コント「魔王とマー君」
勇者「ついに追い詰めたぞ!魔王!」
魔王「ふはははは!
そんな剣ではワシを倒すことなどできぬわ!」
勇「これはただの剣じゃない!仲間たちの魂がこもってるんだ!」
(最終奥義の構え)
魔「な、なんだその光は!?」
勇「くらえ! ウルトラソウルアタック!」
魔「ぐはぁぁっ…」
勇(剣を突き立てて)「これでとどめだ」
魔「大きくなったな…」
勇「何?」
魔「お前に殺されるなら本望だ」
勇「お前?」
魔「分からぬのも無理はない。あれはお前がまだ物心つく前のことだったか…」
勇「何の話だ?」
魔「寂しい思いをさせてしまった」
勇「いや、別に寂しくないけど」
魔「母ひとり、子ひとり…」
勇「え、ウチ? ウチは父親いるけど?」
魔「は?」
勇「今日だって『行ってくるぜ』って言って、
オヤジも『ぜったい魔王倒して来いよ』って」
魔「そ、そんなハズはない。
悪魔に魂を売ってしまって以来、
家族の記憶だけは消え去ることがなかった」
勇「いやー、間違いじゃないかなー」
魔「そうだ、写真が残っている。これを見ればわかるハズだ」
(懐から写真を取り出し勇者に渡す)
勇「プールの写真?
っていうか、メッチャ ツノ生えてるな!
よくプール入れてもらえたな」
勇「あ! これ、思い出した! ウチの近くのプールだ!
えーと」
勇&魔「ラダトーム市民プール!」
勇「そうそう! 行ったことあるわ。
でも、これオレじゃないだろ」
魔「いやいや、お前だろ? めっちゃ笑ってるし」
勇「普通みんな笑うだろ!
だいたい、こんな坊主刈りしたことないし」
魔「あの頃のお前はやんちゃ坊主でな。
この写真のときも、ひとりで泳ぐ! って走って、飛び込んで。
まだ幼稚園だったからな。
わたしもびっくりして。
『マサシーー!!』って飛び込んで助け…」
勇「ちょ、ちょ、ちょ!
ちょっと待って。
『マサシ』??」
魔(こくり)
勇「オレ『タカシ』」
魔「??」
勇「オレの名前『タ・カ・シ』
『マサシ』じゃないの」
魔「マサシだろ? 杉本マサシ」
勇「杉本?」
(写真をじっと見る)
「あーー!! マー君!
これ、マー君じゃん!」
魔「マー君?」
勇「幼稚園の年長で同じクラスだったんスよ!
(魔王を指さして)じゃ、マー君のお父さん!?」
魔「?」
勇「あ、どうも初めまして。荻原タカシです」
勇&魔(お互いぺこり)
勇「いやーーー、びっくりだわ。
マー君のお父さんが魔王とか」
魔「そうか、お恥ずかしい。人違いでしたか。
この世の最後に息子の顔を見れたのだと思いましたが。
そんなムシのいい話はありませんな」
勇(そっと剣を置いて)
「あの…。
この間マーく…マサシ君に会いました」
魔「な、何ですと!?」
勇「小学校の同窓会でひさびさに会ったんです」
魔「元気でしたか?」
勇「はい。
あ! 連絡先交換したんですよ!」
(ポケットから取り出したスマホを操作して魔王に見せる)
魔「アニメの女の子が…」
勇「あ! これはアイコンで…
えっと、、あの
電話してみましょうか!?」
魔「マサシと話せるのか?」
勇「はい」
(離れてスマホを操作)
勇「あ、もしもし、こないだはどうも、おつかれ〜。
いやいや、そっちの方が飲んでたじゃん。
え? 今?
……魔王城。
いやー、ちょっといろいろあってさ。
実は大事な話が…
いや、合コンじゃなくて。そっちは調整中だから。
今さ、(魔王の方を見て)ちょっと電話代わるわ」
(魔王にスマホを渡す)
魔「ふははははは!! 魔王だ!!」
勇(慌てて、手でバツマーク)
魔(スマホを持っておろおろ)
魔「あー、すまん。
マサシか?」
(何を話していいかわからず勇者を見る)
勇(「続けて」)
魔「わたしだ。お前の父さんだ。
確かにな。急な話ですまない。
これまで苦労をかけてすまなかった。
まあ、なんと言うか、いろいろあってな。
今か? 今は……勇者にとどめを刺されるところだ」
勇(思いっきり首を振って バツマーク)
魔「そっちはどうだ? 元気でやってるか?
そうか、もう働いているのか?
そ、そうだな、お前の人生だ。
母さんはどうした? 元気か?
再婚?
そうか。いろいろ苦労をかけてしまった。
楽しくやっていてくれれば何よりだ。
ん? サーファー?
波乗りのことか。働いておらんのか?
いやいや、ちょっと気になっただけだ。
そういう言い方はないだろう!
だいたいお前だってなぁ、
はあ!?
もういっぺん言ってみろ!!
ふざけるな!!
こうなったら地球ごと滅ぼしてやる!!!!」
勇「やめろぉぉーー」
(剣を拾って切りつける)