倒した。

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