幕間2
老婆が話し終わるとともに、若い男は立ち上がった。
「やはりここは俺が思っていた場所なのか?」
そのまま老婆に近づいて行く
「そしてあなたはもしかして」
「おやおや。あんたは変わらず決断が早いねえ。早とちりとも言うけれど」
まくしたてる男をみやりながら、静かに老婆は語りかける
「ちょっと待ってください!」
若い男の進路を塞ぐように、幼い男も立ち上がった。
「僕もあなたを知っています。やっぱりあなたの言う通り僕は知っていたようです。ここがどこなのも、僕は知っているんですよね?」
老婆は二人の質問には答えず、静かに笑っているだけだった。
「もうあなたに聞いても埒があかない」
若い男はしびれを切らしたように両手を上げる。
「こうなったらもう自分で調べるしかない。今から俺はこの城を調べさせてもらう」
「城?」
そのワードに反応した幼い男が振り返る。
「あんたは今ここのことを城って言いましたか? 僕はここがお屋敷だと思うけれども」
「ふん、知ったことか。俺は俺の思う通りに言っただけだ。じゃあな」
そう言ってドアの方に向かう。
「待てよ、僕も行く。ここがどこなのかは、これから調べればわかるだろうし」
「ふん、勝手にしろ」
そう言って若い男と幼い男は部屋から出ていった。
部屋の中には老婆と老いた男だけが取り残されてしまった。
「やれやれ、なんだか静かになってしまったねえ。まだ全部話し終わってないっていうのに」
そう老婆がつぶやいても、先程からのやり取りに反応する様子のない老いた男は、まだ俯いていた。
「そしてあんたにはここはどこだかわかっているんだろう? 私が誰かっていうことも」
「ここは病院、だろう」
老いた男は重たい口を開いた。
「ここは病院の最上階だ。そのベッドは患者用のものだ。そしてあなたは」
初めて男は顔をあげた。
「私の娘だ」
その言葉を聞くと老婆は満足そうな顔をした。そして本を開くと、静かに語り始めたのだった。
3人目の“彼女”の話を。